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第2話

Author: Rosa Kane
午後5時、楓己が迎えに来た。

車の中で、私たちはほとんど言葉を交わさなかった。いったい何を話せばいいというのだろう。

これから彼の思い違いだったと分かるのか、それとも私たち二人の人生が根底から覆されるのか、そのどちらかしかなかった。

ローズウッド・リゾートは街の外れに佇んでいた。ガラス張りの建物から柔らかな明かりがこぼれ、これ見よがしに誇示する必要のない、静かな品格と豊かさに満ちている。

楓己の話によると、理安が東館を丸ごと貸し切っているため、一般客は立ち入れないらしい。

けれど、楓己はすでに手を回していた。

裏口では従業員が二人待っており、折り畳んだ札を何枚か渡すと、私たちを従業員用の通路に通し、東館にある宿泊客専用の庭園まで案内してくれた。

1時間ほど前から、空では雷が鳴り続けていた。黒い雲が凄まじい速さで押し寄せ、雨の匂いが漂っている。

「急ごう」

楓己が小声で言った。

私たちは木立に沿って進んだ。

――きっと何も見つからない。誰もいない庭があるだけで、すべては誤解なのだ。

自分は愚かではなかったと証明できる何かを持ち帰れるはずだと、私は何度も何度も自分に言い聞かせた。

そのとき、彼の姿が目に入った。

理安だ。

私の夫が、庭園の2本の木の間に立っていた。

仕事中とは到底思えないほどくつろいだ格好で、リネンのシャツの袖をまくり、片手にグラスを持っている。

もう片方の腕には、そこが自分の居場所であるかのように成良が収まっていた。二人は笑っていた。

まるで、この世界が二人にしか分からない幸福な物語であるかのように。

私は足を止めた。両脚の感覚がなくなっていた。

――嘘。

頭の中で叫び声が響く。

――嘘、嘘、嘘。

楓己も隣で立ち止まった。彼が一瞬私を見たのが分かった。

私がまだ立っていられるかどうか、気づかれないようにそっと確かめているような視線だった。

私は辛うじて立っていた。

震える手でスマホを取り出し、理安に電話をかけた。

庭園の向こうで、理安が画面に目を落とした。彼が成良に何かを告げると、彼女は呆れたように目を回した。それから、理安が電話に出た。

「もしもし、紗世」

その声は優しく、楽しげで、いつもと何ひとつ変わらなかった。

「ちょうど君のことを考えていたんだ」

喉が塞がったように声が出なかった。それでも、私は無理やり言葉を絞り出した。

「今、どこにいるの?」

「出張先で仕事中だよ」

彼はあまりにも自然に、何のためらいもなく嘘をついた。

「仕事が山積みなのに、君のことばかり考えてしまう。ちゃんと眠れた?家を出るとき、君はぐっすり眠ってた......あの時の君はすごくきれいだったよ。俺のこと、考えてたの?」

「うん。理安に会いたい」

「俺も会いたいよ」

彼は優しく笑った。

「寝る前にまた電話するから、あまり夜更かししないで待ってて」

そこで通話は切れた。

庭園の向こうで、理安はスマホをポケットにしまい、成良へ向き直った。成良が手を伸ばして彼の顔を引き寄せると、理安は彼女に口づけた。

かつて私にしていたのと同じように、彼女を抱きしめてキスをした。

その瞬間、空が裂けたように雨が降り出した。

激しい雨は一瞬で服に染み込んだが、私はその場に立ち尽くしたまま、濡れるに任せていた。

雨の中、抱き合う二人を見つめていた。

頬を伝う涙が雨水と混じり、もうどちらなのか自分でも分からなかった。

やがて、理安の言葉に成良が笑い、一本の木に背中を預けた。

理安は一瞬たりともためらわなかった。

彼の手は、成良の身体を知り尽くしているかのように迷いなく動いた。まるで、これまでにも百回は同じことをしてきたかのように。

実際、そうだったのだろう。

息が止まった。

理安は、成良の太ももを抱え上げた。

そのあと目の前で起きたことが、私の中の何かを壊した。それはもう二度と元には戻らないのだと、自分でも分かっていた。

雨に打たれながら、夫が私の親友を抱く姿を、私は目をそらすこともできずに見ていた。

動くことも、息をすることもできない。ただ空っぽのままそこに立ち尽くし、自分の世界が音を立てて焼け落ちていくのを感じることしかできなかった。

突然、楓己が私の腕をつかんだ。

「行こう。もう十分見ただろう」

彼は静かに言った。

私は彼に引かれるまま、その場を離れた。雨の中から、理安と成良から、自分のものだと信じていたすべてから遠ざかっていった。

楓己の言うとおりだった。

もう十分だった。

理安が今まで贈ってくれた花には、何の意味もなかった。電話も、耳元で囁かれた愛の言葉も、毎朝のキスも、永遠を誓った約束も、すべて何の意味もなかった。

私が彼と過ごした2年間が、すべて否定された。

映画のように泣き叫ぶことも、その場に崩れ落ちることもなかった。私はろくに知りもしない男の隣で、全身ずぶ濡れになり、心を空っぽにしたまま、ただ雨の中を歩き続けた。

壊れたレコードのように、頭の中では一つの問いだけが何度も繰り返されていた。

――私の何がいけなかったの?私は、いったい何を間違えたの?

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