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第4話

Author: 匿名
恵美は店の入り口のところで、海斗の電話が終わるのを待っていた。

店員から向けられる哀れみや好奇の視線に、恵美は耐えられず、その場から逃げるようにして外に出てきたのだった。

ドアの外に出てきた恵美に気づくと、海斗は慌てて電話を切った。そして、何事もなかったように恵美の手を握る。

海斗がこの後のデートプランについて恵美に話していると、タイミング悪く、またスマホが鳴り響いた。

「恵美、俺……」

「出たら?仕事は大事でしょ」

許しを得た海斗はすぐに電話に出ると、容赦なく怒鳴った。

「いい加減にしてくれ!今、妻と一緒にいるんだよ。それに、今日は仕事しないって言ったはず……」

しかし、彼の言葉は突然止まった。

海斗が隠そうとしても、恵美の耳には、電話の向こうからの細い泣き声が届いていた。

胡桃が甘えた声で泣きながら、お腹がとても痛いから助けに来てほしい、と海斗に訴えていたのだ。

結末は、考えるまでもないだろう。

案の定、電話を切った海斗は、苦虫を噛み潰したような顔で言った。

「恵美、会社の方が……」

「言わなくていいよ。急ぎの用なら行けば?」

海斗は恵美の冷たい口調に、彼女が不機嫌なのだと気づいた。

しかし、さっきの電話での胡桃はあまりにも辛そうに泣いていた。だから、彼女を一人にしておくなんて、とてもできなかった。

終わったら、ちゃんと恵美に謝ろう。海斗はそう決めた。

彼が知る限り、恵美はいつだってすぐに機嫌を直してくれるのだから。

恵美は、海斗の車が走り去るのを見送ると、黙ってタクシーを停めた。

「運転手さん、前の車を追ってください」

二台の車はずっと一定の距離を保っていた。しかし、これが会社へ向かう道ではないことなど、とっくに恵美には分かっていた。

海斗の車は何度か角を曲がり、ある邸宅の前で停まった。海斗がドアを開けるより早く、胡桃が海斗の胸に飛び込んできた。

「やっと来てくれた!会いたかったよ……」

「騒ぐな。お腹が痛いんじゃなかったのか?どう見ても元気そうだけど?俺をだましたんだな?」

海斗は眉をひそめながらも、胡桃の体をあちこち確かめるように触った。

胡桃が無事だと分かると、彼は帰ろうとした。しかし、胡桃は海斗の腰に抱きつき、彼を引き留める。

「せっかく来たのに帰っちゃうの?ねえねえ、どうして私がこんなに急いであなたを呼んだのか……知りたくない?」

胡桃はわざと語尾を伸ばし、妖艶な笑みを浮かべた。二人はまだ玄関先にいるというのに、彼女はバスローブをはだけさせて、中に着ていたセクシーな下着を見せつける。

海斗は息を呑み、胡桃をためらうことなく横抱きにした。

寝室まで待てなかったらしい。彼は玄関のドアを適当に閉めると、すぐに胡桃と深く口づけを交わした。

そして恵美は車の中で、そのすべてを無言のまま見つめていた。

自分はもう何が起きても平気だと思っていた。

それなのに、海斗の不倫を目の当たりにしたら、やはり手の震えが止まらなかった。

周りの音が何も聞こえなくなる。恵美は静かに全てを見届け、玄関のドアが再び固く閉ざされるのを確認してから、運転手に声をかけた。

「運転手さん、行きましょう」
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