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監察日誌:残された仕事と守るべき者

ผู้เขียน: 相沢蒼依
last update ปรับปรุงล่าสุด: 2025-09-15 11:04:08

その後ふたりで協力して、山上が残したデーターをすべて回収し、なんとか書類を纏めて、すべてのホシの洗い出しをした。発砲事件を起こしてくれたおかげで、予定よりも早く送検できる手筈となったのがさいわいだった。

裁判所に重要書類を提出する日まで、あともう少し――不眠不休に近い仕事を、ここ数日こなしていたとある夕方。

「水野くん、大丈夫か? 頭がふらついているが……」

「大丈夫です。関さんこそ、ふらついていませんか?」

デスクの後方にある窓からオレンジ色の西日が入ってきて、その暖かさが俺たちふたりを眠りの世界へと誘っていた。

お互い隣同士、パソコンとにらめっこして仕事をしている最中。横目でそっと水野くんの様子を見ると瞼が降りる寸前で、パッと目を覚ましながら、必死に睡魔と格闘していた。

「俺はふらついてないから、大丈夫だ」

(――山上も無茶をするヤツだったが、水野くんも相当負けず嫌いらしい)

幼い子供のような愛らしい仕草に笑いながら、強引に肩を抱き寄せてみた。

「ちょっ、関さん?」

「俺の肩を貸してやるから、20分くらい仮眠しろ。その方が効率が上がる」

「そんな……」

「隣でうつらうつらされた方が、かえって迷惑だ。それともぶん殴って、気絶させた方がいいか?」

水野くんの顔に拳を見せつけると、慌てて肩に頭を乗せた。

「すみませんっ。肩、ちょっとだけお借ります」

おどおどしながら、慌てて目を瞑る。

まったく――どうして俺は水野くんに、優しい言葉のひとつくらいかけてやれないんだろう。これじゃあ嫌ってくれと、言ってるようなものじゃないか……。

謝ろうと考え、顔を水野くんに向けると、彼は既に夢の中の人となっていた。

肩を貸したが水野くんの方が背が高いので、窮屈そうに寝ているのがどうにも忍びなく、頭を持ち上げてそっと膝に移動させてみる。頭を撫でると気持ち良さそうに、体をすり寄せてきた。

「俺が、ずっと前から思ってることを話そうか……」

頭を撫でながら、ポツリと呟く。寝ている今なら少しは、素直な言葉が出てきそうだったから。

「君が好きなんだ。山上と付き合っていても、どうしても諦めがつかなくて……」

想いは胸の中で、ずっと燻っていた。時折見せる笑顔が山上に向けられたものでも、それを遠くから見ることができて、とてもしあわせだった。

水野くんがしあわせであれば……そう思っていたのに。山上が死んでからの君は、泣きそうな笑顔しかしなくなったな。

「俺の零れそうな想いを君にあげれば、あの笑顔が見られるのだろうか?」

でもそれは無理な話なんだ。昔も今も素直に言葉にできない俺は、天性の弱虫だから――。

「君がまともな恋愛をして、しあわせになって行く姿を、山上の代わりに見守ってやる」

素直じゃない俺の傍にいるより、きっとその方が水野くんはしあわせになる。君の晴れやかな、あの笑顔が見たいから……。

引き寄せられるように、水野くんの唇にそっとキスをした。触れたかどうか、わからないくらいの僅かな接触――。

「水野くん……」

俺が小さな声で呟いた瞬間、いきなり目が開いた。慌てて飛び起き、ひれ伏す水野くん。

「すみません、すみませんっ! 関さんの肩どころか、膝までお借りしちゃったみたいでっ」

「窮屈そうだったから、勝手に俺が移動させたんだ。謝る必要はない」

「俺、寝てる最中……関さんに、なにかしませんでしたか?」

なぜか、申し訳なさそうな顔で訊ねてくる。寝ながらなにかをする、クセでもあるのだろうか?

「君はただ、気持ち良さそうに寝ていただけ、だったが?」

「関さん、なんか顔が赤いから……。俺、すっごい失礼なことでもしたんじゃないかって、心配で」

「俺の顔が赤い理由は、この西日と君の体温が相まったからだ。おかげで俺も一瞬、意識を失った」

超絶鈍い水野くんには、この嘘は見抜けないだろう。俺としたことが、顔が赤くなっているなんて思わなかった……不覚。

「でも関さんの言うとおり、短時間でも寝たら頭がスッキリしますね。ありがとうございました」

「惰眠を貪った分、しっかり働いてくれ。この書類も頼む」

傍らに置いてあった書類を押しつけて、慌てて立ち上がった。

(――この顔の火照りを、今すぐ冷まさなければ)

俺はデスクに置いてあった書類を適当に掴んで、逃げるように出口に向かう。

「悪いがちょっと出てくる。留守番よろしく……」

「はい。いってらっしゃい」

水野くんの爽やかな顔で見送られ、そそくさとその場を後にした。鈍いっていうのもある意味、さいわいなことかもしれないと、改めて思ったのだった。

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