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第5話

作者: 煌めく孤狼
その手が今は、俺の命を終わらせようとしている。

体の奥で力が狂ったように暴れ回り、灰白色の死斑がすでに顔の半分にまで這い上がっていた。

俺は深く息を吸い込む。全身を苛む激痛が、逆に俺の思考を恐ろしいほど冷徹に研ぎ澄ませていた。

「一つ目だ。俺はこの拠点を離れる」自分でも驚くほど、平坦で落ち着いた声が出た。

未月が、あからさまに安堵したような表情を見せる。

だが、哲也がまたしても口を挟んだ。今度は周囲に響くほど声を張り上げた。

「彼をこのまま行かせちゃだめだよ!彼が持っている装備や物資は全部、隊の共有財産なんだよ!それを持たせたまま外に出して、もしゾンビに奪われでもしたら……」

未月が不快げに眉をひそめる。「哲也くん!やめてちょうだい!」

哲也はさらに声を張り上げた。

「僕は事実を言っているだけだよ!

あの人はもう副隊長じゃない。ただの感染者じゃないか!大事な隊の資源を、感染者に持ち出させていいわけないだろう!」

何人かの隊員が戸惑ったように視線を交わす。同意するように頷く者もいれば、やりすぎだと首を振る者もいた。

ちょうどその時、拠点の外周防衛線から、短く鋭い悲鳴が夜気を切り裂いた。

全員が、弾かれたように声の方向を振り返った。

未月はすぐさま、数人の隊員に外の様子を見に行かせた。

それから彼女は、ひどく複雑な表情で俺を見つめ、声を絞り出すように言った。

「孝之、あなたの装備……すべて置いていって」

俺は笑った。

目から涙が滲むほど、声を上げて高笑いした。

ひとしきり笑ったあと、俺は頷いた。「ああ、全部くれてやる」

俺は身につけていた装備を外し始めた。

戦術ベスト、軍用ナイフ、バックパック、食料、そして水。

ひとつ外すたびに、地面へ無造作に放り投げた。

金属のぶつかる硬質な音が、静まり返った空間に耳障りに響き渡った。

未月は顔を背け、頑なに俺を見ようとしなかった。

一方で哲也の瞳は歓喜に輝いていた。積み上がっていく装備の山を、欲望に満ちた目で見つめていた。

すべて外し終えると、俺の身には普通の戦闘服一着しか残っていなかった。

「これで十分か」俺は尋ねた。

未月は唇をかすかに震わせたまま、何も言えずにいた。

哲也が食い気味に口を挟んだ。「十分だよ、十分!みっちゃん、早く彼を行かせようよ!」

未月がようやく俺の顔を見た。その瞳の奥で、何かが激しく揺れ動いていた。

「孝之、ごめんなさい。でも、私はどうしても……」

俺はその言葉を遮った。

「もう何も言わなくていい。今日で、俺たちは貸し借りなしだ。

よく考えておくんだな。俺という最大の主戦力を失って、これからどうやってこの拠点と隊員たちを守っていくのかをな」

彼女の体が、小刻みに震え始めた。

俺はもう二度と彼女を振り返らなかった。誰の顔も見ることなく、拠点の門へと歩き出した。

灰白色の死斑はすでに左頬にまで広がり、体の奥の力は狂ったように暴れ回り、今にも俺自身の肉体を引き裂きそうだった。

踏み出す一歩一歩が、まるで鋭い刃の上を歩くような激痛を伴った。それでも俺は、背筋を伸ばしたまま歩き続けた。

拠点を出てしばらく歩くと、俺はここ数日で目をつけていた、比較的安全な廃墟の一角へとたどり着いた。

そこでついに、体の奥底で渦巻いていた力を抑えきれなくなり、一気に爆発した。

想像を絶する激痛が四肢の隅々まで走り抜ける。全身の骨を一度砕かれ、無理やり組み直されているような地獄の痛みだった。

俺はその場に為す術なく崩れ落ち、芋虫のように体を丸めた。

灰白色の死斑が皮膚の下を暴れ回り、力の奔流が通り過ぎた跡から皮膚が裂け、どす黒い血が滲み、瞬時にかさぶたになり、また裂ける。

しかし、体がピクリとも動かない。

意識が急速に沈んでいく。全身が燃えるように熱かった。

やがて俺は、底の見えない深い闇の中へと真っ逆さまに堕ちていった。

その頃、拠点では――

孝之という防衛の要を失った拠点は、安全になるどころか最悪の事態へと転がり落ちようとしていた。

周囲の暗闇から聞こえるゾンビの飢えた咆哮は、むしろかつてない勢いを増していた。

未月は孝之が脱ぎ捨てた装備をひとつひとつ拾い集めながら、複雑な表情を浮かべていた。

その背後から、哲也の浮き立った声が聞こえてきた。

「みっちゃん、これでこの装備、また僕たちで再分配できるね……」

その時だった。見張りに立っていた隊員が血相を変えて駆け込んできて、絶望的な声で叫んだ。

「隊長、まずいです!半径5キロ圏内のゾンビの大群が、一斉にこっちへ向かって押し寄せてきています!」

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