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記憶を失くした私と、後悔に溺れる幼馴染
記憶を失くした私と、後悔に溺れる幼馴染
Auteur: 白さん

第1話

Auteur: 白さん
何よりも私を愛してくれていた青葉家の三兄弟は、私が悪性の脳腫瘍に蝕まれているというのに、どこにも姿を見せなかった。

手術をすれば記憶を失う恐れがある。彼らのことを忘れたくない一心で、私は助けを求めようと電話をかけた。

やっと繋がったと思ったら、返ってきたのは容赦のない罵声だ。

「宇島杏理(うじま あんり)、今日は雪の誕生日なんだ。邪魔しないでくれないか?」

私は痛みで意識を失い、病院で目を覚ましたとき、スマホに一の橋雪(いちのはし ゆき)からのメッセージが届いていた。

【杏理さん、青葉三兄弟が私に三つもお守りをくれたの。すごく効くんだって】

添えられた写真に写っているのは、かつて私が雨に濡れながら何日もかけてお遍路し、三兄弟のためにひたすら祈って授かった、お守りだった。

ついにすべてを諦めた。彼らのことを忘れるため、一人で海外に渡り手術を受ける決心をしたのだ。

……

病院から家に戻ると、私は真っ先に海外に住む叔母に電話をかけた。

「叔母さん、私、決めたよ。そっちに行く。それで、腕の確かな脳外科の病院を探してほしいの。手術を受けるわ」

手術と聞いた叔母は、声を詰まらせ、慌てた様子で事情を尋ねてきた。

私は無理に笑ってみせて、自分の弱さを押し殺した。

「大したことじゃない。ただ、頭の中に腫瘍ができただけだから」

「ただの腫瘍だなんて……杏理、これはただごとじゃないよ。青葉家の三兄弟は知ってるの?」

彼らのことを聞かれた途端、言いようのない痛みが胸に込み上げ、瞳から涙がこぼれ落ちた。

「いいの、叔母さん。彼らには言わないで」

叔母はしばらく沈黙していたが、やがてため息をついた。

「分かったわ。半月後の航空券を手配するから、早くこっちに来なさい。しっかり面倒を見てあげるから」

涙が止まらなかった。今の私を、こんなにも想ってくれるのは叔母だけだ。

電話を切ると、ドアの方から含み笑いを帯びた女の声が響いた。

「早くどうするって?杏理さん、今度は何を企んでるの?」

雪がゆっくりと部屋の中に舞い込んできた。その手には三つの赤いお守りがぶら下がっている。

私は何度も瞬きをして涙をこらえ、冷たく言い放った。

「一の橋さんには関係ないわ。どうしてうちに来たの?」

彼女は口を尖らせ、いかにも哀れそうに答えた。

「杏理さん、拓也から聞いてないの?私、具合が悪いから、数日間ここで預かってもらうことになったのよ」

すると彼女は急に顔を近づけてきた。先ほどの哀れな表情は消え失せ、私を射抜くような瞳には挑発の色が浮かんでいる。

「ねえ、あとどれくらいで私が杏理さんの代わりになれると思う?」

踏み込まれた距離に嫌悪感を覚え、私は思わず彼女を突き放した。

だが、雪はまるで激しい衝撃を受けたかのように、二メートルほども吹き飛び、タンスに頭を強く打ちつけた。鈍い音が響き、瞬く間に血が流れ落ちた。

「杏理さん……私はただ心配しに来ただけなのに。嫌いなのは分かってるけど、手をあげるなんてひどすぎるよ!」

彼女の悲痛な叫び声は、すぐさま階下にいる青葉三兄弟の耳に届いた。

長男の青葉拓也(あおば たくや)が真っ先に駆け寄り、雪の様子を確かめた。

「雪!大丈夫か?どこが痛む?すぐに医者を呼んでくるからな!」

次男の青葉和也(あおば かずや)も後に続いた。

「精神科の先生も呼ぼう。トラウマになると大変だ」

そして三男の青葉智也(あおば ともや)は、私を激しく睨みつけ、怒りを込めて叱った。

「杏理、お前がこんな奴だったなんてな。雪はただ、昨日の誕生日の楽しかった話をしたかっただけだろ。まさか彼女を突き飛ばすなんて……本当に腹黒い女だ!」

三人が雪に対して向ける隠しきれないひいきを目の当たりにし、私はまるで氷の底へ突き落とされたような感覚に陥った。

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