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第5話

Author: 甘い梨氷
魂はゆっくりと身体から離れ、骨の髄まで刺していた痛みも、次第に薄れていった。

間もなくして、義方が駆け込んできた。

彼はよろめきながら部屋に飛び込み、血の気のない私の身体を力いっぱい抱きしめ、額をそっと重ねた。

私に、もう一息さえ残っていないと、ようやく悟ったのだ。

一粒の涙が、私の頬に落ちた。

義方は初めて、静かに泣いた。

涙は目尻に溢れ、零れ落ち、私の衣を濡らして広がっていった。

「星子……本当に、一度も俺を欺かなかった……」

真司が転びそうになりながら駆け込んできた。

全身に血の付いた私を見た途端、恐怖に顔を歪めて泣き叫んだ。

「ママ!ママ!

お願い、真司を見てよ、ママ!!」

視界はゆっくりと回転し、歪み、霞み、溶けてゆく――

再び目を開けた時、私は久しく触れていなかった、あたたかな寝床に横たわっていた。

空気には、私が植えた花々の香りが満ちていた。

私は気分がよく、ドアを開いた。すると、痩せた小さな男の子が、おずおずとリビングに座っていた。

潤んだ瞳で、恥ずかしげに私を見つめている。

記憶が戻り、ようやく経緯を思い出した。

――あの日、私は車を擦られ、怒りで胸がいっぱいだった。そこへ、その男の子が気まずそうに立っていた。

私に気づくと、小さな拳を握り、勇気を振り絞るように言った。

「お姉ちゃん、ごめんなさい、車は僕がうっかり擦ってしまったんです。弁償します!」

私は思わずからかってしまった。

「すごく高いのよ。どうやって弁償するつもり?」

「バイトをして、少しずつ返します」

「もうからかわないわ。じゃあ、あなたの両親に連絡しましょう」

私は携帯を出して番号を教えるよう促した。

「僕……」

男の子はゆっくりとうつむいた。

「僕には、お父さんもお母さんもいません……」

「じゃあ、どこに住んでるの?」

彼は遠くの高架橋の下を指差した。深く項垂れて、表情は見えなかった。

胸が強く締め付けられた。幼いのに自力で生き、責任感もある。

私はしゃがんで、そっとその頭を撫でた。

「うちへおいで。私は、そばにいてくれる人が必要なの。これからは私のそばで、相棒になってくれる?」

彼の瞳に、星屑のような光が瞬き、私についてきた。

すべてを思い出し、私は彼と一緒に養子の手続きを行った。ふたりの名前が並んだ戸籍謄本を
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