魔物嫌いの魔食家令嬢

魔物嫌いの魔食家令嬢

last updateDernière mise à jour : 2025-12-12
Par:  結城 木綿希En cours
Langue: Japanese
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龍に殺されたはずなのに目が覚めると過去に戻っていた主人公が泥水をすすりながら死ぬ気で強くなる。一度死んで二度目の人生。自分を殺した龍より強い生物がいる世界で弱いままでいることは許されない。侯爵家の長女として、生まれながらの強者として、いずれ来る災厄を知る者として、わたくしは誰よりも強く在らねばならない。それこそが高貴なる者の義務なのだから。

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Chapitre 1

#1 地龍はクソですの!

「カハッ……絶体絶命ですわね。でもわたくしはまだ死ぬわけにはいけませんの!」

龍種は魔法の行使を妨害し無効化する効果のある鱗を持つ。故に龍種は魔術師や魔剣士などの職業対して絶対的な優位性を持つため、物理でのゴリ押し一択なのだ。私が勝てない相手を処理できる剣士は剣聖様くらいだろう。そして唯一可能性のある剣聖様は悪名高きベヒーモス討伐時に負った怪我の療養中で万全ではない。

「ここでわたくしがやられてはこの領、ひいてはこの国が終わる!(チクチクちょっかいを出してくる隣国のことなんてもう知りませんわ!)こうなったら相打ち覚悟でいくしかありませんわね。剣姫の称号を持つものとして!王国の剣たるルミナリア辺境伯家の長女として、ここで負けるわけにはいきませんもの!」

◇◇

鍛え抜かれた肉体も磨き続けた剣術も……全てが圧倒的な暴力の前には無力だった。すでに体内の魔力が一割を切っている。そんな状況では身体強化魔法を行使するための魔力もいつ尽きるかわからない。魔力が尽きてしまえばあとはこの龍に蹂躙されるのみ。

龍、それは神話の時代にも存在したこの世界最強の一角である。姿こそバラバラではあるものの共通するのは天を駆けること、何らかの属性のブレスを吐くこと。そして、強いこと。

同じ読みをする竜とは文字通り格が違うのである。画数の画と強さの格を掛けた訳では無いです、はい。

剣術の名家ルミナリア辺境伯家の長女、剣姫アビゲイル=ルミナリアといえど魔力が尽きればただの人間。戦闘力も近衛騎士団長クラスまで落ちてしまう。本物の怪物、まして連戦後ともなれば手に余るのだ。

「こんなことになるのならちゃんと好き嫌いせずに魔物を食べておけば良かったですわね……」

魔物食、それは一部の部族でのみ行われている肉体改造を目的とした特殊な鍛錬法である。この鍛錬法は魔力を持つ者を倒した際に行われる魔力吸収現象をより効率良く行えるとされており、倒した対象の魔力を余すことなく自らの力に出来る。その部族は少数ながらも圧倒的な武力を誇るという。

では何故そんな夢のような鍛錬法が普及しておらず一部地域でしか行われていないのか。それは単純に毒だからだ。魔物の纏う魔力は瘴気とも呼ばれ、多く浴びると一定時間身体の機能を阻害するのだ。食べて体内に取り込めばどうなるか言うまでもないだろう。そう、修練の効率が落ちるのだ。

普通に狩っていれば、身体に入ってくるのは有害な瘴気ではなく純粋な魔力のみを取り込める。汚染された魔力である瘴気すらもおのが力に変えようというのがこの魔物食である。

とある異界人は言った。「強くなるには魔物を狩るのが手っ取り早いってのにこんなデバフ食らってちゃ効率が悪ぃ」と。

あと普通に魔物が美味しくない。筋肉質で硬く生臭いお肉。討伐後すぐに血抜きをすれば多少マシになるとはいえ魔物の生息地においては難易度が高すぎる。

無論、この理由だけで普及しないわけではない。最大の理由は……宗教だ。

世界最大の宗教、レギウス聖教会。その教義には「魔物は全人類共通の敵であり、排除されるべき物である。また、魔物は不浄な生命であるため触れた場合は即刻教会にて浄化すべし。」とある。

国ですら無視できない程の信者数と影響力を持つレギウス聖教会が不浄な物であるとする魔物。それを食べる鍛錬法など普及するはずがない。

もっとも、彼女が魔物を食べなかったのは魔物が美味しくないからであって宗教云々は関係ないのだが。それに彼女に天賦の才があった。

学生時代は彼女より強い者もいたが、それでもたゆまぬ鍛錬の末に最終的には全て勝ち越してきた。だから彼女は魔物なんて美味しくないものを食べる必要などないと思っていた。

この日、命の危機に瀕するまでは……

今まではその考えでも問題がなかった。格上と戦う時はいつも命の保証がされたもう1回がある戦い。魔物を相手にする時も深入りせず、常に安全マージンを大きく取っていた。

だが、どんなに気を付けていてもイレギュラーは起こりうるのである。

ルミナリア辺境伯領に接する森林は魔物の領域だ。その魔物の領域、通称魔窟に生息する魔物であれば何体いようともアビゲイルの敵ではない。

並の戦士では一体相手にフルパーティでやっとなのだが、そんなことアビゲイルには関係ない。剣姫の肩書きは伊達ではないのである。

「さすがに龍相手だとわたくしでも無理そうですわね。魔力不足で火力が足りないですし。とはいえわたくしがこの領の最高戦力。みすみすこの先に行かせる訳には行きませんわ。わたくしが止めれなければお父様やお兄様が相手をするしかないですけれど……あの二人では龍の相手が務まりませんわね。となるとわたくしが相打ち、もしくは撃退する必要がありますわね。はぁ、どうしてよりにもよって地龍が……。」

◇◇

唯一の地龍の討伐パーティの愚痴

「地龍の特徴は堅い、重い、遅い。堅いくせにバカスカ質量攻撃してきやがって……意味わかんねぇよ!ナーフしろナーフ!」

「クソ堅い敵を相手に弾幕ゲーしながらチマチマ攻撃して体力削り切れって?馬鹿じゃねぇの?難易度バグりすぎ!クソゲーかよ!」

「もうヤダ二度と戦わん。依頼料に釣られてこの仕事受けたけど、もうやらん二度とやらん。」

「もう私冒険者やめようかな……。」

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#1 地龍はクソですの!
「カハッ……絶体絶命ですわね。でもわたくしはまだ死ぬわけにはいけませんの!」 龍種は魔法の行使を妨害し無効化する効果のある鱗を持つ。故に龍種は魔術師や魔剣士などの職業対して絶対的な優位性を持つため、物理でのゴリ押し一択なのだ。私が勝てない相手を処理できる剣士は剣聖様くらいだろう。そして唯一可能性のある剣聖様は悪名高きベヒーモス討伐時に負った怪我の療養中で万全ではない。 「ここでわたくしがやられてはこの領、ひいてはこの国が終わる!(チクチクちょっかいを出してくる隣国のことなんてもう知りませんわ!)こうなったら相打ち覚悟でいくしかありませんわね。剣姫の称号を持つものとして!王国の剣たるルミナリア辺境伯家の長女として、ここで負けるわけにはいきませんもの!」 ◇◇ 鍛え抜かれた肉体も磨き続けた剣術も……全てが圧倒的な暴力の前には無力だった。すでに体内の魔力が一割を切っている。そんな状況では身体強化魔法を行使するための魔力もいつ尽きるかわからない。魔力が尽きてしまえばあとはこの龍に蹂躙されるのみ。 龍、それは神話の時代にも存在したこの世界最強の一角である。姿こそバラバラではあるものの共通するのは天を駆けること、何らかの属性のブレスを吐くこと。そして、強いこと。 同じ読みをする竜とは文字通り格が違うのである。画数の画と強さの格を掛けた訳では無いです、はい。 剣術の名家ルミナリア辺境伯家の長女、剣姫アビゲイル=ルミナリアといえど魔力が尽きればただの人間。戦闘力も近衛騎士団長クラスまで落ちてしまう。本物の怪物、まして連戦後ともなれば手に余るのだ。 「こんなことになるのならちゃんと好き嫌いせずに魔物を食べておけば良かったですわね……」 魔物食、それは一部の部族でのみ行われている肉体改造を目的とした特殊な鍛錬法である。この鍛錬法は魔力を持つ者を倒した際に行われる魔力吸収現象をより効率良く行えるとされており、倒した対象の魔力を余すことなく自らの力に出来る。その部族は少数ながらも圧倒的な武力を誇るという。 では何故そんな夢のような鍛錬法が普及しておらず一部地域でしか行われていないのか。それは単純に毒だからだ。魔物の纏う魔力は瘴気とも呼ばれ、多く浴びると一定時間身体の機能を阻害するのだ。食べて体内に取り込めばどうなるか言うまでもないだろう。そう、修練の
last updateDernière mise à jour : 2025-06-29
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#2 相打ちでしたの!
「もう覚悟を決めるしかないですわね……王国の剣、ルミナリア辺境伯家が長女!アビゲイル=ルミナリア!推して参りますわ!」 その後の戦いは観戦者がいないのが残念なほど白熱し、そして美しかった。もっとも、大抵のものは戦闘の余波でその命を散らすことになるのだが。龍は攻撃方法こそ大雑把なものの極めて高い知能を持った種族である。その龍との高度な読み合い。鮮やかなフェイント。まるで約束組手のように噛み合う動き。 一見アビゲイルが優勢にも見えるが彼女は集中を切らして少しでもミスをして攻撃を喰らえれば良くて致命傷、最悪即死。一方龍はもし攻撃が当たっても即死は疎か致命傷にはならない。 だが、彼女の一撃一撃は致命傷とはならなくとも確実にダメージを蓄積させていた。龍にあと一撃でもまともに喰らわせることが出来ればそのまま致命傷まで持って行けるだろう。 この静かで激しい戦いの結末は唐突に訪れた。ギアを一段階あげた彼女が龍の攻撃を潜り抜け龍の逆鱗に渾身の一撃を叩き込んだのだ。 そこから傷口を広げようとしたところで龍の尾によって彼女の身体を吹き飛ばされた。相打ちにするために最期の力を振り絞っていたのか龍はそこで力尽き、動かなくなった。 結果的に最期まで生きていたのはアビゲイルだった。しかし龍に吹き飛ばされた彼女も無事とは言い難い。助骨が折れて内蔵に刺さってしまっていた。 なけなしの魔力でどうにか生命活動を維持してはいるものの短時間の延命に過ぎない。それでも彼女は満足であった。最期に故郷の愛すべき住民たちを救えたのだから。 ただ……少しの心残りがある。それはルミナリア領のこれからのこと。だがそれに関しては自らの兄妹たちを信じて託すことにする。あとは自らの力に奢り、強さの追求を怠った自らの甘さを恥じるのみある。 わたくしもそろそろ逝くみたいですわね。お父様、お母様。先に逝く親不孝者なわたくしをお許しください。 この日、この国最強の剣士がこの世を去った。このニュースは瞬く間に国中、そして大陸中に広まることになる。剣姫アビゲイルの名は彼女の最大にして最期の偉業、龍殺しと共に長く語り継がれることになるだろう。 歴史上、竜を討伐した者はいる。しかし、龍を討伐した者となると伝説の英傑たちだけである。剣姫アビゲイルもまたその英傑たちの中に数えられることになるだろう。
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#3 魔物がゲロマズですわ!
 やり直し後すぐに修行を再開し、こっそり魔窟に入って魔物をもぐもぐをする日々を……「おえっ……いやマッズ!あ、ドブみてぇな味に思わず汚い言葉を使ってしまいましたわ!メイド長に叱られてしまいますし気を付けませんと。」 そんな日々を続けて数ヶ月が経ったある日アビゲイルはとある問題に頭を悩ませていた。魔窟に入っていたことがバレたのだ。「お、お父様?これには魔窟くらい深いわけがあるんですの!」 余談だが、魔窟は莫大な魔力によって空間が歪んで森内部が拡張されているだけで本来の規模はそこまでだったりする。そのため、森の中を突っ切るよりも森の縁に沿って進んだ方が距離が短い。それはさておき……『ほう、それはこの俺、もといイザベラを納得させられる程のものなのか?さぁ試しに言ってみるといい。』 マ、マイン踏みましたわァァァ!これ絶対何言ってもお父様に言い訳だと思われるやつですわ!どう取り繕ったところで何適当言ってんだ!って怒られるパターンですわ!こ、こうなったら諦めて開き直るしかありませんわね!「わ、わたくしは強くなりたいんですの!絶対に強くならなければいけないんですの!何をしてでも……」『何がお前をそこまで駆り立てるんだ。』 龍に殺されたことを理由には出来ないですし……え、え〜っと……え〜っと……こ、これですわ!「弱いままでは誰も、自分自身の命すらも守れないからですわ。わたくしは全てを投げ打ってでも強くなると決めたんですの!」『どういう経緯でそう考えるに至ったかが気になるところだが……まぁいい。それよりお前の手網を握ることを考えねばな。俺がダメだと言ったところでどうせまた魔窟に入るのだろう?』 乗り切ったと思ったら乗り切れていませんでしたわ!何が悪かったんですの!?「そんな!は、入るわけがないですわ!」『俺は……つまらない嘘が嫌いなんだ。』"ビクッ" な、なんでバレてるんですの!?まさか表情に出て……"ムニムニムニ" おかしなところは……"モチモチモチ" なさそうですわね!『何をしている?』「なんで嘘だって思われたのが気になったので表情を確認しようかと思いまして……」『はぁ……もういい。うちの騎士団の奴らの実地訓練に参加してこい。6歳のお前に魔窟はまだ早いとは思う……が、俺らの目を盗んで入られるよりはマシだろうからな。くれぐれも先走って
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#4 お父様とO・HA・NA・SHIですわ!
「ふんっ!ふんっ!ふんっ!ですわ!ですわ!ですわ!」 いつも通り奇妙な掛け声とともに素振りをするアビゲイルにいつもとは違うあることが起きようとしていた。彼女の父親であるアルバードが訪れたのだ。 『アビー、俺自ら稽古を付けてやろう。』 お気持ちは嬉しいのですけれど、今の時点でも技術ではわたくしの方が上ですわ。筋力とかを考慮すれば実力はトントンかもしれませんわね。ですが、娘にかっこいいところ見せることしか考えてない今のお父様に私の模擬戦相手が務まるとは正直思えませんわね。 わたくしは知っていますわよ?私が倒れていた間に溜まった書類仕事がまだ片付いてないせいでそれに追われていることを。そのせいで元々ほとんど確保できていなかった修練時間が最近はゼロであることを。 まぁ、お父様と稽古をするのもルミナリア流の剛剣を見るのも久々ですしいい機会ですわね。この機会にルミナリア流の剛剣の術理の復習と対処の復習をするとしますわ! 「ルミナリア辺境伯家の当主たるお父様と手合わせできるなんて光栄ですわね。その剣技、遠慮なく盗ませていただきますわね!ですのでお父様の全力を、技の全てを見せていただけると嬉しいですわ。」 『フッ、お前も言うようになったではないか!だが、お前は少々自惚れが過ぎるようだ。実践で死ぬ前にその自信、この俺がへし折ってくれるわ!』 わたくしの方こそお父様の慢心を打ち砕いてみせますわ!今の強さに満足していては万が一の時に殺されてしまいますもの。 「わたくしの自信が過ぎたものかどうかはわたくしに勝ってからいってくださいまし!」 『先手は譲ろう。さぁ来い!』 「わたくしを前にしてその余裕、すぐに後悔することになりますわよ。まぁ、譲っていただけるなら遠慮なく行かせていただきますけれっ……ど!」 やっぱりですわ。わたくしの速度に全く反応出来ていませんわね。このままわたくしが攻めていては学ぶまもなく終わってしまいますし、軽く一当てして一度下がって構え直してもらいましょうか。 「足元がお留守ですわよ!」 『な!』 「お父様、今目の前にいるのは剣を振り始めてすぐの幼子でも教え導くべき格下でもありませんわ。舐めてかかっていると、今度こそ一瞬で終わりますわよ。お父様、今度こそ全力を出してくださいますわね?」 そう言ってわたくしは殺
last updateDernière mise à jour : 2025-06-30
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#5 知ったかぶりはダサいですわよ?
「お父様は禍神を知っていたんですわね。」『禍神というのは……なんだ?』 え?知らなかったんですの?「え?さっきの反応は禍神について何か知ってる人の反応でしたのに!」『そんなもの俺が知るわけなかろう。俺にも分かるように禍神について説明してくれ!』 えぇ……よくわかってないのにとりあえずそれっぽい反応しただけなんですの?ほんとにこのオヤジは……。上がりかけた評価が急降下ですわね。「分かりました。この件に関してわたくしがしっかりと説明いたしますわ。ですがこの件は他言無用でお願いいたしますわね!それを了承いただけないならわたくしも無用な混乱を避けるためにこの場では黙秘いたします。」『もちろんだ。俺の口はそんなに軽くないぞ。』 急に嘘臭いですわね。わたくしの中では気の強い女性に詰められたらすぐ情報ゲロるイメージでしたのに。「お母様に詰められたらあっさり話そうですのに意外ですわね。」『…………お、俺の口は固いからな、問題ない。』 この間は絶対嘘じゃないですか。「本当にそうなら露骨に目を逸らすのをやめていただけません?」『…………う、うむ。』 ダメだこりゃですわ。「秘密にして頂きたいのにも理由があるんです!そこはちゃんと約束していただかないと話せませんわ!」『分かった。分かったから……』 これはお母様に言うやつですわね。まぁこれだけ繰り返し言っておけば時間稼ぎくらいにはなりますわよね。お母様がこのことを知る時期が少しでも遅くなればいいんですけれど。「もういいですわ。いつかはお母様にも言わなければいけないことですし。わたくしとこの領地にいずれ降りかかる災厄。そして私の誓いについて……」『災厄?誓い?おいおい突然何を─────』 当然の反応ですわね。   「わたくしアビゲイル=ルミナリアは、未来で死にましたわ。」『おいおいアビー、さすがに死ぬだなんてそんな不謹慎なジョークはお前らしくないぞ?』 さすがに自分の死をジョークで言うのはブラックジョークが過ぎませんこと?「お父様、これは残念ながら冗談ではありませんわ。」『本当なん……だな?』「えぇ、本当ですわ。わたくしははっきりと覚えております。最期の力を振り絞った龍にしっぽで吹き飛ばされて折れた助骨が内蔵に刺さって死んだあの日を。」『さっきの動きを見る限り未来のお前が負けるなんて想像
last updateDernière mise à jour : 2025-07-01
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#6 丈夫な剣をゲットですわ!
『神に匹敵する生物、禍神か……。世界にはまだ見ぬ強者で溢れているのだな。』「えぇ、そうですわね。古代文明の崩壊以降は人と接触することはなったですけれど、彼らは確かに存在していますの。そしてその禍神三体の討伐こそがわたくしが龍と相打ちして死んだ私の目標ですわ。前回の私は討伐のためのパーティを集めようと動いてはいましたがその前に死にましたもの。今回は最初っから妥協なしで行きますわよ。」『そう……か……』「というわけでわたくしは早急に強くならなければいけませんの。そして、討伐対象を探すために旅に出る必要もありますわ。だからいずれお母様にもこのことを話さなければいけないとは思っていますけれどそれは今ではないんですの。先のことを話して余計な心配をかけたくないですしね。」 この話をお母様にしたら絶対に止められますもの。お母様もなかなか譲らないでしょうし、ぶっちゃけ説得するのがめんどうですのよね……こんなことを口に出したら怒られるのは分かりきったことですし、お口チャックいたしますわ。『ところでその旅は一人で行くのか?』「当然一人で行きますわ。生半可な強さで連れて行くのは死なせるようなものですし、戦いに付いてこれるような戦力をこの領から引き離すのはさすがにまずいですわ!」『そうか……寂しくなるな。』「まだまだ先の話ですわよ!貴族令嬢の義務として一応学園は卒業するつもりですし。それに、旅に出たら帰って来れないわけでもないですもの!もしかしてもう戻ってくるなとでも遠回しに仰ってるんですの!?」『そんなこと……言うわけがないだろうに。例え一人で旅に出てもこの家はこの領は……アビー、お前の実家だよ。いつでも帰ってこい!』「だからまだ先の話だと何度言えば分かるんですの!」『手紙も、定期的に送ってこいよ!』「だ〜か〜ら〜!まだ先だって言ってんですわ!耳腐ってるんですの!」『必ず生きて帰ってこいよ。』「チッ」 もうこのアホにいくら説明したところで伝わりそうもないですわね。きっとわたくしの一人旅がショック過ぎたのか情報を処理しきれていないんですのね。時間を無駄にしないよう素振りして待ちますの!「ですわ!ですわ!ですわ!えいやっ!ですの!えいやっ!ですの!」 こんな代わり映えのない日々が一日、また一日と過ぎていった。そしてついに騎士団の魔窟演習(with アビゲイ
last updateDernière mise à jour : 2025-07-02
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#7 我流 渦潮ですの
[今回アルバード様の指示でお嬢様を演習にお連れするわけがお嬢様の安全を確保できるんですか?いくらアビゲイルお嬢様が初代当主様に並ぶ程の才を持つ天才剣士とは言ってもまだ6歳じゃないですか。ご自分の剣の腕に自信があるみたいですけど、行くのはあの魔窟ですよ?どう考えても早すぎますよ!何を考えているんですか!] [俺らじゃ立場上あまり強く言えませんしね。あんなに幼い子どもですし好奇心に任せてどんな行動をとるか予想もできませんよね。なんかあったらお嬢様を守りながらの撤退戦をすることになりますね。生きて帰れたとしてもお嬢様に怪我を負わせようものなら俺らは首になっちゃいますよね……物理的に。] [はぁ……下っ端の俺らは騎士にもなって子どものお守りか……] [アルバード様は何をお考えなのだ……] [そのくらいにしとけよ、お嬢様や団長たちに聞こえちまう。] 聞こえていないと思ってらっしゃるみたいですけれど、もう聞こえていますわ。団長さん、そっち見てますわよ。モブ騎士ズ、ご愁傷さまですわ…… 『おいお前ら!雑談をするのは構わないが……内容には気を付けろよ?お前らを不敬罪で処罰しなければならなくなる。俺の剣を仲間の血で汚させるなよ?』 [は、はい!][気をつけます!][はい!] さすが団長さんですわ。あっという間に雑談が終わって団員たちを戦士の顔つきに変えましたわね。わたくしもこんな威厳が欲しいのですけれどなかなか難しいのですよね。 『まだ危険度の低い表層とはいえここは魔物の領域だ、何が起こるか分からない。周囲の警戒も欠かすなよ!』 にしてもこの団長さん、なかなかどうして手練ですわね。ちょっと戦ってみたいですわね。ダメでしょうか……ダメですわよね……。あ、それと…… [[[はい!]]] 「しっかり聞こえておりましたわよ、お三方?後で覚えておいてくださいまし。」 [[[ひゃいっ!]]] 『我々はこれで……お前ら!お前らが大口叩いた分、きっちり働いてもらうぞ!』 これでいいですわね。辺境伯家長女として舐められたままでいる訳にはいきませんもの。 「フッ、やっと来ましたわね。」 [敵襲!3時の方向に27体!ウルフ種です!上位種も確認しました!] それにしてもおっそいですわね。犬畜生のくせに走るのも遅いんですの?まぁいいでしょ
last updateDernière mise à jour : 2025-07-06
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#8 異性にモテない2人組ですわ
もう死んだ魔物にぶつくさと文句を言いながら魔物の解体を進めるアビゲイル。弱いとは一応は魔窟の魔物、その魔力を吸収しないのは少々もったいないのだ。故にアビゲイルは弱い弱いと言いつつも魔物を食べるために解体をする。 だが、その際の返り血を気にしていなかったため、唯一我を失っていなかった騎士団長は思わず失言をしてしまう。(アビゲイルは長らく一人で狩りをしていたため解体時の汚れには無頓着だった。) 『おいおい、こいつぁ化け物かよ……』と。 「淑女相手に化け物は不躾ではなくって?」 やれやれ、本当に団長は淑女に向かってなんてことを言うんですの!そんな化け物扱いをされるとさすがのわたくしも傷つき……傷つ……別に傷つきはしませんわね。わたくし相手だから良かったものの一人の紳士として最低ですわ! 今回は6歳児が返り血を浴びながら解体してる様を見て団長は化け物と言ったのである。わたくしだから良かったもののとアビゲイルは言ったがそもそもそんな状況は普通なら起こらないのだ。相手がアビゲイルだったからこそ起きたイレギュラーと言えよう。こんな幼女がそう何人もいてたまるか。 『失礼いたしました、アビゲイルお嬢様。』 「そんなんじゃモテませんわよ。」 『うぐっ…………』 見当違いなことを考えていたアビゲイルだったがここに来てクリーンヒットである。この言葉は年齢イコール恋人いない歴の団長に対してはあまりに鋭い言葉であった。ただただ団長が哀れだ。 『お、お嬢様こそもう少しお淑やかな行動を心がけた方が良いのではないですか?我々のような武闘派ならともかくお嬢様の婚約者候補となるのは貴族です。その大多数はお嬢様の嬉々として魔物を狩って解体する様を見て怖がりますよ?血が苦手な方もいっぱいいらっしゃるでしょうね。』 「うぐっ…………」 恋人がいないのはやり直し前のアビゲイルもであった。自らの研鑽に明け暮れる日々。異性とは男女の中というよりは好敵手、もしくは戦友のような関係であった。 そんな脳筋組以外にも彼女の戦闘を見るまでは好意を持つものは数多くいたのだが、彼女の戦闘を見るとドン引きして好意を持ったもの全てが脱落するのだった。彼女のそしてアビゲイル、どちらかと言うと同性にモテるタイプなのである。 彼女の強さと優しさに惹かれて告白する者も多くおり、戦闘を見
last updateDernière mise à jour : 2025-07-07
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#9 ノンデリ野郎は潰しますわ
「おいこのノンデリ野郎、わたくしの獲物を取ったら殺しますわよ?」 全てはわたくしの成長の糧。わたくしの獲物は強大。故に奴らを狩るまでは一匹たりとも譲ることなどできませんの。 『ノンデリ野郎とは俺のことですかな?それは失礼しました。お嬢様の傷口に塩を塗るなど臣下としてあるまじき愚行。申し訳ございません。』 「気にしてなどいない。あくまで一般論だ。魔物は全てわたくしの獲物ですので悪しからず。」 『一応これは我々の訓練も兼ねているので多少は回していただけると助かります。』 「考えておきますわ。」 考えておくと言っただけなのに……。その場を流すために適当に答えただけだというのにあのクソ野郎は! 『はははははっ!こんなに魔物を騎士団に回していただけるとは助かりますなぁ!まさか、お嬢様ともあろう方が取り逃してしまったなんてありませんよね?我々に回しただけですよね?』 「あ゙ぁん?」 『ははははははっ!』 何度このノンデリ野郎をぶち殺してやろうと思ったことか……。絶対潰す。ノンデリ野郎のノンデリ野郎を再起不能にしてやる! ◇◇ そんなこんなで騎士団に帯同しての初魔窟遠征は何事もなく終わってしまった。非常に残念ながらなんのイレギュラーもなく終わってしまった。ノンデリ野郎と言い争ったあと、強い魔物の気配を探しはしたのだが成果はなし。 ノンデリ野郎との口喧嘩による鬱憤とクソザコナメクジとしか戦えないストレスを晴らすためにサーチアンドデストロイで八つ当たりし続けたのだが、一向に気は晴れないまま日程が終了。ノンデリ野郎との共闘で返ってストレスが溜まる結果となった。 もうこれはノンデリとの模擬戦で半殺しにしてストレス発散するしかない。すなわち……徹底的に潰す! 「お前を殺す。」 つい?うっかり?不注意で?本音がポロリしちゃったのもしょうがないですわよね。全部あのクソ野郎が悪いんですもの。ノンデリ野郎のノンデリ野郎には責任を取ってすり潰されていただくしかありませんわね。なんてったって悪いのはあの男ですものね! このわたくしが直々に潰してやるんですもの。感謝して死になさい。男として。
last updateDernière mise à jour : 2025-07-08
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#10 絶体絶命ですわ!
おいおいこのお嬢様もしかしなくても俺のこと本気で潰しにきてねぇか?おっと!的確に急所を潰しにきてやがる!多少の欠損程度なら魔法で治るとはいえ一度潰れたらトラウマで不能になるんだぞ!腕とかなら治れば機能も復活するけどよぉ……ソコは治らねぇんだぞ! 「ちょ、お嬢様?俺のっ!大事なっ!息子をっ!潰そっ!としないっ!でくれまっ!せんかねぇ!」 殺気ダダ漏れだしよぉ。いやね?俺も幼いとはいえレデイ相手に婚期の話のはまずかったかもしれねぇけどよぉ。あ、化け物って言ったのもまずかったか。でもよぉ、血に濡れながら淡々と魔物を殲滅していく子供がいたらそりゃ怪異の類だろう?悪かったとはもちろん思ってるぞ?でもこんな殺気垂れ流しながら急所狙いで攻め立てんでもと思うわけよ。 あぁ……でもあれか。客観的に見れば騎士が公爵クラスの貴族のご令嬢相手に化け物とか言ったつう事案なわけだが……普通に考えたら一族郎党あの世行きだな。それを殺気丸出しとはいえ模擬戦で許してくれるんだから十分温情をかけてくれてんのか。こりゃ……死んだか? いやでも流石に俺は団長だしな。チョン切られる女の子にされちゃうなんてことにはさすがになら……なら……なるわこれ!お嬢様が満足するか当主様が覗きに来て止めるまで耐久するしかないんだけど無理そうなんだよなぁ。 ◇◇ にしてもこいつこの辺境伯家の騎士団で団長してるだけあってクソ硬ぇですわね。いくら手加減してるとはいえここまで耐えるとは予想外ですわ。耐えられてるのはムカつきますけれど、加減をミスってうっかり殺したらさすがに父様に怒られますし不用意に人を殺す趣味などありませんもの。 「いい加減くたばりやがれですわ!」 あ、お母様かメイド長はいませんわよね!聞かれてませんわよね!な、な、な、な、な、なんでメイド長が騎士たちに混じっていますの!?こ、これは模擬戦が終わり次第逃げる必要がありますわね。 逃げたところであとで再教育が待っている気がしますけれど……わたくしは今を生きるのですわ!あとのことは未来のわたくしに任せてしまえばいいんですもの! そうと決まればメイド長の目が怖いですしさっさとこの模擬戦を終わらせてトンズラこいてやりますわ! 「騎士団長、次の技を受けて立っていられたら許して差し上げますわ!せいぜい痩せ我慢でもしてくださいまし!」
last updateDernière mise à jour : 2025-07-11
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