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第29話

Auteur: 玉井べに
梅代は気が立っていて、呼吸まで乱れていた。

「おばあちゃん」夕星は梅代の手をぎゅっと握り、慌てて言った。「凌がここにいるから、私は大丈夫だよ」

梅代は、そばで背筋を伸ばして立つ孫婿を見た。二人の仲睦まじさを思い出し、徐々に息が落ち着いていく。

いずれにしても、夕星にはもう自分の家庭があるのだから、秦家にはあまり戻らなければいい。

そう考えると、凌の姿も少しは目に優しく映った。

「もうこれ以上、夕星の休息を邪魔するんじゃないよ。私を家まで送っておくれ」梅代はむすっとしたまま正邦に命じた。

正邦は面子を潰されたが、従わないわけにはいかず、母を支えて立ち上がる。

梅代は夕星に目を向け、その表情を柔らかくした。「しっかり休んで。おばあちゃんが保証する。もう誰にも邪魔させないから」

夕星の鼻先がつんと痛んだ。「ありがとう、おばあちゃん」

正邦は梅代を支えながら部屋を出ていく。

凌は枕を抜き取って平らに整え、彼女の柔らかい唇にそっとキスした。「もう寝ろ」

そして、音を立てずに部屋を後にした。

夕星は半分顔を布団に埋め、体を少し横にして、目には涙がじわりと広がった。

それは全部、押し込めた悔しさであり、弱さだった。

秦家へ戻る車の中。梅代は息子に冷たい顔を向けた。「帰ったら雲和に言いなさい。節度もわきまえず、用もないのに凌くんのところへ行くんじゃないよ」

夕星夫婦が仲良く暮らせるよう、この老婆としても少しは助けになりたい。

正邦の頭に浮かんだのは、夕星が母親に何か吹き込んだのではという疑念だった。

「あの娘はまた母さんに何を吹き込んだんだ?」

梅代の杖が正邦の足を叩き、冷たい声が飛ぶ。「正邦、あのとき雲和が婚礼から逃げ出したとき、夕星に代わらせた。夕星は秦家のために引き受けたんだよ」

「今になって二人が仲良く暮らしているというのに、また雲和を絡ませようとする。あなたの考えはどこまで腐っているんだい?」

正邦は痛む足を押さえながら口にした。「雲和と凌くんは子供のころから一緒に育った。特別な絆があるんだ」

梅代は息子の考えをよく知っている。「その汚い考えはやめなさい。あなたたちが夕星をいじめるなら、この老婆が一番に許さないよ」

正邦は表情も変えず受け流した。彼には彼の思惑があったが、母親が夕星をひいきしているのはわかっているので、それ以上は
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