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57. 実践で示す真実

last update Last Updated: 2025-10-14 19:03:34

「なん……なんだって?何を誤解しているんだ」

律は、目に見えて動揺しているが認めようとはしなかった。

「そうでしょ?さっき私がトイレに行ったとき、瑠理香さんに腕を触れられてシャツのグロスのシミ大丈夫だったか聞かれていたじゃない。見つめ合っちゃって、今日も仲良さげに一緒に来て、そっちの方が十分おかしいと思うんだけど」

「それは……」

「仮にも私はあなたの妻なんでしょ?それなら、今日瑠理香さんと私を会わせたのも、他の女がいても何も文句を言うなってことなの?」

律は、呆れかえったように溜め息をつき、手で頭を抑えている。

「反論できないわけ?やっぱりそっちの方が怪しい関係じゃない!」

「違う。俺が話をする前に遮ったのは凛だろ!……言っても分からないなら実践する方が早いな」

律は、私の手首を掴んで引っ張ると、リビングの大きな窓ガラスに身体をつけさせた。背中やふくらはぎの身体の後ろ側から窓ガラスのひんやりとした熱が伝わる。

「ちょっといきなり何するのよ。ビックリするじゃない」

「凜が勘違いしているのに話を聞こうとしないからだ

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