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第586話

Author: ドドポ
「社長、ここは冷房が効きすぎていますね」

洵がそう言い終わるか終わらないかのうちに、隣にいた愛生が口を覆い、大きなくしゃみをした。

それと全く同時に、洵は自分が着ていたスーツのジャケットを脱ぎ、澪の肩にそっと掛けた。

確かにここは冷房がかなり強く、澪は冷たい風に吹かれて全身に鳥肌が立っていた。

自分が寒がっていることに真っ先に気づいてくれるのが洵だとは、彼女は予想もしていなかった。

肩に掛けられた洵のジャケットは、彼の微かな体温を残しており、信じられないほど暖かかった。

向かい側では、愛生が寒さで顔を真っ青にしながら、連続で何度かクシャミをしていた。

彼女は憎々しげに洵を睨みつけた。

「全財産を捨てて一文無しになれば、私が諦めるとでも思ったの?」

洵の視線が愛生に向けられた瞬間、その眼差しは冷房の風よりもさらに凍てつくように冷たくなった。

「それは林さんの考えすぎです……」

彼の美しい唇が、浅く冷笑の弧を描いた。

「俺が全財産を放棄したのは、夏目社長のアシスタントになりたかったからだ。お前とは何の関係もない」

「あなた!」

愛生は怒りで目を剥いた。

「澪…
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