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第257話

作者: 炭酸が抜けたコーラ
「そのつもりはない」

貴臣は毛布を跳ね除けた。

「帰国する」

その瞳には、絶体絶命の淵へ追い込まれた者だけが宿す、反撃の炎が燃えていた。

「あちらの道が閉ざされているなら、戻るだけだ。そして、行く手を塞ぐ邪魔なものを一つずつ片付けていく」

彼は低く、押し殺した声で続ける。

「桐生家が彼女にしたこと。葵が彼女にしたこと。そして、俺が彼女にしてきたこと……全部だ。一つ残らず、利息付きで清算させてやる」

瑞人はしばらく無言で彼を見つめていた。

やがて、不意に吹き出す。

「……いい目になったじゃないか」

そう呟くと、彼は薬品棚の前へ歩み寄った。

「いいだろう」

瑞人は赤い薬液の入った注射器を取り出し、指先で軽く弾く。

「これは強化型のアドレナリンだ。昔、戦地の病院で使われていた代物でね。十二時間ほどなら、健康体と変わらない動きができるようになる」

彼は注射器を光に透かしながら続けた。

「ただし、薬が切れた後は地獄だ。死にたくなるほどの激痛に襲われるし、心臓に不可逆な損傷が残る可能性も高い」

瑞人はゆっくりと視線を上げる。

「それでも使う覚悟はあるか?」

貴臣
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