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第107話

Auteur: タロイモ団子
理玖は、紬が自分のためにこの小さなお守りを求めてくれたあの時も、今の自分と同じように胸を高鳴らせていたのだろうかと、密かに思いを巡らせていた。

会場の熱気は、すでに最高潮へと達している。

誰もが固唾をのんで見守る中、プレゼンターが封筒を開き、ゆっくりと受賞者の名を読み上げた。

「……橋本望美!」

会場は一瞬、騒然とした空気に包まれ、続いて水を打ったような静寂が訪れた。

やがて我に返った観客たちから、途切れ途切れの拍手が湧き起こる。

スポットライトが望美を捉えると、彼女が纏うダイヤモンドのドレスが眩い光を放った。

当の本人は、この結果をひどく「意外」とでも言いたげに、驚いた様子で唇を覆い、信じられないという風に両隣のゲストを見回している。

紬の唇から、冷ややかな失笑が漏れた。

本業で芝居をしていない時の方が、よほど名演技じゃない。

実のところ、望美自身も今夜の結果にはわずかな驚きを覚えていた。

――当初の目的は、剛に手を回させて自分を主演女優賞にノミネートさせ、レイの鼻を明かすことだけだった。

まさか、本当に二度目の主演女優賞を手にすることになるとは。

まあ、私
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    紬の表情にも、少なからず苦悩の色が浮かんでいた。理玖の瞳の奥にも、深く複雑な感情が揺れている。「まずはメイクルームに戻ろう」紬と理玖がメイクルームへ戻ると、カナが千鶴のそばに付き添い、あれこれと声をかけながら気遣っているところだった。そこへ、コンペ専属の医師も診察のためにやって来る。医師は足首の状態を丁寧に確認した後、残念そうに首を横に振った。「足首の捻挫がかなりひどいですね。怪我をした足には、しばらく体重をかけられません。二日ほど入院して、安静にする必要があります」「そんなの絶対に嫌です!」千鶴は痛みに耐えながら無理やり立ち上がろうとした。その声には、隠しきれない焦りが滲んでいた。すでにコンペは最後の大詰めを迎えている。これほど多くの人の期待を背負っている以上、ここで諦めるわけにはいかなかった。千鶴は青ざめた小さな顔に、無理やり笑顔を浮かべる。「私なら大丈夫です。ただのプレゼンテーションですし、足に気をつければすぐに終わりますから。皆さん、心配しないでください。本当に大したことじゃありませんから」みんなに信じてもらえないのではないかと不安になったのか、彼女は試すように前へ二歩ほど歩いてみせた。だが、次の瞬間。その体はぐらりと傾き、床へ倒れ込みそうになる。その姿を見た紬は、とっさに手を伸ばして千鶴を支え、どうにか転倒を防いだ。紬が無理をしないよう声をかけようとした、その時だった。千鶴の瞳に、大粒の涙が浮かんでいることに気づいた。その瞬間、紬は思わず言葉を失った。伝えようとしていた言葉がすべて喉につかえ、何も言えなくなってしまう。カナも千鶴の姿を見ていられず、そっと手を伸ばして彼女を抱き寄せた。「千鶴さん、もう無理するのはやめよう?たかがコンペなんだから、本当に気にしなくていいんだよ。一番大事なのは、千鶴さんの体なんだから」雅乃も同じ思いを口にする。「今回のコンペが大切なのは分かっています。でも、仲間を失うわけにはいきませんわ。本末転倒になってしまっては意味がありません」紬は場の空気を少しでも和らげようと、冗談めかして口を開いた。「千鶴、あなたの目には、私が自分の社員をこき使うような冷酷な上司に見えているの?」千鶴は胸の奥で大きく動揺した。そんなこと、思うは

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