Share

第6話

Auteur: ジャスミン
巧は顔をそむけ、真里を見下すような目で睨みつけた。

「川崎、お前ってやつは、本当に懲りない女だな!」

「阿久津家を出て、あと何日生きられるか見ものだよ!」

「今この瞬間から、婚約は破棄だ!お前はもう、俺の婚約者じゃない!」

おじいさまは怒りのあまり顔を真っ赤にし、震える指で巧を指さした。

「お前は目も心も節穴か……」

言い終える前に、おじいさまは目を閉じ、そのまま倒れてしまった。

医師たちは慌ただしく、おじいさまを処置室へと運んでいった。真里は焦りでとっさに立ち上がろうとしたが、傷に触れて再び床に倒れ込んだ。

「おじいちゃん、おじいちゃん……」

涙を流しながら、彼女は巧の裾を掴んだ。「見に行かせて、お願いだから……」

血と涙が床に滲み、赤い花のように広がっていく。

だが、嫌悪感をあらわにして彼女の手を振り払った。

「何、芝居じみたことしてるんだよ?」

「お前が変に焚きつけなきゃ、じいちゃんが倒れることもなかっただろ?」

「川崎、お前って本当に最低だな!」

彼はそのまま医師たちの後を追って病室を出た。そして念のため、ボディーガードに真里を見張らせて、どこへも行けないように命じた。

遠方にいた巧の両親も、知らせを受けて慌てて病院に駆けつけた。

「ほんの数日家を空けただけで、こんなことに!」

「このバカ息子!お前のせいでじいちゃんに何かあったらぶっ飛ばすぞ!」

巧の父親は息子に怒鳴りつけ、今にも手を出しそうになったが、母親が間一髪で止めに入った。

その場の空気を読んで、美都が口を開いた。

「真里姉がまたワガママ言って、巧兄がちょっと注意しただけなんです。そしたら、彼女がじいちゃんに告げ口してそれで……」

巧の母親の顔が一気に険しくなる。

「たかが孤児のくせに、うちで好き勝手やって、ふざけた話ね」

「自分がまるで本物のお嬢様にでもなったつもり?うちに寄生して成り上がるとでも思ってるのかしら、夢見るにもほどがあるわ!」

その言葉に、巧も思わず眉をひそめた。

「母さん、そこまで言うな。川崎の両親は、もともと父さんと母さんを助けようとして亡くなったんだ……」

「もういい!」父親が語気を強めて遮った。

「たった一度の恩で、一生彼女に頭を下げろと言うのか?」

「あんな傲慢な女と結婚したら、阿久津家がどうなると思ってる!」

「さっさと婚約を解消して、あの厄介者を追い出せ!」

巧は反射的に拒否しようとした。

彼は脅せば少しは言うことを聞くと思っただけで、本気で捨てるつもりなんてなかった。

今の真里は重傷で、味方もいない。自分がいなくなったら、彼女は誰に頼ればいい?

そんな時、美都が彼の前に立ちふさがった。

「今ここでかばったら、おじさんたちはもっと彼女に怒るわよ?」

「落ち着いて。まだ時間はあるから」

そう言って、彼女は提案を出した。

「真里姉を、いっそ留学させるのはどうですか?」

「今のわがままは巧兄への依存が原因だと思います。おじいさまが回復するまでの間、距離を置けば落ち着くはずです」

母親はすぐにその案に飛びつき、準備を始めた。

内心では、真里を一刻も早く遠ざけたくて仕方なかったのだ。

「本当にありがとう」巧は美都の手を握り、感謝の言葉を伝えた。

「真里にあんなひどい目に遭わされたのに、それでも思いやってくれるなんて……」

美都は優しく笑った。「まあ、真里姉だって、ちょっと感情的になっただけよ。私、そんなことで恨んだりしないわ」

数日間、真里は病室に閉じ込められていた。

話し相手もおらず、スマホが唯一の友達だった。

アルバムには、巧とのツーショットがたくさん残っていた。

最初はただ二人きりだった。同じタピオカドリンクを分け合い、手を繋いで歩いた日々。

どれも、かつて愛し合っていた証だった。

しかし気づけば、いつからか二人のデートに必ず美都がいるようになっていた。

彼女はスマホをスクロールしながら、Twitterを開いた。

何百件もの投稿が、ほとんど全部、巧に関するものだった。ふたりの生活を記録した写真、記念日に書いた文章。

コメント欄は、【恋愛脳すぎ】【人生全部阿久津巧かよ】といった批判ばかり。

それを見ながら、彼女は苦笑し、そっと首を横に振った。

今となっては、これらの写真も文章ももう必要ない。

そして、彼女は「アカウント削除」のボタンを押した。

Continuez à lire ce livre gratuitement
Scanner le code pour télécharger l'application

Latest chapter

  • 遅すぎた想い   第21話

    数か月後、真里と冬真は婚約した。あの日、巧を見送ったあと、真里は心配と怒りが入り混じったまま、冬真をクリニックに連れて行った。「見てよこの傷……」彼女は慎重に薬を塗りながら、呆れたように言った。「どうしてあんな無茶するの?顔に傷なんてついたら、もったいないじゃない」冬真はにこにこと笑いながら、彼女の手のひらにあごを乗せた。「君に少しでも同情してもらえたなら、殴られた甲斐があったってもんさ」真里は顔を赤らめ、ぷいっと彼をにらんだ。「もう、ほんと口がうまいんだから」それでも、彼女の表情には心からの心配が滲んでいた。「もう二度とこんなことしないって約束して。あなたが怪我するのを見るの、辛いのよ」「うん」冬真は真剣な面持ちで頷き、静かに誓った。「僕は誓うよ。もう二度と、真里を不安にさせたりしない」初夏のある日、ふたりは正式に結婚式を挙げた。降り注ぐ花びらのなか、祝福と拍手に包まれて、新郎新婦は互いのもとへ歩み寄った。「緊張するなあ」この瞬間でさえ、冬真の目には涙が浮かんでいた。「真里、実はずっと前から君のことが好きだったんだ」「まさか本当に、こんなふうに好きな人と結婚できるなんて……これ、夢じゃないよな?」真里は驚きつつも、その言葉にくすっと笑った。「夢なわけないじゃない」「私もよ、冬真。あなたのこと、とっても、とっても好き」彼女はつま先立ちになり、愛し合うふたりは神父の見守るなかでキスを交わした。その美しい愛は、会場中から祝福を受けた。「真里、ここを本当の家だと思ってくれる?」冬真の母親は目に涙を浮かべながら、ふたりの手をぎゅっと握りしめた。「あなたのお母さんも、きっと天国で安心してるわね」「ありがとうございます」真里はそっと目元の涙を拭った。「そんなよそよそしくしないでよ」冬真の母親はにっこりと微笑みながら言った。「ほら、なんて呼ぶべきかしら?」真里は涙の中で笑い、はっきりと声を出した。「お義母さん」「はい」……その頃、巧は会場の片隅で、ひとり密かに結婚式を見届けていた。彼には、真里に声をかけることも、近づくこともできなかった。ただ静かに、陰の中から彼女の姿を見守るだけだった。彼女が冬真と幸せそうに抱き合い、キスを交わすのを見たとき、彼はついに耐えきれず、その場を去っ

  • 遅すぎた想い   第20話

    巧は真里の件に心を奪われ、何日も阿久津グループに姿を見せていなかった。この事実を知った父親は激怒し、すぐに「手に負えない息子」を強制的に連れ戻すよう命じた。家に連れ戻された巧が目にしたのは、無言でリビングに座っている両親の姿だった。彼の姿を見た途端、父親は声を荒げた。「こっちへ来い!」バシッ!無表情のまま歩み寄った巧を迎えたのは、容赦のない平手打ちだった。顔が横に跳ね飛び、口元から血の混じった唾を吐き出した。その様子に母親が慌てて息子をかばいに駆け寄った。「話すなら話すだけでいいでしょ、手を出すなんて何考えてるのよ!」彼女は夫を睨みつけながら、息子を上から下まで確認した。そして見た瞬間、息を呑んだ。「ちょっと……これはどういうこと?巧、いったい何があったの?顔は誰にやられたの?」息子がこんな目に遭っていたと知って、母親は憤然と息子の腕を取った。「昼間っからこんな暴力なんて、法律も秩序もないの?」「母さんが文句を言ってやるわ!」「待って」巧の父親は怒りにまかせてテーブルを叩き、妻を怒鳴りつけた。「こんな時に何を騒いでいるんだ!」「こんな腑抜けに育てたのは全部お前の甘やかしのせいだ!」彼は荒い息を吐きながら、息子を指差して言った。「言え!どこで何をしていた!」「真里を探してた」巧は冷たく答えた。「彼女の生死をお前たちは気にしない。でも俺は気にする」「この一生で、婚約者は彼女一人だけだ」母親は疑問を口にした。「じゃあその体中の傷は?」「海城市の入江冬真がやったんだ」巧の声は一気に低く沈んだ。「あいつは真里の……恋人」真里が立ち去る前に言い放った、あの冷たい言葉が、頭の中で何度もリフレインしていた。どうして……どうして彼女はあんなにもあっさりと、二人の何年もの関係を捨て去れるのか……「馬鹿げてる!」父親はその様子を見て、怒りに満ちた声をぶつけた。「巧!その捨て犬みたいな姿を鏡で見たことあるのか!」「たかが真里一人のために、会社にも来ず、業務を放り投げ……お前のせいでここ数日、株価が何ポイント落ちたか分かってるのか!」「いい歳して殴り合い?恥ずかしいと思わないのか!」「しかもわざわざ海城市まで行って、入江家に手を出すなんて……入江家が海城市でどれだけの地元勢

  • 遅すぎた想い   第19話

    その瞬間、真里を見つめる巧の眼差しには、深い悲しみと悔しさがあふれていた。まるで次の瞬間、心が砕け散ってしまいそうだった。「本当に、何も感じないのか?」彼は必死に真里の手首を掴み、諦めきれない様子で問い詰めた。「俺たちの思い出を、ひとつも思い出せないっていうのか?」その勢いに真里は一瞬たじろぎ、思わず首を振った。巧の目には、徐々に怒りと狂気が色濃く浮かび始めていた。「じゃあ、あの雪崩は?」彼は過去の悲惨な出来事までも持ち出して、彼女の記憶を呼び覚まそうとした。「吉岡がお前を谷底に突き落として、両脚が切断されかけたことは?あれも忘れたのか?」「何ですって?」真里は眉をひそめ、もがくようにして彼の手を振りほどこうとする。「吉岡はお前を陥れるために、わざと雪山から突き落としたんだ。お前は雪に埋もれて七日間も助けが来なかった」彼が話すほどに、真里の顔色はみるみる青ざめていった。「お前の足は重度の凍傷を負って、その後、彼女とその兄がお前の怪我を隠し、虐待までして、海外に追いやろうとした。それも覚えていないのか?」真里の表情には、困惑と苦しみが混ざっていた。「じゃあ、私はどうやってここに?」巧は一瞬、唇を噛みしめてから、かすれた声で答えた。「お前は五階から飛び降りたんだ。植物状態になって、それから突然姿を消した……」真里の表情は、最初は戸惑い、次に衝撃、そして最後には怒りへと変わっていった。「じゃあ、あなたは?もし本当なら、どうして婚約者のあなたは私を守られませんか?」彼女は失望に満ちた眼差しで巧を見つめた。「どれも些細な出来事じゃないです。それなのに、あなたは私を本気で気にかけたことなんて、一度もなかったんでしょう?」「もう分りました」真里の声は冷たくなっていた。「私は、あなたに失望しきったから、自ら飛び降りて、記憶を失うことを選びましたね」「帰って、阿久津さん。私はもう、あなたとは一緒に戻らないです。今の私は、愛する人がいて、幸せなの」真里は鞄を手に取り、踵を返して扉に向かって歩き出した。「これからはもう会わないで。私の人生に、二度と関わらないで」「そんなの許さない!」巧の目が一気に暗く濁り、狂気の色が濃くなっていく。彼が手を振ると、数人のボディガードが真里を取り囲んだ。「一緒に帰ろう、真里

  • 遅すぎた想い   第18話

    それから間もなくして、真里のもとに巧からメッセージが届いた。【真里、会って話せないかな?】【俺、昔ひどいことをしてしまった。本当にごめん。あんな態度を取るべきじゃなかった】【でも、今はちゃんと自分の過ちに気づいた。お願い、もう一度だけチャンスをくれないか?】真里は、彼から届いたメッセージを見つめながら、戸惑いと共に、言いようのない違和感を覚えた。彼に関する記憶はまったくないのに、なぜかこの男と過去につながりがあったような気がしてならない。記憶の空白を思い出すたびに、その予感はさらに強まっていく。真実を確かめるためにも、一度会って話す必要がある。そう思った彼女は、メッセージを返信した。【会いましょう】「どうかした?」冬真が、彼女が外出の支度をしているのを見て声をかけた。「どこか行くの?送っていこうか?」「大丈夫。ちょっと……人に会うだけ」真里は首を振り、冬真の優しげな眼差しに一瞬、不安な気持ちを抱いた。もし冬真が怒ったらどうしよう。しかし彼女の様子を見て、冬真はもう察していた。「あの日の男だろう?」と、彼は小さくため息をついた。実は、彼は巧について調べ、その家柄や背景も把握していた。京市の阿久津家……冬真は眉を上げた。「なるほど、それなりの筋らしい」でもここは海城だ。自分の縄張りであれば、勝てないはずがない。真里を奪うなんて、絶対に許さない。「うん」と真里はうなずき、少し躊躇したあとに心の内を明かした。「私ね、なんとなく前に本当に彼のことを知ってた気がするの」「正直に言うと、記憶の一部が消えて、それが彼と関係あるかもしれないと思ってる」彼女は苦笑いを浮かべた。「ごめんね、今まで話してなかった」しかし冬真は首を振り、優しく彼女を抱きしめた。「気にしないで。きっと忘れるくらい辛い記憶だったんだろう?」「話したくなったときに、ゆっくり聞かせてくれればいいよ。僕は待てる男だから。彼氏ってのは、そういうもんでしょ?」真里の目の端に、じんわりと涙がにじんだ。両親を亡くして以来、誰かにこんなに大切にされるのは初めてだった。「ありがとう」彼女は強く彼を抱きしめ返した。「ちゃんと全部わかったら、そのときは必ず話すから」カフェで、巧は窓際の席で、待ち焦がれていた。真里が昔の

  • 遅すぎた想い   第17話

    真里は今日は特別にお洒落をしていた。新しい年の幕開けが近づく中、冬真は年越しの夜に彼女を映画に誘ってくれたのだ。その意図を察しつつも、彼女もまた、彼の優しく穏やかな性格に少なからず好意を抱いていた。彼女は冬真と一緒にいると、いつも心地よくリラックスできた。両親を亡くして以来、久しぶりに感じる安心感だった夕方になると、街にはネオンが灯り、華やかな飾り付けに包まれていた。道行くカップルたちが手を取り合って歩く姿もちらほら見える。年越しの雰囲気に合わせて、真里は深紅のロングワンピースにウールコートを合わせた。可愛らしさと上品さを兼ね備えた装いだった。ふと、小雪が降り始める。真里が思わず手のひらを差し出すと、突然頭上に影が差した。見上げると、冬真が彼女のマフラーを優しく整えながら、傘を自然に彼女の方へ傾けていた。「ごめん、待たせちゃった?」その気遣いに、真里の頬がほんのり染まる。彼女は微笑んで首を振った。「ううん、全然」「真里」冬真は彼女を見つめ、真っ直ぐに褒めた。「今日の君、本当に綺麗だよ」「ありがとう」冬真はブラウンのトレンチコートを羽織り、髪をきちんと整えていた。二人の美男美女の姿に、通りがかりの人々が思わず振り返る。「もうすぐ映画始まるよ」冬真は自然に彼女の手を取った。「行こうか」それは、二人が初めて手をつないだ瞬間だった。真里は少し照れたように唇を噛み、こくりと頷いた。「うん」しかし二人が振り向いた瞬間、男の声が、急に響き渡った。「真里!」真里が思わず足を止めて振り返ると、黒い服の男が近づいてくるのが見えた。この男は整った顔立ちではあるが、疲れの色が濃く、頬はげっそりとこけている。その目は情熱的で、まっすぐに彼女を見つめていた。彼は足を引きずりながらも、急ぎ足で近づいてくる。真里は眉をひそめ、戸惑いながら問いかけた。「すみません……どちら様ですか?」一瞬、男は雷に打たれたように固まった。彼は目を見開き、しばらく呆然と立ち尽くしたかと思うと、突如彼女の肩を掴み、激しく言った。「真里、俺だよ!阿久津巧!」彼は狂気じみた興奮を滲ませながら叫んだ。「俺に会いたくなかったのか?怒ってるからこんな態度なのか?」そして彼は冬真を睨みつけ、怒りを込めて問いただした。

  • 遅すぎた想い   第16話

    真里は自宅近くの花屋でフラワーアレンジメントの仕事を始めた。給料は高くないが、彼女はこの仕事がとても気に入っていた。花の美しさを誰かに届けることが、思った以上に彼女の心を満たしてくれた。働くうちに、気の合う友人たちもできた。「おはようございます、中村さん」真里が笑顔で店に入ると、店長の中村(なかむら)はすぐに湯気の立つ肉まんを差し出した。「ほら、今日私が作ったの。味見してごらん」準備がひと段落すると、真里は一件の配達を任された。意外なことに、配達先はなんと彼女の隣の家だった。彼女は百合の花束を抱えて隣の家の前に立ち、インターホンを押した。「すみません、すぐ出る」爽やかな男性の声が聞こえ、ドアが開くとハンサムな若い男性が花束を受け取った。「ありがとう……えっ、君って」男性は驚きと喜びが入り混じった声を上げた。真里が不思議そうに顔を上げると、どこか見覚えのある顔だった。「あなたは……」記憶を辿り、子供の頃のぽっちゃりした遊び仲間と重ね合わせた。二人が見つめ合い、真里はついに相手の名前を思い出した。「思い出した!あなた、入江冬真でしょ?覚えてるよ!」入江冬真(いりえ とうま)は笑って、彼女にハーブティーを差し出した。「まさか海城に戻ってくるとは思わなかったよ。しかもお隣さんだなんて!」「覚えてる?子供の頃、あの木の下でよくおままごとして遊んだよね」冬真は庭の杏の木を指さした。「いつも僕を引っ張って、木の下で家を作らせてた」「覚えてるよ!」真里は思い出し笑いを浮かべた。「でも、あなたって海外に行ったんじゃなかった?どうだった?」「うん、でもここには大切な人がいるから、戻ってこようって決めたんだ」冬真の目には優しい光が浮かんでいた。「君に再会できるなんて、やっぱり帰ってきてよかったよ」こうして、思いがけず再会した幼なじみは、今や隣人となった。冬真はたまに彼女を散歩に誘い、真里は手作りのスイーツをおすそ分けするようになった。冬真が飼っているアラスカンマラミュートは、初めて真里に会った時から興奮しすぎて、彼女の足に飛びついてなめ回した。それ以来、ふたりの日課には犬の散歩も加わった。「すごくいい子ね……名前は?」真里がフリスビーを投げると、犬はすぐに咥えて戻ってきた。「まだつ

Plus de chapitres
Découvrez et lisez de bons romans gratuitement
Accédez gratuitement à un grand nombre de bons romans sur GoodNovel. Téléchargez les livres que vous aimez et lisez où et quand vous voulez.
Lisez des livres gratuitement sur l'APP
Scanner le code pour lire sur l'application
DMCA.com Protection Status