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第2話

Penulis: 青ちゃん
「でも今回は、俺のほうが先回りした」

蓋を開けると、銀白色のネックレスが現れた。小ぶりでシンプルなトップは、まさに私が普段好むデザインだ。

「付き合って一ヶ月の記念日」幹生は口元を緩め、柔らかい声で言った。

私は一瞬ぽかんとして、反射的に半歩下がった。「これ……いらないよ」

「なんで?」彼は一歩距離を詰め、低く囁くように言い寄った。

「明日、クラスのみんなでカラオケに行くんだ。カップルのペアで行こう。可愛いし。みんなに、俺たちは付き合ってるって堂々と見せればいい」

私は何か言おうと口を開いた。

幹生は私のためらいに気づいたようで、急に笑い出した。

「今はまだ大したものを買えなくてさ……ほんの小さなプレゼントだけど、嫌じゃないだろう?」

少し間を置いて、まるで約束を告げるかのように言った。「そのうち、もっといいものを買うから」

そう言い切ると、私が断る隙も与えず、彼は後ろに回ってそのネックレスをそっと私の首にかけた。

そして、指先で私の鎖骨をそっとなぞった。

私は伏し目がちに黙っている。

胸の奥から、じわりと苦みが染み出してきた。

――幹生、私たちにはもう「そのうち」なんて言っていられないよ。

翌日のカラオケ。

幹生が私の手を引いて中に入ると、すでにみんなは大騒ぎしている。

「うわっ、このカップル、ついに来たぞ!」

私たちが身につけているおそろいのネックレスを見つけた誰かが、からかってきた。

「なんだこれ!ひどいぞ、ラブラブ見せつけて独り身にダメージ与えるなんて!」

別の同級生が机を叩いて笑っている。

「鈴山って本当にすげーな。梅戸みたいなクール系イケメン落とすなんて!学校中の女子がみんな撃沈してたのに」

「幹生くんがかっこいいのはもちろんだけど、沙耶香もきれいで頭いいし、二人とも完璧なカップルじゃん!」

私の親友も笑いながらフォローした。

場のテンションはどんどん高まっていき、誰かが叫んだ。

「ほらほら!キスしろ!今日くらいサービスしてくれ!」

幹生はみんなに押され、口元に少し怠そうな笑みを浮かべながら、私の肩を抱いた。

「キス見せろって?寝言はやめろ」

「え、照れんな!」

「ひとつだけでいいから!それで今日が締まるって!」

茶化す声は止まらない。

私はうつむき、無理に笑みを浮かべた。

視界の端で、渚の顔色がひどく曇っている。

彼女は唇を噛みしめ、こちらをじっと睨みつけていたが、ついに口実を作って立ち上がった。

「ちょっと、トイレ」

表向きは彼女を見ていないふりをしていた幹生が、すぐに席を立った。

私も個室を出て、廊下を曲がり、脇にある小さなバルコニーへ向かった。

――やはり、そこに渚がいる。

そして幹生も、すでに彼女を追いかけて来ている。

「わざわざ私の前でイチャつきたいわけ?違うの?」

渚の声は冷たかったが、その奥にはどうしようもない悔しさが滲んでいる。

「しかもおそろいのネックレスまでつけて。気持ち悪いと思わないの?」

幹生は慌てて彼女の手をつかみ、低い声で宥めた。

「言っただろう。あれは疑われないように、あいつを安心させるためだって。

今日あいつがどれだけ嬉しがっていても、明日になったらその分だけ惨めになるんだ」

少し間を置いて、なだめるように続けた。

「それにさ、ただの安物のネックレスなんてどうでもいいだろう」

そう言って、幹生はポケットからベルベットのジュエリーボックスを取り出し、渚に差し出した。

「本当に大事なのは、こっちだから」

私は暗がりの中で、そのボックスに刻まれたブランドのロゴをはっきりと見た。

それは、ある海外ブランドの限定プロミスリング。

世界規模で実名登録制で、一生に一度しか買えず、一人にしか贈れないと言われている品物だ。

――幹生は勘違いしている。

付き合って一ヶ月の記念日に、私が何も準備していなかったわけじゃない。

私はずっと貯金をして、同じ指輪を特注していた。

本当は、昨夜それを渡すつもりだった。

……ただ、結局渡せなかっただけだ。

そして今、彼はまったく同じ指輪を渚に贈っている。
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