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第207話:本気で言ってる?

Author: Sunny
last update publish date: 2026-08-21 21:40:08

音が消えたわけではない。

ポットの湯気も上がっている。

外の遠い車の音も聞こえる。

それでも、何かが静かに止まったみたいだった。

翔太はしばらく振り返らなかった。

カウンターに片手を置いたまま、少しだけ俯いている。

その指が、ほんのわずかに力を入れたのが見えた。

「へぇ」

小さな相槌。

感情が見えない。

翔太はまた、何事もないみたいにお湯を注ぎ始める。

でも、さっきまでと少し違った。

手つきは丁寧なのに、静かすぎる。

感情を出さないために、必要以上に動きを整えているみたいだった。

少しして、翔太は淡々と言った。

「……やめといたら」

私は顔を上げる。

「え?」

翔太は振り返らない。

静かな声だった。

怒ってもいない。

責めてもいない。

でも、少しだけ冷たい。

「お試し?」

少し考えるように続ける。

「そんな曖昧な形で付き合っても」

そして、ようやく振り向く。

目が合う。

「また距離置いてさ」

言葉が、少しだけ低い。

「愛子は、逃げるんじゃないの?」

息が詰まる。

責められているわけじゃない。

怒鳴られているわけでもない。

でも、少しだけ批判的な目だった。

胸がざわつく。

嫌だった。

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