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第11話 初公判

Penulis: 桃神かぐら
last update Tanggal publikasi: 2026-08-05 18:00:00

 裁判所の廊下は、会社の会議室よりも静かだった。

 静かすぎて、靴音がよく響く。

 東京地方裁判所。

 午前九時四十分。

 高瀬悠真は、代理人弁護士の矢島明彦、桐生麻衣、取締役CLOの大槻沙織とともに、民事部の法廷前にいた。

 今日は、株式会社ネクストリンクが起こした損害賠償請求訴訟の第一回口頭弁論だった。

 原告は、株式会社ネクストリンク。

 被告は、高瀬美咲、桐谷健吾、西岡大輔、山城直人、小田切修、江藤真一。

 請求額は、七千二百四十万円。

 不正支出四千八百万円。

 調査委員会費用一千四百五十万円。

 外部専門家費用六百二十万円。

 内部対応費等三百七十万円。

 そして別事件として、高瀬悠真個人による離婚訴訟と慰謝料請求も進んでいる。

 家庭の裏切りと、会社の損害。

 同じ人間たちが起こした事件でも、法廷では別々の皿に分けられる。

 それが裁判だった。<

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     午前五時二十分。 警視庁捜査二課の会議室には、まだ夜の匂いが残っていた。 窓の外は薄暗い。 東京の街は眠っているように見える。 だが、眠っている街の下で、警察はすでに動いていた。 会議室の正面には、三枚の顔写真が貼られている。 桐谷健吾。 元株式会社ネクストリンク営業本部長。 黒川亮介。 Raven Works代表。 青柳拓人。 Blue Mark Partners代表。 その横には、関係図。 ネクストリンク。 K-Bridge Consulting。 Raven Works。 Blue Mark Partners。 合同会社ミナトリサーチ。 S-Connect Holdings。 そして、複数の個人口座。 警視庁捜査二課の望月誠司は、逮捕状の写しを机の上に置いた。 四十六歳。 経済事件を長く追ってきた刑事だった。 怒鳴るタイプではない。 人の嘘より、金の流れを信じる男だった。 その横には、新谷怜奈。 三十一歳。 供述整理が速く、関係者の心理を読むのがうまい。 そして、森脇悠介。 三十五歳。 サイバー担当。 削除メール、端末ログ、クラウド履歴の解析を担当している。 望月が言った。「逮捕状は出た」 会議室が静まり返る。「対象は、桐谷健吾、黒川亮介、青柳拓人。容疑は、まず背任および会社資金流出に関する共犯構成を中心に取る。業務上横領、詐欺的構成、犯罪収益隠匿については押収資料と供述で詰める。特別背任については、高瀬美咲の取締役としての関与が絡む。検察と協議しながら固める」 新谷怜奈が確認する。「西岡大輔と山城直人は任意同行」「そうだ。西岡と山城は崩れかけている。今日

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     朝は、誰にでも平等に来る。 だが、その朝が何を連れてくるかは、人によって違う。 東京国税局査察部のフロアには、午前五時前から明かりがついていた。 窓の外はまだ暗い。 ビルの谷間に、夜の残りが沈んでいる。 しかし、査察部の中だけはすでに昼のようだった。 机の上には、令状請求資料。 対象先一覧。 押収予定物リスト。 人員配置表。 車両割当表。 銀行口座一覧。 法人登記簿。 税務申告書。 資金移動図。 そして、桐谷健吾、黒川亮介、青柳拓人の写真。 査察官の斎藤修司は、白い紙コップのコーヒーに一度も口をつけず、資料の最終確認をしていた。 班長の大石誠司が、腕時計を見る。「行くぞ」 午前五時二十分。 斎藤修司、小野寺紗季、田丸圭吾、成宮光、早瀬理奈たちは、東京地方裁判所へ向かった。 令状を取るためだった。 強制査察は、気分で行うものではない。 裁判所が認めた令状が必要になる。 どこに入るのか。 何を探すのか。 何の嫌疑があるのか。 任意調査では足りない理由は何か。 それを資料で示さなければならない。 裁判所の一室で、裁判官が資料をめくった。 対象。 桐谷健吾自宅。 黒川亮介自宅。 Raven Works事務所。 Blue Mark Partners事務所。 K-Bridge Consulting事務所。 青柳拓人自宅。 合同会社ミナトリサーチ所在地。 押収対象。 帳簿。 請求書。 契約書。 領収書。 通帳。 キャッシュカード。 印鑑。 パソコン。

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