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第514話
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離婚は無効だ！もう一度、君を手に入れたい 第515話
藤堂沢の言うことは正しかった。今夜、九条薫は確かに見合いをしに来ていた。ただ、知り合いに会うとは思っていなかったし、相手が清水士郎だとは思ってもいなかった。もちろん、藤堂沢の前で、彼女は弱みを見せたくなかった。九条薫は窓に寄りかかり、冷淡な口調で言った。「そうだったとして、それが何か？沢、私たちはもう他人よ。あなたが私を束縛する権利はないわ！」彼は何も言わず、ただじっと彼女を見ていた。しばらくして、九条薫が車から降りようとした時、小さな音がして、セントラルロックがかかった。彼女は彼の方を見た。彼の横顔は相変わらず何を考えているのか分からず、彼女をじっと見つめながら言った。「この間、そういう時は連絡し合おうって約束しただろう？忘れちゃったのか？」九条薫は恥ずかしくて、腹が立った。たとえ夫婦だったとしても、たとえ何度も関係を持ったとしても、彼があんなに平然とそういうことを言うのは、彼女には耐えられなかった。彼女は唇を噛み、ムキになって「今夜は、そういう気分じゃない！」と言った。藤堂沢は彼女に覆いかぶさり、彼女の吐息からかすかなアルコールの匂いを感じながら、しばらく彼女をじっと見つめた後、ゆっくりと尋ねた。「そういうことをしたくないのか？それとも、俺としたくないのか？」九条薫は顔をそむけ、冷淡な態度で「どっちも嫌！」と言った。「でも俺はしたい！」そう言うと、藤堂沢は背筋を伸ばし、アクセルを踏んで駐車場から出て行った。彼の動きは軽快で、2年間も障害を抱えていた男には見えなかった！九条薫の考えを察した藤堂沢は、前方の道路を見ながら、無表情で言った。「愛の力だ」九条薫は、藤堂沢が以前とは違うと感じた。昔は、あんな厚かましい言葉は言わなかった。彼女は藤堂沢が怒っているし、明らかにそういうことをしたいと思っているのだから、ホテルに連れて行かれるだろうと思っていた。しかし、まさか彼が別荘、つまりかつて二人の家がだった場所へ行くとは思わなかった。黒いベントレーが門の中へ入っていった。エンジンが切られると、九条薫は少し抵抗しながら、「沢、私はここに泊まりたくない」と言った。藤堂沢は彼女を見つめていた。彼の黒い瞳には、炎が燃えていた。しばらくして、彼は優しく低い声で言った。「ホテルは楽しいが、不衛生
離婚は無効だ！もう一度、君を手に入れたい 第514話
清水士郎は真剣な顔で「藤堂さんのせいですか？」と尋ねた。二人が復縁していないことはあらかじめ探っていたのだ。それに、九条薫にプロポーズをしたのもよく考えた末のことだった。長い時間をかけて彼はようやくもう若くはない自分は、彼女のような女性を妻にしたいと決心したのだ。彼女は美しく、とても魅力的だった。彼は彼女に夢中だった。九条薫は首を横に振り、「それだけではありません。清水社長、私には、あなたとは付き合えない理由があるんです。信じてください」と言った。清水士郎はしばらく彼女をじっと見つめていた。彼女が冗談を言っているわけでも、駆け引きをしているわけでもないことを確信し......彼は内心、とても残念に思ったが、それでも大人の対応をした。「そうですか。では、九条社長、食事だけでもご一緒させてください。ちょうど、今回の取引の詳しい話をしたいと思っていましたので」九条薫も、気取ることはなかった。頭のキレが良い人間を相手にするのは本当に楽しいことだ。お互いはっきりさせた後、二人は取引相手として接するようにした。夕食は、それなりに楽しいものだった。九条薫は知らなかったが、このレストランの支配人は白川雪だった。彼女は藤堂グループを退職後、転職を繰り返したが、どこもうまくいかず、結局ここで支配人として働いていた。白川雪も、ここで九条薫に会うとは思っていなかった。しかも、男とデートをしているなんて。二人が楽しそうに話している様子、男の甘い視線はすべて写真に撮られ、藤堂沢の携帯に送られた......帰る時、九条薫は自分で運転して帰ろうとした。しかし、清水士郎は「九条社長、お酒を飲んだでしょう。俺の運転手が送りますよ」と言って彼女を止めた。九条薫は気が引けたので、断った。清水士郎は本当に彼女のことを気に入っていたからこそ、彼女をとても尊重していた。紳士的に一歩下がった彼は、彼女に「ちょっと飲み過ぎたみたいだから、少し歩いて、散歩がてら酔い覚ましでもして帰るよ」と言った。九条薫はそれでも気が引けたが、清水士郎は「これが最後のアプローチだと思ってください。次に会う時は、このことは忘れて、ビジネスパートナーとして......そして、友人として、付き合ってください」と言って譲らなかった。九条薫は、彼がなかなか良い人だと思っ
離婚は無効だ！もう一度、君を手に入れたい 第513話
優しい夜の帳が下り、彼の声は甘く響いた。「藤堂奥様、お前は本当に気難しいな」九条薫は何も言わなかった。彼女はただ枕に頭を預け、彼の静かな呼吸音を聞いていた。何もせず、何も言わず、ただこうして時と命を持て余していただけだった......しかし、こうして一緒にいてくれる人がいるなら、持て余すことにはならないのかもしれない。その後、九条薫は眠ってしまった。藤堂沢は書斎に座り、静かに夜の闇を見つめていた。九条薫が自分を恨んでいることは分かっていた。あの時、彼は彼女を容赦なく追い出した。プライドの高い彼女が、簡単に自分とヨリを戻すはずがない。昨夜は確かに関係を持ったが、1度や2度関係を持ったくらいで、彼女が自分とヨリを戻すはずがないことは分かっていた。そうでなければ、なぜ彼女は家に帰ってくれない？夜が更ける中、藤堂沢は携帯を握りしめ、静かに言った。「薫、戻ってきてくれないか？」......藤堂沢は、真剣に彼女を求めていた。九条薫はすぐに彼を受け入れようとはしなかったが、藤堂沢も無理強いはしなかった。来るたびに、子供たちへのプレゼントだけでなく、九条薫や佐藤清にもお土産を持ってきていた。彼は、彼女をとても尊重していた。しばらく経って、佐藤清も九条薫に「もう何ヶ月も、藤堂さんは真面目にあなたに接しているわ。昔みたいに、あなたを騙して連れ戻そうなんてしていない......この様子だと、彼は本気みたいね！薫、あなたは彼のことをどう思っているの？もう少し試してみるつもり？それとも、他に何か考えていることがあるの？」とアドバイスするように言った。佐藤清は内心、焦っていた。二人はまさに結婚適齢期なのに、煮え切らない態度で、見ている方がもどかしかった。九条薫はうどんを打ちながら、低い声で言った。「確かに、彼への気持ちはあるわ。でも、おばさん、私は彼の世界に何度も行き来して、結局、辿り着くところがなかった！彼に追い出されたら、そこから去ることしかできなかったし！そういうの、本当に居た堪れなかった。でも、彼に安らぎを要求するのも、なんだか惨めだし、そんなことをする意味もないように思えてきちゃっているの。それに、今はそういう気分でもないわ」佐藤清は彼女の気持ちが理解できた。彼女はそれ以上そのことには触れず、「伊藤さ
離婚は無効だ！もう一度、君を手に入れたい 第512話
九条薫は別荘に入った。リビングは暖かく、2、3人の使用人が2階から降りてきた。彼女たちは九条薫を見て、「藤堂様からたくさんのプレゼントが届きました。2階の居間に置いてあります！九条様、ご確認ください」と丁寧に言った。彼女たちは普段からよく働いてくれていたので、九条薫は彼女たちを叱る気になれず、「ええ」とだけ言って、2階へ上がった。寝室のドアを開けると、居間には綺麗な箱が山積みになっていた。どの箱にもカードが添えられており、ざっと数えてみると......31個もあった。彼女は31歳。藤堂沢は31個のプレゼントを贈ってきたのだ。九条薫はコートを脱ぎ、カーペットの上に座って、プレゼントを開け始めた。高価な宝石、限定品のバッグ、シルクのパジャマ、女性用化粧品......最後の箱の中には、パテック・フィリップの女性用腕時計が入っていた。以前、九条薫は藤堂沢の身の回りの世話をしていたので、これが藤堂沢がいつもつけている時計とペアモデルだということが分かった。しかもその時計は、すでに製造中止になっていたのに、彼が特注で作ったものだった。とてもロマンチックだが、無駄遣いでもあった。九条薫はそのカードを一枚ずつ手に取り、読んでいった。どれも藤堂沢の直筆だった。こんな奔放的な字を書く彼がこういうラブレターのようなメッセージカードをわざわざ座って書く姿はなかなか想像し難いものだった。【初めてお前に会った時、お前は6歳だった。小花柄のワンピースを着て、二つに結んだ髪が可愛かった。薫、お前が小さい頃のことを覚えているのは、杉浦だけじゃない。俺だって、お前のお兄さんになれる】【薫、あの時、お前が離婚騒ぎを起こした時、本当のところ離婚届にはもうサインしてあったんだ】【でも、破り捨てた！】【俺は嘘をついた！お前を解放したくなかったわけじゃない。ただ......お前を失いたくなかったんだ】......九条薫は一枚一枚カードを読み、そこに綴られた藤堂沢の心情を読み取っていった。彼女はとっくに気づいていた。しかし、男の気持ちがこうして文字になって届けられると、どんな女だって心を動かされる。ましてや、彼らは様々なことを共に乗り越えてきたのだ！九条薫はカードを読み終えると、しばらく黙って座っていた。彼女は再びプレゼントを見た。ど
離婚は無効だ！もう一度、君を手に入れたい 第511話
小林颯は、穏やかな口調でこれらのことを話した。九条薫は静かに彼女を見ていた。小林颯はまるで別人のように変わり、伊藤夫人と同じくらい、強い女性になった......彼女は小林颯のことが嬉しかった。伊藤夫人の話になり、小林颯は今度一緒に食事をしようと誘ってきた。小林颯が伊藤夫人と会いたがっているのは、本当は、彼女が奥山智と親しい間柄だから。彼がこの世から跡形もなく消え去ってしまうのがたまらなくて、だから誰かが奥山智のことを話してくれるのを聞きたかったのだと、九条薫はよくわかっていた。小林颯のアパートを出た後、九条薫は、込み上げる悲しみを胸に、奥山智が亡くなったこと、そして運命の不条理を本当に恨めしく思った。しかし、彼女は現実を変えることはできない。夕方、彼女はTHEONEのオフィスビルへ行った。年明け後、溜まっていた仕事を片付けていると、あっという間に夜の7時になっていた。窓の外では、街のネオンが輝き始めていた。九条薫が片付けをして帰ろうとした時、デスクの電話が鳴った。彼女は特に何も考えずに電話に出た。「はい、九条です」電話口から、聞き覚えのある声が聞こえてきた。藤堂沢だった！夜の帳が降りる中、藤堂沢の声は優しく響いた。「まだ仕事をしているのか？もう退社時間だろう？」九条薫は携帯を見ながら、「私のことを尾行しているの？このバカ！」と言った。藤堂沢は怒らなかった。彼は優しい声で言った。「ジョンに聞いたまでだ。尾行なんてしていない。薫、そんなに緊張しないでくれ」「緊張」という言葉が、彼に言われると、何だか意味深に聞こえた。九条薫は眉間を揉みながら、低い声で言った。「沢、何か用事があるならはっきり言って。あなたと駆け引きする気力はないわ」九条薫の疲れた声を聞いて、藤堂沢は少し胸が痛んだ。彼は低い声で、「迎えに行こうか？」と尋ねた。九条薫は「結構だ。私の運転手が待っているので」と断った。藤堂沢の声は優しく、そして思いやりに満ちていた。「それじゃあ、先に帰ってくれ。サプライズが待っている」本来なら、九条薫はここで電話を切るべきだった。しかし、彼女はそうしなかった。彼女は何も言わず、ただ静かに受話器を握っていた。電話の向こうの藤堂沢もまた......電話越しに聞こえるのは、互いの静かな
離婚は無効だ！もう一度、君を手に入れたい 第510話
最初から最後まで、彼女は他の男の妻だった。そして最初から最後まで、自分は哀れな傍観者だった。グローブボックスの中の携帯が鳴った。黒木智は無視した。しかし相手は諦めずに何度もかけてきたので、着信音が鳴り続けた......ついに、彼は携帯に手を伸ばし、画面を見た。婚約者からだった。相手の声は穏やかだった。「智、明日、ウェディングドレスのサイズをもう一度直したいんだけど、付き合ってくれない？」黒木智はシートにもたれかかり......彼は無表情だった。彼女が自分のことを好きでいてくれるのは嬉しいが、ただの政略結婚なのに、なぜそこまで真剣になるんだ！それでも、彼は彼女に敬意を払った。彼は嗄れた声で言った。「ああ、いいよ。時間を秘書に伝えてくれ。明日、付き合う」女性は上機嫌で、結婚式の詳細について熱心に話し始めた。黒木智は静かに、そして辛抱強く聞いていた......が、上の空だった。ただの政略結婚なのに！......藤堂沢は小林颯のアパートの前に車を停めた。九条薫がドアを開けると、彼は彼女の方を向き、ハンドルを優しく撫でていた。その姿は、絵になる美しさだった。彼は尋ねた。「今夜は本当に、会わないのか？」九条薫の答えは、ドアを勢いよく閉める音だった。だが、藤堂沢は逆にそれを面白がっていた。男が女を追いかける時、達成感も大切だ。彼女が簡単に自分の誘いに乗ってきたら、面白くない......藤堂沢は普通の男だったので、性的な欲望を抱いていることを否定しなかった。九条薫はそのままアパートの中へ入っていった。小林颯のアパートは一等地にある、78坪もある広い部屋だった。小林颯と奥山智の娘、奥山萌の二人暮らしだった。家政婦はパートタイムで、普段はここに住んでいなかった。小林颯は九条薫にドアを開けてあげた。ドアが開くと、九条薫は小林颯の目が腫れていることに気づいた......彼女がじっと見ていると、小林颯は彼女が気づいたことを察し、「ええ、昨夜、晋に会ったの」と素直に言った。彼女は九条薫を部屋に招き入れ、コーヒーを淹れた。二人はカウンターに座って、しばらく黙っていたが、小林颯が「何もなかったわ」と続けた。九条薫は彼女の目を優しく撫でながら、「じゃあ、どうして泣いてるの？」と尋ねた。小林颯は
