LOGIN男子校で出会ったのは―― 王子みたいに綺麗な“男”だった。 筋肉こそ正義。 そう信じる筋トレ部のヴァルドは、男子校へやって来たアルと出会う。 細い。 柔らかい。 筋肉が足りない。 このままでは不健康だ。 そう思ったヴァルドは、筋トレ動画を送り、食事を気にし、毎日連絡するようになる。 しかし―― 「アル、かわいすぎるだろ……」 声もかわいい。 手も小さい。 いい匂いだ。 だが、アルは男。 絶対に男。 そう思っているのに、ヴァルドの感情はどんどん暴走していく。 一方その頃。 「次こそ完璧にしてやるからな!」 女の子なのに、“女装男子”だと思われているユリアは、なぜか筋トレ部から熱い応援を受けていた。 筋肉と勘違いから始まる青春ラブコメ。
View More私はセラフィア女学院に通っている。
私達は健康促進部に入っている。
体調管理やダイエットを目的とした部活だ。まあ、ほとんどの生徒が入っているし、私もバスケ部と掛け持ちしていた。
ある日、部長達から妙な任務を言い渡された。
男子はどうやって筋トレをしているのか。
どういう女の子が人気なのか。
何を求めているのか。
そういうものを調べてきてほしいらしい。
だから私は、男のふりをして男子校へ潜入することになった。
理由は単純だ。
身長が高いから。
ショートカットだから。
王子っぽいから。
そんな理由である。
ちなみに友達のユリアも選ばれた。
胸がないから。
そして荒っぽいからだと思う。
皆、酷いな。
私は胸がないわけじゃない。
ただ、運動すると邪魔だし恥ずかしいので、できるだけ小さく見せているだけだ。
その成果もあってか、男子校へ潜入しろと言われた。
そんな馬鹿なと思った。
ユリアは気づいていないけど、私は男子校に行ったことがない。
少しだけ緊張していた。
そして先生達に男子校の制服を借りた。
顧問の先生は面白がって貸してくれたらしい。
何を考えているのかわからない。
私は着替えてみた。
「アル、似合う」
「王子様みたい」
「絶対モテる」
「男子校に行くのがもったいない」
皆が好き勝手言っていた。
そんな馬鹿な。
私達は潜入捜査を開始した。
女子校の人気ランキングはわかった。
たぶん、男子達が今まで見た女子の人気ランキングなんだろう。
それだけはわかった。
そして帰ろうとした、その時だった。
「やはり、ここの筋肉をつけるためには、このトレーニングじゃないのか?」
「いや、プロテイン量が足りないだろ」
妙に熱い声が聞こえてきた。
私達がそっと視線を向ける。
そこには――無意味に筋肉をつけまくっている男子達がいた。
筋トレ部だ。
「もっと追い込め」
「いや、休息も重要だ」
「腕だけじゃ駄目だ。全身バランスだ」
「だが筋肉量は正義」
私とユリアは静かに固まった。
「これは……」
「ええ……」
男子達は真剣だった。
しかし、あまりにも鍛えすぎていて何が何だかわからない。
筋肉。
筋肉。
とにかく筋肉。
「何だろう……」
ユリアが遠い目をする。
「ちょっと残念ね」
「うん……」
私も頷いた。
私達とは方向性が違う気がする。
頑張っているのはわかったけど。
その時だった。
一人の男子が真顔で言った。
「やはり筋肉は裏切らない」
「でも、柔らかさは失われるわ」
ユリアがぼそっと呟く。
どうやら男子校と健康促進部では、目指している方向が違うらしい。
その時だった。
筋肉集団の一人がぼそっと言う。
「今年は――あの女子校には負けられない」
一瞬で空気が変わった。
「見せてやる」
「俺達の筋肉理論を!!!」
「やるぞ!!!」
「「「筋肉!!!!!」」」
私達は固まった。
「意味が分からないわ」
「ええ……」
しかも全員本気だった。
「やはり男子校、危険ね」
「思想が濃すぎるわ」
帰ろうとした、その時だった。
いきなり筋トレ部の男子が近づいてきた。
「そこの美少年達、筋トレ部に用か? よかったら筋トレしよう」
(セーフ、男に間違えられた)
(良かった)
私達は同時に思った。
その時、一人の男子が真剣な顔でユリアを見る。
「こんな腕では駄目だ」
「もう少し筋トレをしないと」
「え?」
ユリアが固まる。
「いや、筋肉そこまで要らないから」
しかし男子達は真顔だった。
「顔は綺麗だが筋肉がまだまだだぞ」
「女みたいな顔をしているが、それではモテない」
「そんな馬鹿な」
ユリアが本気で困惑する。
すると一人が静かに頷いた。
「筋肉が足りないからな」
「そこなの!?」
思わずツッコんでしまった。
どうやら男子校には、健康促進部とは別系統の理論が存在しているらしい。
私はおそるおそる言った。
「女子達は、そこまで筋肉を追い求めてないと思うけど」
男子達が静かに止まる。
「やりすぎは……逆にモテないんじゃ」
「引くっていうか」
一瞬で空気が凍った。
「何!?」
「そんなことはない!!!」
筋肉男子達が一斉に立ち上がる。
「筋肉は正義だぞ!」
「筋トレをしなさ過ぎて頭がおかしくなったんじゃないのか!?」
「いや、発想が怖いのよ」
ユリアが真顔で言った。
しかし男子達は止まらない。
「お前ら、今から筋トレを一緒にするぞ!」
「筋肉は裏切らない!」
「まずはベンチだ!」
「スクワットも必要だな!」
私は思わず後ずさった。
どうやら健康促進部とは別方向で危険らしい。
しかも全員本気だった。
「おい、ヴァルド。筋トレのやり方、見せてやれよ」
「え? 俺?」
前へ出てきたのは、なかなかのイケメンだった。
爽やか系。
しかも筋肉理論側にしては妙に整っている。
「……なんで、この人だけ普通にモテそうなのかしら」
ユリアが小さく呟く。
周囲の筋肉男子達とは違う。
妙に爽やかで、空気まで軽かった。
「しかも、ちょっと危険なタイプね」
「ええ……」
私は静かに頷いた。
何だろう。
この人だけは少し違う気がした。
でも、その時の私は知らなかった。
この出会いが、思った以上に長く続くことになるなんて。
どうしよう。 ヴァルド君がメッセージを送ってきた。 しかも動画つきで。 動画のヴァルド君は妙に真剣だった。 あのジャージを着ている。 動画では筋トレをしているヴァルド君が映っていた。 わかりやすく、どうすればいいのか説明されていて、本当に初心者向けだった。 丁寧で優しい。 ヴァルド君の人柄なのかも。 いい人なんだな。 こんなに頑張った動画を送ってくれたんだもの。 これ、やらないといけないよね。 ただ、動画のヴァルド君は無駄に爽やかだった。 何で筋トレ部なんだろう。 やりすぎて頭まで筋肉にならないかしら。 少しだけ心配してしまった。 私はユリアの部屋をノックした。「ユリア、助けてー」「何?」「私、筋トレ部の対応で忙しいんだけど」「どうしたの?」「ユウ、女装かわいくね?」「惜しいけど良い感じだ」 送られてきたメッセージを見て、ユリアが固まった。「……」「これ、どう思う?」「惜しいってどういうことなの?」「私のかわいらしさの最大値を更新しろってこと?」「目をもう少し盛れってこと?」「いや、待って」「輪郭?」「メイク不足?」 ユリアは真剣だった。「何が惜しいのかしら……」 少し考え込む。「わかったわ」「服が少しかわいくなかったのね?」「今度は決めて見せる!」「あんたたち、壊してやる!」 ユリアは拳を握った。「女の子にしか見えないって言わせてやるから!」 何かが間違っていた。 そして。 今回はいけるでしょ、と言いながらユリアが写真を送る。 すると。「惜しい」
俺は、いつものように筋トレ部で筋トレをしていた。 その時だった。 ものすごい美少年が歩いていた。 王子かと思った。 それがアルだった。 そして、その隣にいたのが、かわいい顔をした男――ユウだった。 アルは初めて見る顔だ。 あんなに目立つ美少年なら、見たことがないのがおかしい。 転校生か? 見学か? よくわからない。 ただ――アルは妙に華奢だった。 細い。 柔らかそう。 しかも、何か落ち着いていて、本当に王子みたいだった。「あいつ……別格だろ」「絶対に王子だ」「あれで筋肉があったら……」「惜しいな」「あれで筋肉ついたら完成じゃね?」「いや、今のままだと病気になるだろ」「守ってやらないと駄目なタイプだ」「あ……もしかして、俺たちに助けを求めているんじゃないのか?」 俺たちは察した。 きっと――筋肉が欲しいんだ。 恥ずかしくて言えないだけだろ? わかる。 わかるぞ。 だから。 クリスが話しかけた。「そこの美少年達、筋トレ部に用か? よかったら筋トレしよう」(その誘い方はないだろ)(恥ずかしいからやめろ) 筋トレ部全員が思った。 だが。 俺は、やっぱりアルが気になった。 あまりにも細い。 胸板なんて柔らかそうで。 大丈夫かと思って、俺は触った。 ものすごく柔らかかった。 一瞬、女の子なのか? って思うくらいに。 でも。 男だよな。 王子みたいだけど。 きっと筋肉が足りないだけだ。 あいつ病気になるぞ。 身長はそれなりにある。 で
私はセラフィア女学院に通っている。私達は健康促進部に入っている。 体調管理やダイエットを目的とした部活だ。まあ、ほとんどの生徒が入っているし、私もバスケ部と掛け持ちしていた。ある日、部長達から妙な任務を言い渡された。男子はどうやって筋トレをしているのか。どういう女の子が人気なのか。何を求めているのか。そういうものを調べてきてほしいらしい。だから私は、男のふりをして男子校へ潜入することになった。理由は単純だ。身長が高いから。ショートカットだから。王子っぽいから。そんな理由である。ちなみに友達のユリアも選ばれた。胸がないから。そして荒っぽいからだと思う。皆、酷いな。私は胸がないわけじゃない。ただ、運動すると邪魔だし恥ずかしいので、できるだけ小さく見せているだけだ。その成果もあってか、男子校へ潜入しろと言われた。そんな馬鹿なと思った。ユリアは気づいていないけど、私は男子校に行ったことがない。少しだけ緊張していた。そして先生達に男子校の制服を借りた。顧問の先生は面白がって貸してくれたらしい。何を考えているのかわからない。私は着替えてみた。「アル、似合う」「王子様みたい」「絶対モテる」「男子校に行くのがもったいない」皆が好き勝手言っていた。そんな馬鹿な。私達は潜入捜査を開始した。女子校の人気ランキングはわかった。たぶん、男子達が今まで見た女子の人気ランキングなんだろう。それだけはわかった。そして帰ろうとした、その時だった。「やはり、ここの筋肉をつけるためには、このトレーニングじゃないのか?」「いや、プロテイン量が足りないだろ」