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第884話

Auteur: 桜夏
「私が誰と付き合おうが勝手でしょ。あの朝比奈、新井の彼女だってだけで威張り散らして。こっちは新井本人だって、いつでも言い負かせるってのに」

理恵はそう言いながら、今思い出してもまだ腹が立つ、といった様子で顔を顰めた。

一度目は我慢してやったのに、美月は二度も三度もちょっかいをかけてきた。黙って見過ごしてやれば、こちらを侮っていいとでも思ったのだろうか。

透子は、彼女の手を弱々しく握り返した。その瞳に、再び涙が滲む。

彼女は声を詰まらせた。「ありがとう……理恵……」

理恵はその様子に戸惑い、慌てて言った。「どうしたの、急に。泣かないで、透子」

透子は鼻をすすり、必死に昂る感情を鎮めようとする。

理恵がその涙を拭ってやると、透子は言った。

「あれは……美月の独占欲なんかじゃない。大学の時、私とあいつは、ほとんど会ってなかったもの。

あいつはただ、私とあなたを引き離したかっただけ。高校の時みたいに、私から友達を一人残らず奪うために」

理恵はそれを聞き、愕然として言葉を失った。

透子から高校時代のことは聞いていたが、今、自分にまで関わる話を聞かされ、途端に拳を固く握りしめる。

「はぁ!?あいつ、頭おかしいんじゃないの!?なんでたかだかあんた一人に、そこまで執着するわけ?」理恵は、怒りで声が震えていた。

「友達関係まで壊そうとするなんて、本当に性根が腐ってる!八つ裂きにしてもまだ足りないわ!」

透子は、怒りに燃える彼女を見て、その手を握り返すと、無理に笑みを作って言った。

「もう……終わったことよ。あなたは……私を見捨てなかった……」

幸い、自分にはまだ理恵という親友がいる。彼女だけは、最後まで自分を選んでくれたのだ。

「私があなたを見捨てるわけないじゃない!あの時は、あなたが朝比奈のせいで、私と付き合ってくれなくなるんじゃないかって、本気で怖かったんだから」理恵はそう言って、少し拗ねたように唇を尖らせた。

彼女にとって、利害関係抜きで、心から付き合いたいと思える本当の親友は、透子ただ一人だったのだ。

透子は、この世界にいる誰とも違う。理恵は、この対等な友情を大切にしたいと願っていたし、同時に、その抜きん出た才能を持つ彼女に惹かれてもいた。

二人は手を繋ぎ、透子は身を乗り出して、そっと彼女を抱きしめた。その頃、病室の窓の外では。

橘家
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Commentaires (2)
goodnovel comment avatar
タチコマ
美月の凄まじい透子への執着に何らかの理由があるのかしら?蓮司が原因?とも思ったのですが、施設に居た子供の頃からだと…ほんと、動機が知りたいです。どこぞのキャンプは⁇⁇ですが、此方はスムーズに進むので面白いです!
goodnovel comment avatar
child1028believe
知れば知るほど酷い美月の仕打ち。 何故そんなに透子が憎かったのだろう? 動機が知りたい。 雅人が理恵に特別な感情を抱く伏線が。 雅人→理恵、聡→透子の恋模様。 どうなるんでしょう? 透子は最終的に日記帳を読んだ蓮司の元に戻るんじゃないかなぁ?
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