228.父の告白、愛と裏切り

華side

母の事故死のあと、父と継母である櫻子さんが一年もしないで妊娠した。その事実は、私にとって衝撃であり胸を苦しませた。

もし仮に父と櫻子さんが、母の生前時から既に深い関係で、母の存在を邪魔に想っていたら、いなくなればいいと思っていたら……。そして、それが事実だったら、私は、母の命を奪った櫻子さんや父と長年、一緒に暮らしていたことになる。考えただけで背筋が凍るような思いだった。

「何から話せばいいだろうか……」

父は俯いたまま、膝の前で組んでいる指先の一点をぼんやりと眺めていた。その沈黙は、これから語られる真実の重さを物語っていた。

「まず最初にこれだけは断言する。櫻子と初めて会ったのは華の実の母親・翠（みどり）が事故にあった後だ。そして、私は翠を愛していた。実行犯は私ではない」

先ほどまで虚ろな瞳だった父だが、今は瞳に魂が入りまっすぐと私を見つめている。その表情は真剣そのもので、声も力強い。最愛の父が、ハッキリと「翠を愛していた」と言い、実行犯の可能性を否定してくれたことで、心が少し軽くなった。

「これから話す内容に、華は私に失望をするかもしれない。ただ、こんなことがあった以上、これまでの私の行動の全てを、真実を、話さなくてはいけないと思うんだ。聞いてくれるか？」

父の言葉は、私への配慮に満ちていた。