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27.新たなる障害②

last update Last Updated: 2025-06-27 21:57:34

(まだ婚姻関係にある……? まさか。私は、瑛斗から渡された離婚協議書と離婚届にサインを交わして家を出てきた。それでもう全て終わっているはずなのに……。)

誤解を解いた後に妊娠の報告をして瑛斗との関係を再構築しようと、離婚を告げられた翌日に瑛斗の会社を訪ねた。しかし、瑛斗は地下駐車場で玲と密会しており、玲から私と離婚した後の話を持ちかけられていた。その姿を目の当たりにして、妊娠のことを言えずに家を飛び出したのだった。

「そんな……嘘でしょ?」 震える声で呟いた。

離婚が成立していない理由を色々と考えたが、離婚届に不備があったか、瑛斗が離婚届を提出し忘れていたということくらいしか思いつかなかった。

そして名前のサインしかしていない離婚届に不備がある可能性も低く、完璧主義だった瑛斗が出し忘れるなんてことも考えられなかった。

久保山の声が遠くで聞こえる。

 「瑛斗様がまだ離婚届を提出されていないようでございます。そのため、戸籍上はまだお嬢様が一条瑛斗様の妻となっています。」

(私が今も瑛斗の妻?…私が出ていった後、玲と婚約をして夫婦になったのではないの?)

「…このままでは、瑛斗様の戸籍に入るか無戸籍となってしまいます。」

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  • 離婚翌日、消えた10億円と双子妊娠を告げぬ妻ーエリート御曹司社長の後悔ー   26.新たなる障害①

    白い病室の窓から差し込む午後の光が生まれたばかりの小さな命を優しく包んでいた。私の隣にはかけがえのない二つの宝。帝王切開から数日経ち、体はまだ本調子ではないけれど、この小さな手と気持ちよさそうに眠る顔を見ると、どんな痛みや苦しみも乗り越えられる気がした。「慶(けい)……碧(あおい)……」私は二人の名前を呼んだ。二人の小さな唇が、時折、ちゅぱちゅぱと音を立てるたびに胸の奥が温かさに満たされていく。あくびをしたり、ちょっとした動きでも子どもたちの命を感じて愛おしかった。玲と母に神宮寺家を追われ一人きりでの出産。慶と碧を守りこの子たちと新しい人生を歩む。未婚の母として生きる覚悟は、出産を経験して一層固まった。私の手の中には希望に満ちた未来があると信じていた。この日、執事の久保山に出生届の代理提出を頼んでいた。午後三時を少し過ぎた頃、静かな病室に、突然、携帯電話の着信音が鳴り響いた。画面を見ると久保山の名前が表示されている。「届けが終わったという報告の電話かしら?」電話に出ると、久保山はいつもとは違う少し動揺と焦ったような声で話しかけてきた。「華様……申し訳ございません、大変申し上げにくいことがございます」

  • 離婚翌日、消えた10億円と双子妊娠を告げぬ妻ーエリート御曹司社長の後悔ー   25.新たな命の誕生、静かな産声③

    看護師さんが双子を連れていくと三上先生が私の隣で静かに寄り添ってくれた。「本当におめでとうございます、華さん」先生の顔にも安堵と喜びの表情が浮かんでいる。先生の温かい眼差しに私は心の底から感謝した。「三上先生……本当にありがとうございます。先生がいなかったら、私、きっと…」「いいえ、僕は何も。華さんが強いからです。よく頑張りましたね」言葉に詰まり、それ以上続けることができなかった。そんな私を三上先生は優しく抱きしめて髪を撫でた。「…三上、先生?」「あ、すみません。ずっと華さんの側で妊娠・出産を見てきたものですから、つい感極まってしまって…。」そう言ってすぐさま離れたが、目元には私と同じように光るものがあった。瑛斗に妊娠を言えなかったこと、誰かに命を狙われたこと、家族には瑛斗以外の男性の子だと疑われたこと、そして出産当日に駆け寄ってくれる家族が誰一人いないことが、私以外にこの子たちの誕生を祝福してくれる者がいないと思うようになり沈んでいた。だからこそ、三上先生の涙を見て

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    「お姉ちゃんは自分から出ていくことを決めて『さようなら』って言ったんだから、もう神宮寺家とは関係ないわ」「これで玲は心置きなく瑛斗さんと結婚できるわね。」「もう今は一条家もお父様も皆が私たちの味方だもの。私が神宮寺家と一条家、両家の跡取りを産むわ」私の言葉に母は深く頷いた。華の妊娠は誤算だったが、離婚を切り出して失踪後に発覚したことで瑛斗や両家をうまく誘導することが出来た。これで私が瑛斗の子を産めばより強固なものとなるだろう。「玲が瑛斗さん、いや一条家との縁談が決まるなんて夢のよう。私ね、もう既に玲が瑛斗の隣で一条グループを、そして玲と瑛斗さんの子どもたちが神宮寺グループを継ぐ華やかな未来が思い描けるの。」「お母様、話が早すぎるわ。それに私が瑛斗さんをどんなに愛しているか知ってるでしょう?高校時代からずっと瑛斗さんのことだけを想ってきたの。やっと私の恋が叶ったのよ」「ええ、もちろん分かっているわ。これからは玲が神宮寺家の光となり、一条家との絆をより一層深めるのよ」母は私の手を取り力強く握りしめた。私たちの間に強固な共謀関係が築かれた瞬間だった。私は、ふと華の残していった言葉を思い出した。

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