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294.決算

last update Last Updated: 2025-11-12 21:57:03

瑛斗side

この日、会長に前期末の最終決算報告をしに来たが、予想通り数字について指摘が入ってしまった。

「前期は大幅な赤字だな。特別損失が多いが、これはどういうことだ」

「はい―――この件ですが採算が見込めない事業については、事業規模の縮小や撤退を行うことにしました。そのため資産の一部を売却したのですが、その時の売却損・除却損の計上となっています。金額は大きいですが一時的なもので、来期は廃止分の経費がなくなるため、全体としては黒字になる予定です」

「分かった。ただ、一時的とはいえ事業廃止に伴う赤字は経営の失敗を意味し、世間へのイメージは悪いな。来期は黒字だと考える根拠を数字や情勢など客観的に分かるような資料を一枚追加できるか」

玲の不正を暴き、これ以上の損失を出さないよう行った膿出しは、表面上は大きな傷に見える。

「かしこまりました。詳細な予測資料を追加いたします」

「……廃止事業は全て玲さんが担当していたものだろう?」

会長の声が一瞬沈み、資料から顔を上げて俺の顔を見た。

「はい、仰る通りです。玲が新規事業として立ち上げていた部門でした」

「直接指示を出してなかっ

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    瑛斗side「ああ。このバーの件は私も当事者だから誤りだと分かる。しかし、真実かどうかよりも、大切なのは世間がどう見るかだ。いくら当事者が誤報だと分かっていても、周りが誤報だと思わなかったら、それは捻じ曲げられたものが『真実』として受け止められてしまう」「それは……」会長の言葉は、冷徹でありながらもビジネスの論理だった。「この先、世間がどんな反応をするか分からないが、周囲が納得する方法を選択しなくてはいけない場面もくるかもしれないことを肝に銘じておけ」「それでしたら、この記事は根も葉もない誤報だと言わせてください。何も言わなかったら肯定したことになる。それだけは絶対に嫌です」「では、これを否定したことによって世間からネガティブなイメージはつかないか?お前が一方的に関係を否定して逃げたなど、彩菜さんの立場を傷つけたと受け取られないか。彩菜さんは女性をターゲットとした事業を展開している。そのファンである女性たちがお前にいい印象を持たなければ、不買運動を起こす可能性だってあり得るんだぞ」華に、俺が彩菜との関係を認めたと思われることだけは何としても避けたかったが、会長は、想定出来るあらゆるリスクを指摘してきた。「世間の反応を見た上で今後の方針を考えろ。あと誰が仕掛けたものなのか、もし芦屋なら向こうの意図も深く探る必要がある」

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  • 離婚翌日、消えた10億円と双子妊娠を告げぬ妻ーエリート御曹司社長の後悔ー   352.スキャンダル④

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  • 離婚翌日、消えた10億円と双子妊娠を告げぬ妻ーエリート御曹司社長の後悔ー   350.スキャンダル②

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  • 離婚翌日、消えた10億円と双子妊娠を告げぬ妻ーエリート御曹司社長の後悔ー   349.スキャンダル

    瑛斗side彩菜からチケットを受け取った一週間後。仕事が終わり、秘書にマンションのエントランスで送ってもらい家の中に入ろうとすると、目の前から黒塗りの高級セダンが音もなくエントランスに近付いてきて、わざとらしくハイビームでライトを点滅させてきた。あまりの眩しさに腕で顔を覆い目を細めると、後部座席から芦屋彩菜の整った顔がはっきりと見えた。(芦屋彩菜?何故、彼女がまたここにいるんだ?)エントランスに堂々と停車すると、運転席から体格のいいスーツを着た男が降りてきて俺に近づいてきた。「一条様、初めまして。私、彩菜様の運転手をしている西と申します。彩菜様が一条様にお話があるとのことです。」「話?こんな時間に一体どんな内容だ?」「私は、何も存じ上げていません。彩菜様には車までお連れするようにと言われたものでして。ここでは人目につくので、どうぞ車の中にお入りください」(この西という男と話をしても何も解決しないだろう。それに西の言う通り、これ以上エントランス前に目立つ車を停めていたら周囲の目につく。何より華に知られたくない)内心の苛立ちを抑えながら、警戒を最大限に高め、彩菜が乗っている車の後部座席の扉を開けて中に入った。

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