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78.離婚から4年、瑛斗の満たされない虚無

last update Last Updated: 2025-07-22 21:57:23

離婚届を提出してから二年。玲の変貌は俺の日常を支配し、その冷酷な裏の顔を目の当たりにするにつれて、俺の心には後悔の念が渦巻いていた。

華が一条家を去ってから、俺は玲の言葉を信じて再婚した。しかし、結婚をしたら玲は目的を果たし用済みとでも言うかのように俺に一切の興味を示さず、その視線は常に両親、特に父に向けられていた。父は玲の献身的な振る舞いを高く評価している。俺が華がいなくなったことを隠していたことが露呈して以来、冷たい確執が生じていた。

会社では、玲が副社長として実権を握ろうと父に詰めかけていた。彼女の理不尽な要求と、それに応えられない社員への罵声は日常となり、多くの優秀な人材が会社を去っていった。空に協力を依頼し、水面下で玲の不正を暴くための調査を進めているものの、道のりは険しい。会社は傾きかけ、家でも俺の居場所は失われていた。

夜、広すぎる寝室で一人、天井を見上げることが増えた。隣には玲が眠っているはずなのに、その存在を近くに感じることはない。むしろ、彼女の存在は俺の心をさらに深く虚無へと引きずり込んでいく。そのたびに、ふと華のことを思い出していた。華がそばにいた頃の穏やかで安らぎに満ちた日々……。あの頃の俺はこんなにも孤独ではなかったし、孤独を感じたこともなかった。

「今も元気に暮らしているのなら、子どもたちはもう四歳になるのか……」

俺は窓の外、碧く澄み渡る空を見上げていた。

もし、あの子たちが本当に俺の子どもだったなら。もし、俺が華の言葉にもっと耳を傾けてを信じることができていたら今とは違

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Comments (3)
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LaLa Kyunyao
同じような文章が繰り返されてて、一向に話が進まない。 1チャプターが短いから余計に気になる。
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hayelow488
瑛斗さん、ちょっと大丈夫? 若すぎて経験不足なの? 素人の女一人に傾く会社ってどうよ。 資産調べれば、華の居所分からんの? DNA検査に不正がなかったか再調査した? いろいろ、あり得ない。
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YOKO
坊ちゃん、頼むよ。遅いよ。しっかりしてくれ...︎
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