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第4話

Auteur: 雲居の月
その言葉は鋭利な刃物のように千幸の心臓に突き刺さり、彼女の体を大きく揺らした。

部外者?こんなに長い間、自分は彼にとってただの部外者だったというの?

本当に馬鹿げている。

絵里は和也の言葉を聞いて内心喜んだが、顔には心配そうな表情を浮かべながら言った。「部屋のことは急がないけど、茜の傷がひどいから、和也、病院に連れて行って手当してもらえないかしら?」

和也は何も言わず、すぐに茜を抱き上げ、彼らは外へ出ようとした。

千幸は彼を呼び止め、無表情で言った。「和也、私たちの婚約は破棄しよう」

和也は彼女の言葉を全く真に受けることもなく、ただ駆け引きをしていると思い、振り返りもせずに言った。「もういい、くだらない真似はやめて、家で反省してろ!」

そう言うと、和也は絵里親子を連れて急いで出て行った。

ドアが閉まった瞬間、千幸の全身から力が抜けた。

彼女は油絵を抱きしめ、ゆっくりとしゃがみ込んだ。まるで自分の小さな世界を守るかのように。

こみ上げてくる熱いものが目頭を熱くし、胸を締め付け、息苦しく、目の前を真っ暗にした。

どれくらいそこに座っていたのだろう。ポケットの中のスマホが振動した。

絵里からの友達申請だった。

千幸は承認したが、相手からはメッセージは来なかった。

その時、同僚からのメッセージが届いた。【神崎主任、インスタで『いいね!』が必要な投稿があるんですけど、いいねしてもらえますか?お願いします!】

千幸はメッセージ画面を閉じ、インスタの投稿をスクロールしてその投稿を探していると、絵里が新しく投稿した写真に目が留まった。

それは何枚かの写真で、病院のベッドに座った和也が茜のためにリンゴの皮をむいている様子が写っていた。【彼に出会わせてくれた神様に感謝】というコメント付きで。

千幸が写真を開くと、それはライブフォトで、音声が入ったままで、絵里と和也の会話がはっきりと録音されていた。

絵里は少し心配そうに言った。「和也、神崎先生の方は大丈夫かしら?

荷物をまとめていたみたいだけど、怒って出て行ってしまうんじゃないかしら?」

和也は気にも留めていない様子で、少し見下すような口調で言った。「彼女は孤児だ、どこに行くっていうんだ?せいぜい地方で手術でもしているんだろう、そんな手はもう見飽きた」

千幸はスマホの電源を切り、目を閉じて苦笑した。自分はなんて惨めなんだろう。

かつて彼が自分の前に立ち守ってくれた時の感動は、今となってはブーメランのように自分に突き刺さる。

その刃先は骨まで突き刺し、刺されたところ全てが致命傷となる。

それから一週間、千幸は病院で残業ばかりし、家には一度も帰らなかった。

彼女は本当に忙しかったのだ。以前引き受けていた手術を早く終わらせなければならなかっただけでなく、X市中心部で大規模な火災が発生したのだ。

手術が必要な患者が急増し、外科医全員が休む暇もなく働いていた。

「神崎主任、お疲れ様です!」

千幸はマスクを外し、同僚に会釈して手術着を脱いでオフィスに戻ると、水を飲む暇もなく、絵里が茜を連れてやってきた。

「神崎先生、お願い、私と茜を追い出さないで!」

案内してくれた若い看護師がまだオフィスを出ないうちに、絵里は娘の手を引いて机の前に跪いた。

彼女は化粧をしておらず、顔色もかなり悪く、今にも折れそうな白い花のようにか弱く、見ていると胸が痛くなるほど泣いていた。

若い看護師は驚いた顔で、それ以上見ることもできず、急いでドアを閉めて逃げ出した。

千幸は事務椅子に座ったまま、身動きもせず、冷たく眉をひそめた。「和也がいないのに、何を演じてるの?」

絵里は泣きじゃくりながら、悲しそうな声で言った。「神崎先生、あなたが私を嫌っているのは分かっている。私は和也を奪うつもりなんてない。

私と茜はH国で知り合いもいないから、とりあえず身を寄せる場所を探しているだけだから、すぐに引っ越すわ。今、和也の家から追い出されたら、私たち親子はどうやって生きていけばいいの?」

千幸はうんざりして反論しようとした。「私がいつ――」

言い終わらないうちに、手元の電話が鳴った。美香からだった。
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