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第2話

Auteur: 四海
「誰と電話してた?」

陽菜がなかなか戻ってこないので、博斗はキッチンへ探しに来た。そこで彼は、彼女がスマホを見つめたまま、ぼんやりと立ち尽くしているのを目にした。

彼女はようやく我に返り、静かに答えた。「いえ、何でもないの」

夜が更け、隣から聞こえる博斗の浅い寝息を聞きながら、陽菜は天井を見つめ、眠れぬまま夜を明かした。

翌朝にテーブルに並ぶ洋食を見て、博斗は眉をひそめた。

「俺が洋食を好きじゃないこと、知ってるだろ?どうして今日はこれなんだ?」

彼女は視線を落とし、フォークでステーキを刺して、口に運んで、ゆっくりと噛みながら、淡々と言った。

「冷蔵庫にはこれしか残ってなかったの」

実際には違う。ただ、留学の準備のために、今のうちから現地の食文化に慣れようとしているだけだった。

幸い、彼は深く考えず、スマホをテーブルに置いたまま、時折ちらりと画面を確認していた。誰かからの連絡を待っているかのように。

聞かなくても、あの女だと分かっていた。

突然、スマホが振動した。

彼はすぐに手に取り、画面を覗き込んだ。

どうやら心美からのメッセージらしい。彼は嬉しそうに微笑み、いつもは冷たい口元がわずかにほころんだ。

彼をじっと見つめる陽菜は、静かに鞄から用意していた離婚協議書を取り出した。

契約書にサインしたあの日から、ずっとこの瞬間を準備していた。

今、彼女はようやく解放される。

「博斗、離婚しましょう」

彼女の口調は、まるで天気の話をするかのように、静かで穏やかだった。

しかし、彼は心美とのやり取りに夢中で、彼女の言葉を聞き流したまま、生返事をしただけだった。

「うん」

彼女は驚かなかった。

この五年間、彼はずっとこんな調子だった。疎遠でもなく、親しいわけでもなかった。

そして今、心美が帰国した。

彼は、彼女に向けていた最後の一片の注意すらも取り去ってしまったのだ。

陽菜は書類の最後のページを開くと、ペンを添えて、サインする場所を指さした。

「ここにサインして」

「うん」

彼はスマホを弄りながら、書類を確認することもなく、片手で適当にペンを走らせた。そのもう片方の手は、なおもスマホを操作し続けている。

陽菜は離婚協議書を丁寧に閉じ、冷静に告げた。

「博斗、一ヶ月の離婚クーリングオフ期間が過ぎたら、私は出て行くわ」

「うん」

彼はまたも気のない返事をすると、ナイフとフォークを置き、立ち上がった。

その背中を見送りながら、彼女はついに、堪えきれずに声をかけた。

「博斗、今、私が何を言ったか分かってる?」

彼は足を止め、不思議そうに振り返った。

「福祉施設への寄付の話だろ?さっき君が俺にサインさせた契約書も、そのためのものじゃなかったか?この前、このことはもう言ってたよね、どうしたの?」

彼女は心の中で自嘲気味に笑った。

寄付の契約書なら、先月すでにサインをもらっていた。

彼は結局、彼女の言葉など何も聞いていなかった。

でも、もうどうでもいい。

これで終わりだ。

博斗、これで終わりにしましょう。これから、篠田さんと一緒に幸せになってください。

彼女は微笑み、淡々と答えた。「なんでもないわ」

午後、陽菜は物資を運ぶトラックの後を車で追い、福祉施設に到着した。

作業が終わると、彼女は院長室を訪ね、最後の挨拶をした。

「院長先生、私、留学することにしました」

院長先生はそれを聞いてとても喜んだ。陽菜はもともと美術系の優秀な学生だった。

当時、彼女が留学を諦めたとき、院長先生は長い間惜しく思っていた

「それは本当に良い事よ!」

院長先生は、心から嬉しそうに彼女の手を握りしめた。しかし次の瞬間、院長先生の表情が少し曇った。

「でも、留学するってことは......博斗くんとは遠距離になっちゃうのね。遠距離恋愛は難しいわよ?」

彼女は、遠くで遊んでいる子どもたちを見つめながら、静かに首を振った。

「遠距離じゃありません。私たちは離婚しました」

院長先生は、一瞬驚いたように目を見開いた。

そして深くため息をついた。

「やっぱりね。最初から、あなたたちの結婚は長く続かないと思っていたのよ。もし彼が本当にあなたを愛していたのなら、どうして一度もここに来なかったの?」

そう言いながら、院長先生は優しく彼女を抱きしめて、慰めた。「離婚して正解よ」

陽菜も笑いながら、院長先生の腕の中にそっと身を預けた。

そうだ。離婚して、よかった。

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