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第7話

Author: 小野ナイ
紬音が退院したその日は、ちょうど彼女の誕生日だった。

ダブルでおめでたい日だと、昴真は惜しげもなく大金をはたき、都内で最も豪華なホテルをまるごと貸し切って、紬音の誕生日パーティーを開いた。

その華美な演出に、招待客たちは皆、目を見張り、口々に羨望の声を漏らした。

昴真の旧友たち——例のあの一件以来、紬音が一切好意を持てなくなった面々も、手の込んだプレゼントを贈ってきた。

けれど、紬音の表情は冴えない。彼らが表面だけ取り繕っていることなど、もうとっくに見抜いている。彼女はもう、彼らに対して何の感情も持っていなかった。

彼らもそれに気づくことなく、「病み上がりでまだ本調子じゃないのだろう」と勝手に納得していた。

やがて、ケーキカットと願いごとの時間がやってきた。

昴真が紬音の背後からそっと腕を回し、一緒にナイフを握って微笑む。

「紬音、今日は君の誕生日だ。願い事、ある?」

かつてなら、きっと彼女は「ないよ」と微笑んでいた。彼が愛してくれてさえいれば、それだけで十分だったのだから。

だが今、彼女には切実な願いがあった——彼から離れ、二度と関わらずに生きること。

「その願い、あなたは叶えてくれるの?」

昴真は一瞬きょとんとし、それから柔らかく笑った。「もちろん」

「じゃあ、私……三つ、願いごとがあるの」

「三つ?いいよ、なんでも言って。全部叶える」

紬音はバッグから一枚の真っ白な紙を取り出した。

「一つ目の願い。この紙に、あなたのサインをしてほしいの」

会場が静まり返った。

業界において、「白紙にサイン」など、最も警戒すべき行為だ。

もしも悪意ある者にそれを利用されたら、取り返しのつかない事態を招くのは明らかだった。

慎重派として名を馳せる昴真が、まさかそんなものにサインするはずがない。

そう思った、その瞬間。彼は微笑んだまま、何の躊躇も見せずにサインを書き終えた。

「はい、ほら、できたよ」

紬音はその紙をそっと握りしめた——これがあれば、いつでも離婚届を作成できる。

これで彼とは、法的にも完全に切り離せる。

満足げに微笑む彼女の表情を見て、昴真も安心したように頬を緩めた。

「さて、二つ目の願いは?」

紬音は顔を上げ、会場をゆっくり見渡す。ざわめき、驚き、羨望……様々な視線が交錯する中、ただ一人、遙花だけが嫉妬に満ちた目で彼女を見つめていた。

けれど紬音の視線は、彼女すら超えて、その先——遠い異国の未来を見ていた。

そして、唇を静かに開いた。「二つ目の願い。志田グループの全株式を、私に譲渡して」

場内が、まるで地震のようにどよめいた。

億単位では足りない、千億を超える価値のある株式を、全て——?いくら愛妻家とはいえ——そのすべてを彼女に譲渡するなんて、常識では考えられない。

だが、昴真は微笑みを崩さないまま、弁護士に電話をかけた。

「すぐに、名義を紬音に変えてくれ。一株も残さず、全部だ」

数分後、紬音のスマートフォンに届いた電子契約書。そこには正式な譲渡記録と、法的効力を持つ印影がしっかりと刻まれていた。——これで、彼の全財産が、彼女の手に渡った。

この資産を売却すれば、海外での生活は十代先まで安泰だろう。

昴真は彼女を抱き寄せ、冗談めかして言った。「これで俺は無一文だ。君の下で働くしかないな。捨てないでくれよ?」

紬音は唇を引きつらせながら笑い、答えようとしたその時だった。

「誰か倒れた!」叫び声が上がった。

皆の視線が集まる中、倒れていたのは遙花だった。

昴真の顔色がさっと変わった。反射的に彼は紬音のほうへ早足で駆け寄ろうとしたが、寸前で理性がそれを押しとどめた。

何かを思い出したように足を止め、振り返って紬音を見た。「紬音、ごめん、ちょっと病院まで送ってくる。最後の願いは、メッセージで教えて」

紬音は微笑んだ。

「もういいの。願いはもうないわ」

「え?」

「なんでもない。行ってらっしゃい」

昴真が遙花を抱き上げ、慌てて去っていくその背中を、紬音は穏やかな表情で見送った。

昴真、私の最後の願いは、もうあなたには叶えられない。

だってそれは、「あなたから完全に自由になること」だから。

あと三日。その日が来たら、私はあなたの世界から完全に消えてみせる。
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