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昼は冷徹、夜は溺愛~スピード婚した夫の二つの顔

昼は冷徹、夜は溺愛~スピード婚した夫の二つの顔

作家:  イレブン完了
言語: Japanese
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概要

切ない恋

ドロドロ展開

愛人

ひいき/自己中

スカッと

不倫

後悔

養母・杉山由美(すぎやま ゆみ)の手術代のため、私は望月グループの後継者、望月浩平(もちづき こうへい)と電撃結婚した。 噂では、彼はすごくクールで、女性には一切興味がないらしい。 結婚生活が始まっても、この男はやっぱり私に無関心で、まるで氷みたいに冷たかった。 でも夜になると、彼はまるで別人みたいに、私の首筋に顔をうずめて甘えてきたり、しょうもないことでやきもちを焼いたりする。 「柚、どうして今日は僕のこと、あんまり見てくれなかったの? あの男、誰?なんであいつに笑いかけたんだ?」 昼間は人を寄せつけないほどクールなのに、夜になるとベタベタしてきて、「一緒にお風呂に入ろう」って甘えてくる。 そんな「二重生活」にも、私がだんだん慣れてきたころ、夫のほうから、離婚を切り出された。 これで、私たちの関係は完全に終わりなんだって思ったのに、パーティーで私が誰かに意地悪されたとき、前の日に冷たく「離婚」と言い放ったはずの男が、みんなの前で目を赤くして、私を抱きしめて守ってくれたのだ。 「彼女は俺の妻だ。誰にも俺たちを引き裂かせたりしない!」そう言うと、またいつもの俺様社長に戻った。

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第1話

第1話

「奥様、旦那様は今夜、お戻りになりません」

執事の言葉が終わった途端、後ろから寝室のドアが開けられた。

いつものシダーウッドの香りが、夜の空気と一緒に私を包み込んだ。そして、男は力強い腕で私の腰を抱き寄せ、熱い胸を背中にぴったりと押し当てた。

私の肩に顎がのせられ、甘えるような鼻声で肌にすり寄ってくる。

「柚、会いたかったよ」

一瞬で、私の体がこわばる。でも、振り向かなくても誰なのかはわかっていた。

私の夫、望月浩平(もちづき こうへい)だ。

ううん、もっと正しく言うなら、夜の浩平だ。

昼間の彼は、望月グループの冷徹な社長。私になんて、ちらりとも視線をくれない。

でも夜になると、べったりくっついて甘えてくる。すごく寂しがり屋で、ちょっと危なっかしいところがある。

「なんで今ごろ帰ってきたの?ずっと待ってたんだよ」浩平の声はくぐもっていて、飼い主に捨てられた子犬みたいに鼻声だった。

彼の腕から逃れようとしたけど、もっと強く抱きしめられてしまう。まるで、私の体を自分の中に埋め込もうとするみたいに。

「動かないで。もう少し、このままでいさせて」

浩平は小さな声でお願いした。温かい息が耳にかかって、くすぐったくて首をすくめてしまう。

私はため息をついて、もう抵抗するのをやめた。

これは、養母・杉山由美(すぎやま ゆみ)のとんでもない手術代のためだ。私に断る権利なんてない。

この男と結婚する前から、彼にちょっと変わった癖があることは知っていた。

噂ではクールで真面目な人だが、望月家の人間だけが、この跡継ぎには誰にも言えない秘密があることを知っていた。

私はただの変わり者だと思ってたけど、まさかこんなに……刺激的だなんて。

「柚、君は今日……」浩平は私の髪に顔をうずめて、深く息を吸った。「あの松尾っていう男に、3回も笑いかけたよね。どれも3秒以上も」

心臓がどきりと跳ねた。

松尾っていう人?

今日、会社の前で偶然に会った、大学の先輩の松尾仁(まつお じん)のこと?

どうして浩平が知っているんでしょ?

「そんなことない」私はとっさに否定した。

「ううん、あったよ」

浩平の声のトーンが急に冷たくなった。腰の腕にぎゅっと力がこもって、息が苦しくなる。「しかも、あいつから名刺を渡されて、受け取った」

足元から背筋が凍るような寒気が這い上がってきた。

もしかして、私は監視されてる?

「浩平、聞いて、ちゃんと説明させて……」私が言いかけると、彼は言葉を遮った。

「俺の前で言い訳するな!」目の前の男は急に声を張り上げた。その声には、核心に触れられたような苛立ちと、隠しきれない不安が滲んでいる。

私は、ぽかんとしてしまった。

夜の浩平が、「俺」という一人称を使ったのは初めてだ。

いつも、「僕」を使っていたのに。

夜の浩平はいつも、必死に自分と昼の浩平を区別しようとしていた。昼の浩平は冷酷な人間で、夜の彼だけは私のことを心から愛しているんだって、いつもそう言っていた。

今夜は、一体どうしたんだろう?

彼の体の震えが、微かに伝わってきた。抱きしめられていた腕が、ほんの少しだけ緩んだ気がした。

「大丈夫?」私は、おそるおそる尋ねた。

彼は答えなかった。ただ、悪いことをした子供みたいに、もっと深く顔をうずめるだけ。

しばらくして、ようやくくぐもった声が聞こえた。「ごめん、柚。わざとじゃないんだ」

彼はまた、いつもの優しい浩平に戻っていた。

「ただ……君が他の誰かに取られちゃうのが怖くて」彼は悲しそうに言った。「あの男の、君を見る目が気に入らないんだ」

私の気持ちは、もうぐちゃぐちゃだった。

片方では、監視されてプライバシーなんてない生活に、うんざりしていた。

でももう片方では、こんなに悲しそうな浩平を見ると、どうしても心が揺らいでしまう。

「あの人とは、たまたま会っただけだよ」

私は、なんとか気持ちを落ち着かせて説明した。

「大学の先輩で、今ちょうど仕事を探してるんだって。それで名刺をくれたの」

「ほんと?」浩平は顔を上げた。その綺麗な瞳は、疑いの色でうるんでいる。

「ほんとだよ」私は彼の方に向き直って、まっすぐ目を見て、こくりと頷いた。

浩平はしばらく私を見つめて、それからゆっくりと腕の力を抜いた。

でも、私の手は離さずに、不安そうに手の甲をなでている。

「名刺は?」

私は仕方なく、バッグから名刺を取り出して浩平に渡した。

彼はそれを受け取ると、見ることもなく、いきなりびりびりに破いてゴミ箱に捨てた。

その一連の動きはとてもスムーズで、どこか子供っぽい乱暴さがあった。

それをやり終えると、彼はまた甘えん坊に戻って、私にキスをしようと顔を近づけてくる。

「柚、もうあの人には会わないで。ね?」

口調はお願いするみたいだったけど、その目には、有無を言わせない強い光が宿っていた。

私は黙りこんだ。

この結婚は、もともと取引みたいなものだ。私は、お金と引き換えに自由を差し出したんだから。

なのに今、この男は私の最低限の人付き合いにまで、口を出そうとしている。

ここまで踏み込まれると、すごく不安になる。

なんだか、何かが変わってきている気がした。たとえば……

彼の、私に対する気持ち、とか。

私がなかなか答えないでいると、浩平の眉間にしわが寄った。瞳の奥で、また嵐が吹き荒れようとしている。

「柚、答えて」
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