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第2話

last update Last Updated: 2025-11-17 11:25:43

 森は、昼食までの時間は、観光をして回った。

 どうせ、昼食後に、食べ歩きやら、お土産やらを買えばいいと思っていたからだ。

 ただ歩いているだけでも、このきれいな海は心を洗い流してくれる。

 遊泳は、もうすぐといったところか...

 そういえば、7月までに、就活生を...

 いかん、いかん、今は仕事のことは考えない方がいい。

 潮の香りをかいで、日常のことを考えないようにしよう。

 考えないということは、考えているのと一緒だ。

 ならば、もう、心の流れるままにしておこう。

 森はその辺のベンチに座り、海を眺めることにした。

 ここ数年、ただぼーっとすることなんてなかったよな

 暇さえあれば、スマホを触って時間を潰そうとしている。

 現代人の悪い癖だ。

 そのせいで、会話の密度も薄くなっている気がする。

 近所の人とも碌に挨拶をしなくなったな。

 子供のころは元気に挨拶してたのに...

 駄菓子屋のおばちゃん、元気にしてるかな。

 あそこのたこ焼き屋よく母親に連れて行ってもらったっけ。

 小さいたこ焼き屋だけど、味はおいしかったんだよなあ。

 実家も帰ってないし。

 みんな何してるんだろ。

 近所の人の事なんて気にしたこともなかったな。

 それは、自分だけじゃないはず。

 もっと人と関わりたいなあ

 遠くを見ると、ジャージの太い女が同じように海を眺めていた。

 顔は見たことがあったが、名前までは分からない。

 あの人、何の仕事してる人だろ。

 気になるなあ

 話しかけよっかな

 でも、おっかなそうだしやめておこう

 私っていつから人に興味無くなったんだろう。

 まあ、近所の人の井戸端会議とかも、うざくていやだけど。

 でも、関わらなさすぎるのも良くないよなあ

 森は、ベンチから立ち上がった。

 もうすぐ、昼食の時間だからだ

 豪華なオードブルであった。

 リッチな気分が味わえる。

 いい。

 一つ一つの食材が輝きを放っていた。

 鼻腔を通る、食材本来のにおいを殺さず、うまみが際立っている。

 それが、ヴァイキングで食べられるのだから。

 うまい。うまい。

 永遠に食べられる。

 しかし、何を食べているか、徐々に思い出せなくなっている。

 あれ?こんなもの取ったっけ?

 まあ、いいか。

 おいしいんだから。

 なんでみんな遠慮してるんだろう。

 もっと食べればいいのに

 こんなにおいしいんだから。

 ん?

 何か首についてる

 何だこれ。

 ああ、夢中になって食べていたから気づかなかった。

 眠ってたんだった。

 いつ眠ったんだろう?

 分からない。

 しかし、眠ってしまった。

 目覚めたときには、食事はすでに片付けられており、迷彩柄の服を着た男たちが辺りを囲んでいた。

 入口は締められており、スーツを着た男が、言った。

「これから皆さんには、殺し合いをしてもらいます」

 辺りはどよめき始めた。

 スーツの男はマイクを持ってニヤニヤしている。

 殺し合い?

 何言ってんの?

 ていうか、男のくせに、何偉そうにしゃべってんの?

 こんな言葉がざわめいていた。

「わたくし、厚生労働省・男女機会均等推進委員会の田辺と申します」

 男は慇懃な口調で言った。

「我々が推進した男女雇用機会均等法によって、女性の地位は素晴らしい向上を遂げました。しかし、そのせいか、女性は、あまり男性を尊敬しなくなり、尊厳を奪われてしまいました。わたくしどもとしても、遺憾の意を表明しなければなりません」

 男は、少し間をおいて、女たちの反応を見た。

 大半は困惑している。

 その様子を楽しんでいるようだ。

「そこで、我々は、とある法律を作りました。男女比調整法と我々は呼んでいますが、巷では、魔女狩り法と呼ばれているようです。甚だ侵害ではありますが、以下、魔女狩り法として、説明させていただきます」

 男はスライドを見せた。

「皆さんがいらっしゃる島は、このような形状をしております。それぞれ、エリアを設けさせていただき、この現在いるエリアを、説明後10分以内。禁止エリアにさせていただきます。禁止エリアを出ないと、その付けている首輪が爆発することになりますので注意してください」

 次のスライドを表示した。

「時間制限が、あります。それは、3日間です。それまでに、最後の一人を決めてください。なお、プログラムに関係ない人を殺しても、意味のないことですので、注意してくださいね。あと、家族の方には、言ってますから。思う存分戦ってください。それでは、名前を読んだ人から順に、荷物を渡していきますので」

 迷彩柄の男たちにより、緑色のバッグを塊が運ばれてきた。

「中身は、三日分の食料と地図。そして、武器が入ってます。何が入っているかは、受け取ってからのお楽しみ」

 すると、女たちは騒ぎ始めた

 何言ってるか全然分かんないんですけどお!!

 とりあえず、ここから出してよ!!

 何これドッキリ?

 ありえないんですけど。

 そろそろ、観光行きたい!!

 しかし、一部の者は、パニックになっている。

 すると、スーツの男は、右手を挙げた。

 その合図を見た迷彩柄の男は機関銃を天井に向けて撃った。

 きゃあああああ

 女たちは騒ぎ始める。

「静粛にしてください。今から名前を読んでいきますから」

 男は次々と名前を読んだ。

 名前を呼ばれたものは、次々と外へ出た。

 森も名前を呼ばれて外に出る。

 緑のバッグを受け取り、とりあえず、部屋に戻ることにした。

 とりあえず、そうする。

 私物がいるからだ。

 部屋に入ると、テレビに、ニュースが映っていた。

「魔女狩りバトルロイヤル。今回は木更津島で行われるようです。絶景の海で人気のこの地でどんな激しいバトルが行われるのでしょうか!!」

 リポーターは元気な口調で言っている。

 残念ながら、携帯は繋がらない。

 一部使えるアプリはあるが、助けを外に求めることはできないようになっている。

 島のいたるところに、防犯カメラがついているので、殺人以外の無茶は基本出来ないようになっている。

 町の人に助けを求めても、処罰される制度があるので、それはできない。

 すると、厚労省からメールが送られてきた。

 参加者のリストと現在位置が分かるものである。

 後数分でホテル一帯は禁止エリアになる。

 必要なものをもって、外に出た。

 すると、きゃあああという声が、バルコニーから聞こえてきた。

 由紀奈は甲高い悲鳴を上げた。

 そこには、レンチを持った女が、部屋を訪ねてきたからだ。

 名前も良く知らないが、女は由紀奈に敵意をむき出しにしていた。

「こんな狂った企画、タレントの私に、振ってこないでよ!!マネージャー!!」

 電話は使えない。

 襲ってきている女は、体に脂ののった肉が詰まっている。

 由紀奈は、身軽にレンチを躱し、私物とバッグを持って部屋を出た。

 女は鬼の形相で、由紀奈を追う。

 ホテルを出、走っていると、樹の道があった。

 薄暗いその道を入っていく。

 辺りはすっかり暗くなっていた。

 夜の18時くらいか?

 禁止エリアの制限時間しか表示されていない。

 スマホのどの設定をいじっても同じだ。

 樹の道を出ると、舗装された道であった。

 ここは、県営緑地のようだ。

 地図で確認するとそうなっている。

 何メートルか向こうから人の影が迫っている。

 地域住民ではないだろう。

 そんな雰囲気をしていた。

 彼女はジーパンにブーツと言った格好だ。

 足が痛い。

 そして、彼女は目立っていた。

 目立っているのは他にもいるが、別の意味で目立っていたのだ。

 西明由紀奈

 ファッション雑誌camcamの専属モデル。タレントである。

 ティーンエイジャーに人気があり、演技の腕も買われ、少女漫画原作のドラマにも出演している。

 テレビのバラエティでは天然キャラを演じているが、周りからは心配されている。

 つい先日、イケメン俳優との熱愛報道が出た。

 彼女は、いつも通りの対応をしていると、近隣住民から、冷たい目で見られるようになったのだ。

 彼女は、表裏のない性格で、ファン対応にも定評がある。

 それでも、仲よくしてくれている人もいた。

 それが比留田であった。

 西明は、比留田を探していた。

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