Masuk1
早苗は、マウントポジションの下から、包丁を奪い、晴美の脇腹に、包丁を突き刺した。
「ぎゃああああああ!!」
力が抜けたすきに、マウントから脱出し、晴美を押し倒した。
「おらあああああああ!!!」
早苗は獣のような声をあげて、早苗を何度も突き刺した。
血みどろになる中で、晴美は激痛に悶えていた。
さっきのもみ合いで、早苗は疲れ果てており、致命傷を与えることができなかった。それ以上に、晴美の生への執着が、なかなかこと切れさせないのかもしれない。
「ゴキブリ婆!!さっさと死ね!」
晴美は声をあげることはできなかった。
幼いころより、ずっと結果を出すことだけを教えられてきた。
結果さえ出せば、母親や教師に褒められた。
結果を出さなければ、その時どんな状況であろうと、徹底的に叱られた。
晴美は母親に褒められる為に猛勉強をした。
大阪の下町で生まれ育ったが、母親は少ない収入で娘をいい学校に通わせた。
そのため、我慢を強いられることが多かったのだ。
いい学校に行けば、いい就職先が見つかるから。そこで出世すれば、幸せが見つけられるのよ。
母親は何度も娘に言い聞かせた。
そして、進学校に入り、好成績を収め、不動産会社に就職した。
しかし、そこで待っていたのは、きもい上司によるパワハラと男社会の身勝手な、力関係だった。
それでも、収入のためを思い何とか耐えしのぐが、出世したのは、中途採用で、同じ年に入ってきた夫であった。
中久喜晴美
旧姓村田晴美は、就職と同時に上京し、そこで出会った、中久喜大輔と結婚し、二人の子宝に恵まれる。
夫の役職が上がり、高所得になったことから、高級住宅街に家を持つことができるようになった。
狭い部屋で仲良く過ごしていたころにはあった会話も、部屋を各自で持つようになってからなくなっていったのだ。
そして、その結果互いに不倫するようになったのだ。
2
空き家には、一つの死体が倒れている。
中久喜晴美であった。
全身26か所の刺し傷。出血多量により死亡。
42歳であった。
疲労困憊の状態で、早苗は部屋を出た。
同じところに何分もいると、狙われやすくなるからだ。
胸をゆさゆさと揺らしながら歩いている。
人を一人殺して思った。
何の為に生きてるんだろう。
一体、私は何から命を守ろうとしてたんだろう。
この見てくれは全部整形で作ったものだ。
中身は全部空っぽ。
あの中久喜と言う女には、守るべきものがあった。
不倫したとはいえ、彼女は、子供たちの精神的支柱なのだ。
私はそれを奪った。
私の体を切り裂いたところで出てくるのは、何もない。
空っぽの私だ。
そう思っていると前から、人影が近づいてきた。
こいつは、知ってる。
岡野彩加だ...
3
智子と亜美は、愛理を探すために、街を歩いていた。
通知が一件
中久喜晴美が死亡する。
二人は、中久喜晴美を線で消した。
すると、空き家の方から、叫び声が聞こえたが、それを無視し、先へ進むことにした。
お土産道から、人の気がしたので、そのまま進んでいくと、路地裏で隠れている、陶愛理がいた。
「あいりちゃん....」
智子が声を掛けた。
あいりちゃんは、陶愛理のテレビでの名称である。
「ひっひ。こ、殺さないで....」
恐怖のあまり、地声で話していた。
普段は、ゆったりとした声で話しており、アンチからは、「キャラづくりに必死で草」と言われている。
一昔前から、何とか星から来たと言ったり、甲高い声で話したりと、生存戦略の為に、キャラを作るタレントがおり、それらのタレントは一発屋と言われるが、あいりちゃんは、その中でも息が長い。
「私たち、フォークと扇子なのよ....あなたは?」
亜美は弱点を開示した。
「こ、これ....」
「サブマシンガン....」
武器に詳しい智子が言った。
「銃!?本物....」
「あ、あの、あいりは、人なんて殺す気なくて....愛理を見つけた人に殺してもらおうかと....」
智子は、テレビのキャラ的にとっつきにくいかと思いきや、一般人と同じ歓声があって少しほっとしている。しかし、弱点をあえて開示した亜美は、愛理を疑いの目で見ていた。
ここで、距離を縮めるのは危険と判断しているようだ。
しかし、違う脅威が3人の体を襲った。
「いいこと、聞いたわ....ここで死になさい!!」
「やめなさい!!ここで殺し合っても、無駄な血を流すだけだわ!!」
亜美は叫ぶが
「黙れ!!ここで大人しく死になさい!!」
中年の女が、リボルバー式の銃を構えている。
女の目は血走っていた。
プルプルと震えている。
照準が、なかなか定まらないようだ...
すると、路地裏から、愛理が顔を出した。
「うおおおおおおお!!!!」
中年の女に向かって、銃を撃った。
何連発も中年女の体に被弾した。
女は、体にいくつも穴をあけた。
出鱈目で撃ったわけではなさそうだ。
「愛理ちゃん....」
「あ、あ、、、あ、、、、」
声にならない声をあげている。
「今のは....」
言葉にならない言葉を二人あげているが、最初に言葉にしたのは、亜美だった。
「今のは、やらなければやられていたわ...」
照準が定まってなかったとはいえ、それはいつしか、時間の問題だろう。
しかし、愛理が危険なことには変わりない。
こちらはやる意思がなくとも、愛理がやる気を出せば、いつでも殺せるのだ。
「初対面で、言うことのなにもかもが怪しく感じるかもしれないけど、私たちは殺す気なんてないのよ。こんな狂ったゲームさっさと降りましょうよ」
「でも、どうやって?」
「それには、みんなの協力が必要なの....でも...」
「でも?」
「多少は犠牲が出るかもしれない....私だって怖いわよ...でも、やるしかないのよ...とりあえず、この首輪を取る方法からみんなで考えましょうよ...」
「そうね...」
無理やり取ろうとすれば、反逆行為とみなされ、首輪が爆発するようになっている。
そろそろ、テッペンになろうとしていた。
そうなると、禁止エリアが増えてしまうのであった。
「同じところにいたら、始まらないから移動しましょう....」
愛梨と距離を取りながら歩くことになった。
3
岡野彩加
元・AV女優で、現在は、アパレルブランドの社長をしている。
ティーンに人気があり、ファッションショーのランウェイを歩いたり、台湾のプロ野球の始球式に出たり、ボートレースのPRでウェディングドレスを着ていたりしていた。
また、別の姿でも知られ、アイドル時代には、「問題児」として有名であった。
男のアイドルグループに手を出していた。
人気が低迷したことを期に、AVに転身し、30歳になった今、惜しまれて引退する。
しかし、男性アイドルグループ好きは変わらず、「大人しくできへんか?」と言われている。
また、メディアでの露出が積極的なことから、AV女優が、テレビに映るな!!ファッションショーを歩くな!!と言われている。
「私はオファーの北仕事に真摯に取り組むだけです」とのコメントを出すが、反感を買われており、行き過ぎは発言には、法的措置を取ると言っているにもかかわらず、その熱は冷えることはなかった。
身長153cm
元々Fカップあったのを、Hカップに豊胸したうえ、顔面はフルカスタムであった。
本人は整形を否定している。
彼女の武器はボウガンであった。
彩加の顔が変わった。
包丁に血がついていたからだ。
しかし、向かい合っている女が、浅野早苗であることを確認すると、ボウガンの引き金に指を掛けた。
「あなた、一人殺したの?」
「ええ」
「私もね。何人か殺したわ。全く、子を持つ親って大変そうね。まあ、私には関係ないけど」
「なんのこと?」
「あら、分かっているくせに、とぼけくさって」
「......」
「あなたも、あの街じゃあ、生きづらかったでしょ?ねえ、これ知ってる?」
「何?」
「あなたの旦那さん...さっき、ニュースで見たけど、.国家に反逆して殺されたんですって...」
「え!?」
早苗に動揺の色が顔に浮かんだ。
そのすきを逃さず、彩加は、引き金を引いた。
早苗に向かって矢は一直線にとんだ。
体を横に向けて、躱したが、反応が一歩遅れた。
一秒に満たない一瞬。
コンマ何秒遅れてしまったのだ。
輝幸が、殺された...
私をかばおうとして....
相手と向き合っている最中に別のことを考えてしまったのだ。
胴に当たることはなかったが、肩に当たり、そこから鮮血が噴き出した。
彩加は笑っていた。
1 ヘリは、昼の暖かな日光を受けながら、優勝者を迎えに来た。 軍服の男が、疲労困憊で倒れている、智美を拾い上げ、ヘリに乗せた。 その中で応急処置を行い病院まで連れていかれる。 優勝者は、一生分の生活保障と当分のバトル免除が約束される。 ただし、現在住んでいると力は完全に離れたところで暮らさなければならない。 その理由についてはほとんど明かされていないが、考えられるところでは、優勝者と言うのは、遺族から怨まれる可能性が高いのだ。 バトル参加者以外が、殺人を行うと殺人罪が適用されるが、それでも死んだ者のせめてもの供養としてそのようなことを行う遺族が一定数いるのだ。 自分が逆の立場であれば、そのようなことをする者の気持ちもわかろうというものだ。 バトルの内容については外部に一切公表されないため、優勝者は遺族の格好の的となってしまうのだ。 例のごとく、遺族たちは、森智子を誹謗中傷していった。 その中に、松岡亜美の婚約者もいたのだった。 その声は、テレビを通じて、智子に伝えられた。 比留田の家族も同様であった。「人殺し!!絶対に許しません!!」「ママを返せ!!」 比留田の子供は泣き叫び、松岡の婚約者は、わめいていた。 何も言い返す気はなかった。 病院のベットからなかなか動けない。 肉体の方は、手の甲が、ケガをしていて、その他はケガをしていないが、とにかく動けないのだ。 テレビは相変わらず、テレビの様子を映し出していた。「由紀奈の仇を討ってやる!!お前の居場所を必ず見つけてやるからな!!」 自分が殺してない者まで、自分が殺されていることにされている。 すると、病室に一人の女が訪ねてきた。「失礼します。」 智子は何とか、ベットから起き上がろうとしたが「そのままで大丈夫ですよ」 それを制止、女は言った。「初めまして。河北千春といいます」 髪の長い、背の高い女であった。 目元がはっきりしており、鼻筋も通った女だ。「私も、バトル経験者なんですよ...」「そうだったんですか...」「2年前、女子大に通っていたんですが、そこで突然、バトルが始められてしまったんです。その時来てなかった人とは連絡がつかないので、どうなったのかは分からないんですが...」 彼女たちは何とか、大学から逃げようとしたが、反逆行為とみなされ、軍服の
1 真奈美の脚からどくどくと血が流れだしていた。 そして、右ひざを着き、左ひざを立てた。 殺す。 そう思う。 こんなところで死んでたまるか 私はまだまだ殺したりないのだ。 寂しい孤独な老人どもを... 東京では稼ぎすぎた。 どこか違う土地にでも移らなければ...2 亜美は、怯んでいる真奈美をショットガンで撃った。 胴を狙った。 それが、角度的な問題で、心臓には当たらず、肩をかすめただけであった。 真奈美も負けじと、銃を乱射してくる。 今度は、体を低くして撃っていた。 視界が、狭まっている。 この女を殺す。この一点にのみ集中する。 理由は、あの目が気に食わないからだ。 直感で、思った。 普段なら何とも思わないが、ああいう眼つきの女は、ぶちのめすに越したことはない。 努力すれば何でも手に入ると思っているのだろう。 そんなわけはないだろう。 生まれ持っての格差は誰にでもあるのだ。 努力するにも才能はいる。 劣った容姿の持ち主は、整形を頑張ったり、ダイエットしたりするのだ。 しかし、持っている者はその間、どんどんと良い地位に就くだけだ。 それがどれほどみじめなことかお前には分かるか 分からんだろう。 お前には持たざる者の気持ちなど だから殺す。 殺さなければならない。 あの世で持たざる者の気持ちでも分かってあげるんだな。 死ね。3 亜美は思う。 努力してないものが、なぜ、いい位置に着こうとするのか 努力していないのだから、いい位置に行けないのは当たり前だろう。 お前は、どうなんだ。 寂しい老人からただただ金を巻き上げているだけだろう。 そんなのは努力とは言わないんだ。 殺人だ。 鬼畜な女!! その思いが引き金を引く力を強くした。 腕が重い。 腱鞘炎を思い出すな。 受験生のころだっけ。 たしか、小学校の頃か あの頃は鉛筆だったから、手の側面の紙がつくところが、鉛筆の粉で黒くなってるんだっけ。 お母さんには、怒鳴られたりはしなかったけど、勉強すれば幸せが舞ってるって言われたな。 他の子より要領がいいなら、今の力で満足してはいけないと。 でも、私は、それで他の人を助けようとは思わない。 だって、私より頑張ってない人を何で助けないといけないの? そんなの不公平じゃん。 ずる
1 立木は、智子たちに忠告した後、禁止エリアから外れるために歩いていた。 すでに、5人を動けなくしていた。 長年ヒールとして戦ってきたからか。 そう思う。 立木には殺意はない。 ただ、妄言に取りつかれた女たちが、次々と襲ってきたのだった。 それを、立木は防いでいただけであった。 斧や服は、返り血で染まっていた。 筋肉の周りに脂肪が囲まれた肉体を、重そうに引きずりながら市街地を歩いていた。 腕が重い。 気配がして後ろを振り返ると、目をぎらつかせながら、銃を構えている女がいた。 松岡亜美であった。「あんた、さっきの....」 立木は絶句している。間を置かずに、松岡は、ショットガンを撃った。 それを、斧で、防いだ。 すぐさま弾を込め、2発目を撃った。 弾は、立木の右肩をかすめた。 立木は、斧を左手に持ちかえる。「正気じゃないね....あんた....」 遠くから見ても、松岡の目は血走っていることが分かる。極度の興奮状態にあった。 先ほどは、冷静に見えていた。 銃の持つ魔力に憑りつかれてしまったのだ。 立木はそう思う。 恐らく、一人は始末している。 この子を、人殺しにしてはいけない。 しかし、自分の身も守らなければならない。 立木は松岡に迫った。 松岡は、3発目を撃つ。 立木は、松岡に向かって突進し、そのまま体当たりをした。「一回、気を失いな!!」 頭に向かって、至近距離から、斧を振った。 しかし、当てない。 一時的にショックを与えるだけであった。 人は、思いもよらない方法で死ぬこともあれば、どれだけの重傷を与えても、動ける場合もある。 立木は、威力のない攻撃で、最大のダメージを与えることに長けていた。 亜美は、気を失った。2 亜美は、瀕死の愛理を置いていくことを決意した。 だが、考えが変わったのか、銃を持つ、亜美は何も言わずに、愛理の脳天を撃った。「何するの!!」 智美は叫ぶが、亜美は何事もなかったかのように、先へ進もうとする。 智美は、腕を伸ばして制止しようとする手を止めて、その場に立ち止まった。 ここで、動くのを本能が止めたのだ。 そして、あることに気づく、自分は、武器を持っていない。 いや、サブマシンガンを拾えば... しかし、拾った瞬間に振り替える危険性がある。 亜美は、
1 浅野早苗を始末した後、女は、空を見上げた。 新しい武器か? そう思う。 落下傘のごとき、数個のカバンが空から降っている。 女は胸を揺らしながら、それに向かって走った。 近くで落ちたようだ。 すると、向こうからも、人の影が迫っているのが見えた。 市街地の信号の前に落ちた。 車通りの少ない道のようだ。 自分の目の前にいるのは、鼻筋の通った、長身の女だった。 上半身は、高飛車だったが、靴は、新しく、スニーカーになっていた。 この女、テレビで見たことある。 これが、互いの感想であった。 何かに惹かれたように、落ちたカバンを追ってここまで来たのだ。 中身が何であろうと、この女には取られるわけにはいくまい。 そう思った。 鼻筋の通った、高飛車の女が言った。「あなた、たしか...ユーチューバーだったわよね...」 口の端が吊り上がった。 蛇のような眼で、向こうの女をにらんでいる。「気づかれちゃったかー人気者は辛いねえ」 明るい口調で言った。状況にはにつかわない、とんまな声であった。「あなたの武器それ?」「そうよ....」「その銃じゃ心許ないわね」 女は優しくさとすように言っている。 この女と話していると、思考がほだされるような気がする。「そうね...」「じゃあ、もっと強い武器が必要ね...」「ええ」 二人は会話をしながら、距離を詰めていく。 もうすぐ間合いである。「遊びましょうか...」 そう言った後、高飛車の女が、横に飛んだ。 リボルバー式の拳銃が、火を噴いたからだ。 カバンを囲いながら、二人は、相対している。 カバンが境界線を作っているのだ。 カバンを拾おうとして動けば、そこを攻撃されてしまう。しかし、先に拾われてしまい、それが強力な武器であった場合、一気に逆転されてしまうのだ。空気が張り詰めていた。それを何とかしようという風にユーチューバー女は言った。「あなたの武器は何?」「丸腰よ...」「嘘ばっかり」「ホントだってば」「私の武器、トイレットペーパーだったの...」「それは、ウケるね...」 口では、そう言っているが、一瞬情にほだされそうになる。 殺すべきと分かっているのに、雑念が入り、いざというときに、引き金が引けないという恐怖が、ユーチューバー女の体をすり抜けた。「私、ゆ
1「死ね!糞女!」 そう叫びながら、彩加は、ボウガンを連射した。 早苗はそれを躱していく。「そろそろ、鼻崩れてきたんじゃないの?」 早苗は、言葉の呪をかけていく。 ひるんだすきに、右手の包丁に手を集中させて、左手で鼻を殴った。「ふぎゃ!!」 ぼたぼたと血を流した。 早苗は、彩加に、発射させることと、自分の包丁と、鼻を殴ることを集中させた。 すべてに集中することなど不可能なので、どこかは、注意が散漫になる。 早苗の持つ包丁は、生き血をすするいわくつきのダガーナイフへと変貌していた。 さらに、伸びるように包丁を顔に向けて放った。 耳の近くでぶんと音がした。 彩加は、早苗から距離を取った。「よくもやったわね...」 彩加の声はくぐもったようになっていた。 鼻が簡単に折れてしまったのだ。「整形なんてするからよ...」「あんたの鼻も同じようにしてやるわよ....」「やってごらんなさい....」 彩加は、ボウガンを道に向かって発射した。 早苗の胴に当たる前に、体をねじり、屋は肩口をかすめた。 それと同時に、彩加のデカい乳房を、包丁で切り裂いたのだった。 見た目とは裏腹に、血はそれほど赤くはない。 ピンク色の血であった。 脂肪注入により、豊胸したからであった。 彩加は、AV撮影で脇をNGにしていた。「全然血が出てないじゃない!!」「ぎゃあああああ!!熱い!!熱い!!」 彩加は、胸を抑えてうずくまっている。そこを、早苗がけり倒した。 早苗は、彩加からボウガンを奪い、脳天に向けて発射した。 彩加は、そのまま動かなくなった。 すると、黒く小さな物体が、弧を描いて、早苗の足元に落ちた。 ころん、という音がした。 松ぼっくりのように見えた。 しかし、松ぼっくりではこんな音はしない。 直感で逃げなきゃ!!そう思ったが、遅かった。 その松ぼっくりは、中身が膨張し、ボン、という音を立てた。 早苗は、その場に倒れこんだ。 うつぶせの状態から、起き上がろうとしたが、足に力が入らなかった。 足元を見ると、足がなかったのだ。 血がどくどくと流れていた。「ぎゃあああああああ!!!」2「早苗。俺と結婚してくれ!俺にはお前が必要や!!」 小田切輝幸に突然そう言われた。 酔った男がなんか言ってるわ。と思いいつも通りあ
1 早苗は、マウントポジションの下から、包丁を奪い、晴美の脇腹に、包丁を突き刺した。「ぎゃああああああ!!」 力が抜けたすきに、マウントから脱出し、晴美を押し倒した。「おらあああああああ!!!」 早苗は獣のような声をあげて、早苗を何度も突き刺した。 血みどろになる中で、晴美は激痛に悶えていた。 さっきのもみ合いで、早苗は疲れ果てており、致命傷を与えることができなかった。それ以上に、晴美の生への執着が、なかなかこと切れさせないのかもしれない。「ゴキブリ婆!!さっさと死ね!」 晴美は声をあげることはできなかった。 幼いころより、ずっと結果を出すことだけを教えられてきた。 結果さえ出せば、母親や教師に褒められた。 結果を出さなければ、その時どんな状況であろうと、徹底的に叱られた。 晴美は母親に褒められる為に猛勉強をした。 大阪の下町で生まれ育ったが、母親は少ない収入で娘をいい学校に通わせた。 そのため、我慢を強いられることが多かったのだ。 いい学校に行けば、いい就職先が見つかるから。そこで出世すれば、幸せが見つけられるのよ。 母親は何度も娘に言い聞かせた。 そして、進学校に入り、好成績を収め、不動産会社に就職した。 しかし、そこで待っていたのは、きもい上司によるパワハラと男社会の身勝手な、力関係だった。 それでも、収入のためを思い何とか耐えしのぐが、出世したのは、中途採用で、同じ年に入ってきた夫であった。 中久喜晴美 旧姓村田晴美は、就職と同時に上京し、そこで出会った、中久喜大輔と結婚し、二人の子宝に恵まれる。 夫の役職が上がり、高所得になったことから、高級住宅街に家を持つことができるようになった。 狭い部屋で仲良く過ごしていたころにはあった会話も、部屋を各自で持つようになってからなくなっていったのだ。 そして、その結果互いに不倫するようになったのだ。2 空き家には、一つの死体が倒れている。 中久喜晴美であった。 全身26か所の刺し傷。出血多量により死亡。 42歳であった。 疲労困憊の状態で、早苗は部屋を出た。 同じところに何分もいると、狙われやすくなるからだ。 胸をゆさゆさと揺らしながら歩いている。 人を一人殺して思った。 何の為に生きてるんだろう。 一体、私は何から命を守ろうとしてたんだろう。