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第3話

last update Last Updated: 2025-11-17 11:26:41

 比留田美和子

 体育教師。28歳。既婚。

 3歳になる娘がいる。

 周りの人間から慕われており、非常に人気がある。

 由紀奈の3歳年上であり、芸能人である由紀奈を一人の友人として扱っているが、そこに由紀奈はあつかましさを感じなかった。

 家の周辺に、週刊誌の張り込みがあった際は、近所の人は不快に思いながらも誰も何も言わなかったが、美和子は、彼女の友人を名乗り、週刊誌を追い払ったのだ。

 しかし、家の周辺以外で、それが起こったときは、自分事のように悲しんでくれた。

「ごめんさないね。肝心な時に何もできなくて...」

「いやいや、比留田先生が謝ることじゃないですよ!!」

 はたから見ても、彼女たちは友人同士に見えた。

 それを、近所の人は、不快には思わなかった。

「美和子先生は、やさしいからね」

「聖職者ですもの」

 そう言っているのを何度か聞いた。

 ヴァイキングでも、一緒のテーブルで食事をしていた。

「せっかくの、プライベートなのに、私と一緒でいいの?」

「いまさら何言ってるんですかー!先生と一緒が良いに決まってるじゃないですか!!」

 そして、バトルの説明を受けている時も、彼女は冷静であった。

 きっと、由紀奈を落ち着かせるためだろう。

 そう思っていた。

 名前は、美和子が先に呼ばれた。

「じゃあね」

 それだけを言っていった。

「あとで、緑地公園で!!」

 由紀奈はそう叫んだ。

 美和子は振り返らずに、右手を振った。

 それにしても、人が多い。

 あのとき、場所を叫んだにしても、何で自分ばっかり襲ってくるのだろうか。

 由紀奈は知らなかった。

 バトルロイヤルの鉄則は、強い者を弱い者複数人が、同時に狙うということを。

 残り人数は、36名であった。

 互いに殺し合わなければ、全滅はするが、3日は確実に生き残れるのだ。

 それなのに、なぜ、殺そうとするのか。

 それより、島を脱出する方法を考える方が建設的じゃないか?

 公園は、庭園や、池、樹林、遊具広場などがあり、広い道に出れば、その分人が増え、狭い道に入ると、人は少なくなるが、見つかった瞬間に逃げ道がなくなるのがネックだった。

 由紀奈の支給武器は、ナイフであった。

 包丁や、肉を切るためのナイフではなく、いかにも、何人もの生き血を吸い尽くすようなナイフであった。

 これで....

 虫もろくに殺したことのない自分が、そんなこともできるはずもない。

 参加者の中にも、自分と同じような人もいるであろう。

 これは、もう助けを待つしかなかった。

 人を殺す気はないが、ナイフはすぐ取り出せるようにしておこう。

 ジャージを着た太い女であった。

 銃声を聞いて、樹林までやってきたのだ。

 人が倒れている...

 女はその顔を見た。

 西明由紀奈...

 彼女の顔は見たことがあった。

 ティーン向け雑誌には、縁のない女であったが、テレビやSNSで見たことがある。

 近所に住んでいたのか....

 しかし、死に顔は、安堵したようになっていた。

 信じていたものに殺されたのか?

 女はそう思った。

 胸に一発。

 心臓を撃たれたのか。

「かわいそうに...」

 女はそうつぶやいた。

 香水のにおいが残っている。

 まだ、近くに、その殺した女がいる....

 女は、斧を持ちながらそう思った。

 周囲を見渡しても、人はいない...

 どこかに隠れているかもしれないので、うかつに動くことはできない。

 ざざ

 ざざ

 ざざ

 自分と同じように銃声を聞いた人々が、周囲に集まってきた。

「立木さん....あなたがやったの?」

 立木と呼ばれた太い女は、3人の女に言った。

「いや、あたいじゃねえ。あたいもさっき来たところだ。香水の残り香がある」

 3人の女は、きょとんとしていた。

 3人とも、同時に行動しているようだ。

 一人で行動している立木を不審に思っているのだろう。

 すると、4人の前方から一人の女が現れた。

 比留田美和子であった。

「みなさん....銃声が....ああ、由紀奈ちゃん...あああ!」

 由紀奈の胸にしみわたっている鮮血を見てショックを受けているようだった。

「先生!まだ、近くに銃を持った人がいるかもしれませんよ」

 女の一人がそれを言う。

「みなさん。そんな物騒なものをもってどうする気なんですか?まさか、あの役人の言うことを...」

「いやいやそんなまさか...私は、やる気はないんですが、自己防衛の為に...」

「そうよ。そうよ」

「人を殺すなんてそんな、野蛮ではありませんわ!!」

 口々にそういう。

「そうですか。ならよかった」

 美和子は、銃を取り出し、女たちを撃った。

 スタック式の銃であった。

 特殊な構造の銃で、連続して発射できるものだった

 女たちは心臓を正確に打たれて即死した。

 しかし、一人だけそれを躱したものがいた。

 立木であった。

「あら...」

 感心したような声をあげた。

「あなただけだったわね。私が来た時に、距離を取ったのは」

 3人の女たちは、吸い込まれるように、美和子に近づいたのだった。

 立木はとっさに斧で自分の心臓をガードしたのだ。

「私はこの主婦どもみたいなお人よしじゃないんでね」

 少し間をおいてから、主婦が体当たりで迫ってきた。

 美和子は、撃とうとするが、体が先に当たり、銃を落とした。

 そのすきに、立木は道を抜けていった。

 銃を拾い、立木を撃つが、致命傷は与えられなかったようだ。

「逃げ足の速いデブね...」

 美和子は追うのを諦め、舗装された道へ戻ることにした。

 森は、悲鳴を聞いてから、すぐホテルを出た。

 ホテルの反応をまちまちで、すぐに襲うものもいれば、半信半疑の者、混乱している者もいた。

 ホテルの食堂にいる者は、その場で射殺された。

 反乱の意志ありとみなされたからだ。

 40人いた参加者が、36人になった。

 そして、10分以内に、禁止エリアを出ることができずに、首輪を爆破されたものが、3人。

 美和子に殺されたものが、4人で、残り、29人

 ゲーム開始が18時である。

 森はホテルを出て、海水浴場についた。

 森は人のいないところで、カバンの中身を確認した。

 支給武器はフォークであった。

 こんなもんでどう戦えばいいってのよ。

 すると、後ろから音を立てないように歩く音が聞えた。

 気配を殺しているような気配。

 人間の熱が背中に伝わってきた。

 こういう状況だからこそ、感じ取れるものだろう。

 かくれんぼや鬼ごっこをしている時にこのような感覚を味わったことがあるのを思い出した。

 振り向くと、髪の長い女がいた。

「ねえ、私たち協力し合わない?」

 暗がりで顔は良く見えないが、容姿が整っている人間特有の自信のようなものが体を纏っていた。

「あなたの武器は?」

 その女は続けていってきた。

「これ...」

 森は、フォークを差し出した。

 相手が、アサルトライフルを出してこない限りは勝てる。

 そう思った。

「私はこれよ....」

 扇子であった

 森は逡巡した。

 今は、弱い武器だから、協力しようとなどと言っているが、どこかで、強い武器を手に入れれば、簡単に斬られることを。

 しかし、相手からすればそれは同じだった。

 協力をするふりをして、いかに強い武器を見つけるか。

 それが目標じゃないか?

 しかし、本当にそれをやってしまっていいのだろうか...

「協力って?」

 森は女に聞いた。

「こんなゲームからさっさと降りるためにに協力するのよ、あなただって人を殺したくないでしょ?」

「それはそうだけど?」

「なら、あなたが知ってる人がどんな人かそれから話し合いましょ。というか、あなたの名前からね」

「森智子です」

「私は松岡亜美。よろしくね。」

 自分よりいくらか若そうだが、こんな非常事態にどうこう言っている場合じゃない。

 二人は町内会からもらった参加者リストを出した。

「他に協力してくれそうな人とかは?」

「知らない人ばかりだから....」

「そうなのね...とりあえず、死んだ人は線で消していきましょう」

 厚労省から送られてきた、通知では、死んだ人が示されているが、誰に殺されたかは、書かれていない。

 時刻と場所と人名が簡素に書かれている。

「でも、芸能人も何人か入ることだし...」

「ごめんなさい。私芸能人には疎くて...」

「そうなんですか...この陶愛理って人は?」

「どんな人なの?」

 残念ながらネットは繋がるには、繋がるが、電波が弱い。

 森は、亜美に画像を見せた。

「やっぱり、見たことないわ」

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