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第360話

Autor: 花辞樹(かじじゅ)
景凪は静かに目を閉じた。これ以上、言葉を交わすのは無駄だ。

彼女はふと目を開けると、机に突っ伏したままの伊雲を指差し、短く命じた。「あの娘を、奥の部屋へ」

奥の部屋……

文慧の脳裏に、そこへ押し込んだ四人の男たちの姿がよぎる。催淫剤で理性を失っているはずの野獣たち。

戦慄が走った。文慧は初めて、底知れぬ恐怖を味わった。

「やめて……景凪、私の娘に手を出さないで!」彼女はなりふり構わず、床を這って景凪の足元へすがりついた。

「伊雲に指一本でも触れてみなさい、絶対に許さないから!」必死の形相で脅し文句を吐くが、景凪は氷のような冷徹な眼差しで見下ろすばかりだ。その視線の先で、意識のない伊雲が無造作に奥の部屋へと引きずられていく。文慧の心臓が早鐘を打つ。

「景凪、お願い、やめて!伊雲は私のたった一人の大事な娘なのよ。復讐するなら私にしなさい!私が身代わりになるから!全部私が計画したことで、あの子は関係ないの……」

涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにし、文慧は床に頭を打ち付けて懇願した。額が割れ、鮮血が滲む。

ようやく、我が身に火の粉が降りかかって初めて、その熱さを思い知ったのだ。

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