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第591話

Author: 花辞樹(かじじゅ)
「姿月さんが忙しいなら手伝うわよ。今、私暇だし」

伊雲が親切心のつもりで口を挟むと、深雲は苛立ちを隠さず、フォークを乱暴に皿の上に落とした。

カチャン、という鋭い音が響き、隣で清音がビクリと肩をすくめる。

「しつこいぞ」

「なによ、ちょっと聞いただけで……」

理不尽に怒鳴られ、伊雲は口を尖らせた。深雲は深い溜め息を吐き出す。「俺たちのことに首を突っ込むな」

「はいはい、わかりましたよ」伊雲は不服そうに呟くと、話題を変えた。気になっていたことを確かめる好機だ。「じゃあ教えてよ。潤一さんの隣にいたあの子、何者?」

深雲が答えるよりも早く、清音がぼそりと呟いた。「……弥生ちゃん。同じクラスの子」

母、景凪が弥生の手を甲斐甲斐しく拭いていた光景が脳裏に焼き付いている。清音は苛立ちを募らせ、言葉を継いだ。「あの子、私の家来みたいなものなの。私がいないと誰にも相手にされないんだから。だってみんな言ってるもん、汚くて親に捨てられた子だって」

言葉にするうちに感情が高ぶり、清音の声が大きくなる。「弥生ちゃんなんて、ただの乞食よ!」

他人が手放したものを拾うなんて、乞食のすることだ。
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