長くて苦しい一晩だった。全て終わった時、彼女は疲れ果てて眠ってしまった。翌日。常盤グループ。奏はいつも通り、午前10時に会社に着いた。オフィスに入るとすぐに、武田がやってきた。「昨日の夜、探しに行ったけど。とわこと帰ったのか」奏が眉をひそめた。「わざわざ来るのはその話をするためか?」苦笑しながら、武田は手にした書類を机に置いた。「これは三千院グループ過去数年の財務諸表だ。一通り調べたが、不審なところは結構あるぞ。特に財務責任者が400億円を横領した。その犯人は社長の奥さんの弟だった」奏は目をつぶって考えた。もし武田が言ったことが本当だったら、破産は新製品開発と無関係のはずだ。「この件でわかった。結婚相手を選ぶ時は慎重にすべきだ」武田が嘆いた。「太郎が当時すみれに浮気しなかったら、今の三千院グループはこんな羽目にならなかっただろうな」「もう一つ分かったことがある。女性は成功の邪魔になる」奏は冷徹な表情を浮かべた。「そう…マジでとわこと離婚するつもりか。いつ離婚届を出すの?独身に戻ったら、パーティを開こうか?」武田が機嫌よく言った「仕事はもう終わったのか?そんなに暇?」奏は眉を上げて口調が厳しくなった。武田は椅子から立ち上がり、軽く咳をした。「もう行くけど……ちょっと忠告しとくよ、首の引っかき傷は、薬を塗った方がいいと思うぞ。猫に引っかかれたように見える。どうやら昨夜は相当激しかったみたいだね」喉仏の動きと同時に、「出て行け!」と怒鳴り声が響いてきた。武田はさっさと出て行った。しばらくして、直美がドアをノックして入った。「奏、今忙しいの?ちょっと仕事以外のことについてお話ししたいの」ドアを閉めてから直美が言い出した。奏はメールボックスを眺めていた。「今は空いていない。仕事以外の用件なら、終わってからにしてください」直美は一瞬躊躇したが、続けて話すことにした。「やっぱり今話すよ。この件は仕事よりも大事なの」彼女は手にした封筒を奏に渡した。「開けてみて。驚かせるものがあるわ」椅子に座った直美の視線は、奏の首の傷と一直線だ。考えなくてもわかるものだ。彼女はやきもちを焼いた。「夕べとわことやったの?」直美は震えた声で叫び出した。「奏、とわこを本気にするなんて絶対ダメよ
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