彼は、自分にもとわこの女性客をもてなす責任があると思ったのか、ずっと協力的に女性たちと写真を撮ったり、サインをしたり、おしゃべりをしたりしていた。会場に来てから、水を一口飲む暇さえなかった。「涼太を呼んできて、何か食べさせたらどう?」とわこがマイクに声をかけた。「冗談はやめてくれよ。彼女たち、俺のことなんて見向きもしないさ」マイクはため息をついた。「涼太、あまりにもイケメンすぎる。奏が危機感抱くのも無理ないって」「え、奏が危機感?」とわこにはそう見えなかった。「今日の奏の格好、まるでクジャクみたいじゃなかった?超気合い入れてるし」マイクはからかうように言った。「まさか子供たちのために、あんなカッコしてきたわけじゃないよね?」とわこは思わず吹き出した。「じゃあ、マイクは子どもたちの相手よろしくね。私、蒼を見てくる」「蒼が起きてたら、こっちに連れてきて!遊ばせようよ」「うん。こんなに人が多いの初めてだから、ビビっちゃうかもね」とわこはそう言って、宴会場の出口に向かって歩き出した。蒼を抱いて宴会場に戻ろうとしたとき、遅れてやって来た裕之と瞳にばったり出くわした。「とわこ、遅くなってごめん」裕之が申し訳なさそうに言った。「先に入ってて」瞳が裕之の手をそっと放した。どうやら、とわこと二人で話がしたいらしい。裕之は察して、大きくうなずくと宴会場へと入っていった。「昨夜、あなたたち......」とわこは瞳の顔を見ながら、言いかけて言葉を止めた。「うん、ちょっとお酒飲んで、酔ったら怖さがましになるか試してみようと思ったの。でも......」瞳は首を振った。「そんなにひどいの?」とわこは眉をひそめた。「瞳、焦らなくていいよ。心の傷って、そんなに簡単には癒えないけど、絶対に少しずつよくなるから」「そこまで重くはないんだけど......」瞳は苦笑しながら言った。「昨夜、二人とも飲んでて。私が怖がってたら、彼が突然、『音楽でもかけようか』って。で、流した曲が」「どんな曲?」とわこは興味津々で尋ねた。「私も落ち込んだときに聴いてみたいな」「キラキラ星」「......」「今思い出しても変すぎるでしょ?なんであの曲流すのか意味不明。でもさ、その曲流れた瞬間、二人で大爆笑して、それで、うまくいっちゃったの」「す
Read more