All Chapters of 植物人間だった夫がなんと新婚の夜に目を開けた: Chapter 951 - Chapter 957

957 Chapters

第951話

彼は、自分にもとわこの女性客をもてなす責任があると思ったのか、ずっと協力的に女性たちと写真を撮ったり、サインをしたり、おしゃべりをしたりしていた。会場に来てから、水を一口飲む暇さえなかった。「涼太を呼んできて、何か食べさせたらどう?」とわこがマイクに声をかけた。「冗談はやめてくれよ。彼女たち、俺のことなんて見向きもしないさ」マイクはため息をついた。「涼太、あまりにもイケメンすぎる。奏が危機感抱くのも無理ないって」「え、奏が危機感?」とわこにはそう見えなかった。「今日の奏の格好、まるでクジャクみたいじゃなかった?超気合い入れてるし」マイクはからかうように言った。「まさか子供たちのために、あんなカッコしてきたわけじゃないよね?」とわこは思わず吹き出した。「じゃあ、マイクは子どもたちの相手よろしくね。私、蒼を見てくる」「蒼が起きてたら、こっちに連れてきて!遊ばせようよ」「うん。こんなに人が多いの初めてだから、ビビっちゃうかもね」とわこはそう言って、宴会場の出口に向かって歩き出した。蒼を抱いて宴会場に戻ろうとしたとき、遅れてやって来た裕之と瞳にばったり出くわした。「とわこ、遅くなってごめん」裕之が申し訳なさそうに言った。「先に入ってて」瞳が裕之の手をそっと放した。どうやら、とわこと二人で話がしたいらしい。裕之は察して、大きくうなずくと宴会場へと入っていった。「昨夜、あなたたち......」とわこは瞳の顔を見ながら、言いかけて言葉を止めた。「うん、ちょっとお酒飲んで、酔ったら怖さがましになるか試してみようと思ったの。でも......」瞳は首を振った。「そんなにひどいの?」とわこは眉をひそめた。「瞳、焦らなくていいよ。心の傷って、そんなに簡単には癒えないけど、絶対に少しずつよくなるから」「そこまで重くはないんだけど......」瞳は苦笑しながら言った。「昨夜、二人とも飲んでて。私が怖がってたら、彼が突然、『音楽でもかけようか』って。で、流した曲が」「どんな曲?」とわこは興味津々で尋ねた。「私も落ち込んだときに聴いてみたいな」「キラキラ星」「......」「今思い出しても変すぎるでしょ?なんであの曲流すのか意味不明。でもさ、その曲流れた瞬間、二人で大爆笑して、それで、うまくいっちゃったの」「す
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第952話

そばで誰かが笑いながら言った。「常盤社長の秘書が、現金を取りに行ったみたいよ。今日は社長、大盤振る舞いのつもりなんだろうね!」その場は爆笑の渦に包まれた。とわこの頬がほんのり赤くなった。まさか奏がこんなに頑張って客をもてなしているとは思っていなかった。「みんな、あまり熱くなりすぎないでね」彼女は控えめに言った。「とわこ、まだ始まったばかりなのに、もう奏の財布を心配してるの?」みんながまた笑い出す。奏は面白そうにとわこを見つめ、提案した。「俺の隣に座って、やり方教えてくれる?」とわこは彼の深い視線を避けながら、周囲に向かって言った。「皆さん、気にせず本気で勝負していいよ」そう言って、彼女は子どもを抱いたままその場を離れた。その時、裕之がビュッフェコーナーからトレーを持ってやってきた。「とわこ、奏兄のことは心配しなくていいよ。彼、負けるような人じゃないから」とわこは少しバツが悪そうに言い訳した。「心配なんてしてないわよ」「じゃあ、さっきの大爆笑は何だったの?それに、瞳、外で君に何か話してたでしょ?まさか昨夜のこと、言っちゃったとか?」裕之は昨夜の出来事をちょっと恥ずかしく感じていたので、あまり広めてほしくなかった。でも瞳の性格からして、とわこには絶対話しているだろうと察していた。「うーん......あなたのスマホのプレイリスト、なかなか斬新だったわね」とわこはからかうように言った。裕之はため息をついた。「あれはシステムの自動再生だよ。僕が作ったプレイリストじゃないって」「じゃあ、システムもあなたたちを応援してるってことね」とわこは楽しげに笑った。「でも、今後はなるべくお酒は控えてね。瞳には妊娠の可能性があるんだから、もし万が一ってことになったら、お酒の影響で赤ちゃんに何かあったら大変だし」その一言で、裕之の表情が固まった。「でも、まだご両親には言わないほうがいいわよ」とわこは続けた。「期待させすぎると、すぐできるって思われかねないから」裕之はすぐにうなずいた。「もう親とは和解したよ。二人とも瞳に謝ってくれた。だから、昨夜は瞳も少し感情的になってて、どうしても試してみたいって」「なるほどね」「とわこ、どこか座って休んだら?ずっと抱っこしてて疲れるだろ?僕、食べ終わったら、また奏兄のとこ見に
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第953話

結翔「ねぇ、君のパパ、なんでまだ来ないの?」レラ「うちのパパならもう来てるよ!今、バンケットホールにいるもん!」結翔は頭を掻きながら、あたりをきょろきょろと見回した。「どの人が君のパパ?どうして一緒に遊びに来ないの?もしかして怠け者で仕事もしないダメなパパだから、君のママと一緒にいないんじゃない?だから君たちも彼のこと好きじゃないんでしょ?」結翔の発言に、レラはびっくりしたが、真実を言いたくなかった。「うちのパパは怠け者なんかじゃないもん!誰がパパかは絶対教えない!お兄ちゃんよりも賢いとか言ってたよね?なら、自分で見つけてみなさいよ!」その様子を見ていたマイクが笑いながら口をはさんだ。「結翔、どうしてそんなに蓮とレラのパパのことが気になるの?」結翔「だって気になるじゃん!うちのママは蓮のパパは奏って言ってるんだけど、うちのパパは違うって言ってて、2人ともこの件で何度も喧嘩してるんだ」マイクは腹を抱えて笑い出した。「で、君はママとパパ、どっちを信じてるの?」「パパ! だってパパの方が僕に優しいもん!」結翔は自信満々に言った。「それにもし本当に蓮のパパが奏なら、蓮は絶対そんなパパを嫌わないって!奏って超すごい人だよ!僕の憧れなんだ!」蓮はその話を聞いても、特に反論せず、黙ってその場を離れた。ほどなくして、宴会場に優雅なピアノの音色が響き渡る。レラは、ステージでピアノを弾いている涼太の姿を見つけると、すぐに弟をマイクに預け、嬉しそうにステージに向かって走っていった。マイクは蒼を抱っこしながら、蓮のクラスメイトたちを眺めた。「ねぇ、君たち何か特技ある?ステージで披露してみたらどう?」でも皆、首を振るばかり。どうやらそういうのには興味がないらしい。「そんなことじゃ、将来彼女できないぞ?」マイクは軽く脅かすように言った。「うちのパパが言ってたよ。お金さえ稼げれば、彼女はできる!」結翔が真剣な顔で言う。「それも間違ってないけどね。でも、レラみたいにお金もあって、美人で、才能もある彼女は、お金だけじゃ手に入らないよ?」男の子たち「......」時間はあっという間に過ぎ、午後4時になった。麻雀の勝負が終わり、奏は大勝利を収めた。とわこが彼に尋ねた。「あなた、麻雀できないって言ってたじゃない。なんでそん
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第954話

「話って?今じゃダメなの?」口ではそう言いながらも、彼女の心の中はすでに答えが出ていた。彼との誤解はすでに解けた。話す内容なんて、どうせ「もう一度チャンスをくれ」ということだろう。彼女は前回、それをやんわりと断った。今回もやっぱり答えは変わらない。彼を嫌っているわけじゃない。ただ、自分自身がまだ冷静になりきれていないと感じていた。それに、今の二人はお互いに敬意を持ち、距離感もちょうどいい。そんなバランスが心地よかった。「今話しても、何も変わらないと思う」彼は彼女の表情を見ただけで、心の中まで読み取った。「じゃあ、出張から戻ってきたら何か変わるとでも?」とわこは不思議そうに聞いた。「どれくらい行くの?」「一週間」「ふーん、一週間後にまた話しましょ」彼女は目を伏せ、彼に掴まれた自分の腕を見つめた。「まさか、さっき麻雀やってて手洗ってないんじゃない?」とわこは彼の手が汚れてるかもしれない、と遠回しに嫌がった。彼は一瞬きょとんとしたが、すぐに彼女の手を引いて洗面所のほうへ向かった。「じゃあ、一緒に手を洗いに行こう」ふたりはみんなの視線を浴びながら、宴会場を横切っていった。「ねえ、今日のあの二人、急に距離縮まってない?」マイクが涼太に小声で聞いた。涼太はやる気のない顔で答える。「いや、全然。むしろ、とわこが無理やり付き合わされてる感じだろ」マイクが鼻で笑った。「じゃあ、他の男が同じことしてみ?成功すると思う?」涼太は顎を軽く上げて、少し冷たく言い放つ。「僕はあいつら、うまくいかないと思ってる。今はまだ男っぽく見えるけど、あと数年したら、あいつもう役に立たなくなるよ」マイクはあきれたように舌打ちした。「はぁ?年取ったら即アウトってこと?『まだ男に見える』って、まるであと少しで性転換するみたいな言い方じゃん。そんなに毒舌だと、とわこに嫌われるよ?」涼太は穏やかな顔を保ったまま答えた。「別に年配男性をディスってるわけじゃない。僕だっていつか歳を取る。でも、若い子を狙う年配男性は、どうしても受け入れられないんだよ」マイクは苦笑して、彼の肩を軽く叩いた。「まぁまぁ、もし数年後、奏が本当にダメになったとしても、とわこは彼を見捨てないと思うよ。だって、彼女の職業、忘れたの?」その一言で、涼太の眉がピクリと動いた。
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第955話

とわこは、奏と涼太の関係があまり良くないことを知っていたので、彼らが一緒に立っているのを見て、少し不思議に思った。「何でもないよ」奏は涼太を冷ややかな目で見つめながら、とわこに答えた。「涼太が君の性生活を心配してね、俺にもっと身体を鍛えろって忠告してきたんだ」「ほんとにくだらない!」とわこの頬が真っ赤になり、怒りを抑えきれず、その場を立ち去った。彼女の怒りを見た涼太の顔から、平静さが消えた。「奏、本当に恥知らずだな!」奏は落ち着いた様子で返した。「恥知らずなのはそっちだろ。男としての価値なんて、口だけじゃ証明できない。俺のことを心配する前に、自分がちゃんと使えるって証明してきたらどうだ?」この一言に涼太は激怒し、その場を勢いよく去っていった。マイクが呆れたように言った。「やっちゃったな。あとでレラが知ったら、絶対怒るぞ」頭が痛くなってきた奏はこめかみを押さえた。涼太を引き戻すなんて絶対に無理だ。でもレラを怒らせたくもない。「一つ方法がある」マイクがすぐに提案を出した。「お前も会場から出ろ。そうすれば、レラも怒らない」奏は眉をひそめた。本当は出たくない。もうすぐ出張で、1週間も子どもたちに会えないのだから、できるだけ一緒にいたいのだ。子遠もマイクの提案を考えた上で、説得に出た。「社長やっぱり一旦出ましょう。レラが怒ると、なかなか機嫌直らないですよ。それにとわこさんも怒ってるし」奏の瞳に、鋭い冷気が宿った。涼太、敗北者のくせに、よくも挑発してくれたな!向こうが先に火をつけなければ、自分だってわざわざ応戦する気はなかったのに。奏が去った後、マイクはとわこをなだめに行った。「もう怒らないで。二人とも会場から出て行ったよ。今はみんな見てるんだし」とわこは眉間にしわを寄せ、不満そうに言った。「あなたたち、ちょっとひどすぎるわ」「誓って言うけど、俺は関係ないし、奏も関係ないよ。あれは完全に涼太が火をつけたんだ」マイクは説明した。「彼はとわこを追いかけても振り向いてもらえなかったから、奏に対して嫉妬してるんだよ。でも、若い男だから、衝動的になるのも仕方ないさ」「彼が衝動的なのはわかるけど、だからってみんなまで巻き込まなくていいでしょ?」とわこが反論する。「あなたたちが煽らなきゃ、彼一人であんなに騒ぎ立て
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第956話

彼は再び、印刷された画像の中年男の顔を見つめたが、やはり見覚えはなかった。この男には一度も会ったことがない。おそらく、精神に問題がある人物なのだろう。だからこそ、昨夜家の周りをうろつきながら、訳もなくニヤニヤしていたのかもしれない。彼は紙をくしゃくしゃに丸めてゴミ箱に捨てると、大股でバスルームへ向かい、扉を閉めた。キッチンでは、千代が彼の様子を見計らって、三浦に電話をかけていた。「旦那様、涼太さんと口論されたらしいよ」三浦が言った。「でも最初に仕掛けたのは旦那様じゃなかった。言い合いのあと、二人とも会場を後にしたって」千代は納得したように答えた。「道理でこんなに早く帰ってきたのね」「旦那様の様子はどう?」三浦が心配そうに聞く。「ちょっと元気がないけど、まあ大丈夫そう」千代は続けて尋ねた。「今日、お子さんたちとは一緒に過ごされたのかしら?」三浦は笑いながら答えた。「今日は子どもたちとは過ごしてないよ。一日中お客さんの相手をしてたみたい。とわこがお願いしてね」千代は頬を赤らめて言った。「二人、ずいぶん親しくなってるみたいね」「うん!前よりずっといい感じだったよ。これからは、もう喧嘩しないといいんだけど」三浦は優しく言った。「そうじゃないと、子どもたちがかわいそうだわ」「じゃあ、私は夕食を用意してくるね」奏はシャワーを終え、リラックスした部屋着に着替えて2階から降りてきた。千代は出来たての料理をテーブルに並べた。「旦那様、夕飯の準備ができましたよ」奏はダイニングへ向かい、椅子に腰掛けた。「明日から出張なんだ。一週間くらい家を空けると思う。休暇を取って、実家に帰ってもいいよ」千代は寂しそうに目を伏せた。「旦那様、両親が亡くなってからは、実家もないんです」奏は一瞬黙ったあと、優しく提案した。「じゃあ、旅行でも行く?」千代は首を振った。「いいえ、私はここにいるだけで充分幸せです」奏はそれ以上は何も言わず、無理に勧めなかった。食後、彼は書斎へ入り、約一時間ほど仕事をした。そして部屋から出て、暗くなり始めた空を見ながらスマートフォンを手に取った。とわこからの連絡が来ていないか確認するためだった。しかし、何の連絡もなかった。その瞬間、彼の目にかすかな陰が落ち、心の中も静かに沈んでいった。彼
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第957話

同僚は無線で指示を受け取るとすぐに返答した。「了解!すぐに行動します!」それから約5分後、別荘の外から、男の悲鳴が聞こえてきた。千代は物音に気づき、急いで様子を見に玄関を出た。彼女が目にしたのは、二人の警備員が一人の男を激しく殴っている姿だった。「何が起きてるの?この人は誰?」千代が慌てて尋ねた。「千代さん、この男、昨夜のあの不審者です!」一人の警備員が手を止め、説明した。「こそこそと塀の外をうろついてたんです。たとえ本当に悪気がなかったとしても、一度きつく懲らしめておかないと、また毎日のように来られたら大変です!旦那様が怒りますから」「なるほどね」千代は倒れた男を注意深く見つめた。すると、その男が顔を上げ、額の髪をかき上げながら、千代を真っ直ぐに見つめて言った。「千代、俺のこと覚えてないか?」警備員たちは、その男が千代に話しかけたのを見て、殴るのをやめた。彼女の知り合いなのか?知ってるなら、なぜ最初に言わなかった?「あなたは......」薄暗い中で千代は顔を見つめるが、すぐには思い出せなかった。和夫はにやりと笑みを浮かべながら立ち上がった。「もしかしたら覚えてないかもだけど、昔、旧宅で一緒に働いてたんだ」和夫は太って顔には肉がつき、すっかり変わり果てていたため、名前や職務を名乗るまでは思い出せなかったのだ。「昔一緒に働いてたのなら、家に入ってお話しなさい」千代は彼を中へと招き入れた。「そういえば、あなたのお名前は?それに、なぜここへ?」和夫は、意味深な笑みを浮かべながら答えた。「俺の名前は和夫。昔、旧宅で運転手をしてた」その名前に、千代は微かに聞き覚えがあった。彼女は一瞬、言葉を失いながら思い出にふける。数秒後、「思い出したわ!確かに、和夫って呼ばれてた運転手がいたわね!あなたなのね!」「そうそう!俺が和夫さ!」和夫は狂気を含んだ笑みを浮かべて言った。「千代は本当に若々しいなぁ、昔と変わらない!」だが、千代の表情は急変した。「和夫!思い出したわ、あんたは盗みを働いて、家政婦と不適切な関係まで持って、大旦那様にクビにされたのよ!」その言葉を口にすると、千代の顔は真っ赤になり、怒りが込み上げた。こんな素行の悪い人間を家に入れるなんて、どうかしてた!彼女が警備員に彼を追い出すよう
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