「えっ、そんな偶然ある?」瞳は冗談めかして言った。「もしかして、二人とも同じ場所に行くんじゃないの?」とわこにはわからなかった。昨日、奏がどこへ出張に行くのか、彼に聞かなかったからだ。今になって少し気にはなるが、わざわざこちらから連絡して聞くつもりはない。たとえ同じ場所だったとしても、それがどうしたというのだろうか。洗面所で顔を洗って歯を磨き、服を着替えて部屋を出ると、すでに二人の子どもは学校に行っていた。蒼はリビングのベビーベッドでぐっすり眠っていて、三浦はキッチンで朝食の準備をしていた。「三浦さん、今日からちょっと遠出する。一週間後に帰ってくる予定よ」とわこはキッチンの入口に立って伝えた。三浦は一瞬手を止めて驚いたように顔を上げた。「どうしたの?夕方、子どもたちが帰ってきて、とわこさんがいなかったら寂しがるよ」「地方で研修に参加することになって、頼まれごとなので断れなくて」「そう、仕事ならきっと子供たちもわかってくれるわ。それで、一人で行くの?誰か一緒に行く人は?」「一人で行く」とわこはダイニングに移動し、椅子に座った。「でも、向こうは一応セキュリティもしっかりしてるし、心配しなくて大丈夫」「それなら安心だね」三浦は朝食をテーブルに並べながら聞いた。「出発はいつ?」「朝ごはん食べたら航空券を予約する。遅くても午後には出る」とわこはミルクのカップを手に取り、口をつけた。「マイクは?」「まだ起きてないみたい」三浦がそう言った瞬間、マイクが隣の部屋からふらっと現れた。「誰がまだ起きてないって?」乱れた髪のまま、マイクはとわこの隣に座った。「今日から出張なの。一週間くらい家を空けるから、その間よろしくね」その言葉に、マイクは一気に目が覚めた。「えっ、どこ行くの?一緒について行こうか?」「青山大学って知ってる?」とわこはス味噌汁を一口すくって口に入れた。胃にじんわり温かさが広がる。「副社長がこの学校の研修講座を申し込んでたんだけど、急な家庭の事情で行けなくなって、代わりに私が出席することになったの」「青山大学?もちろん知ってるよ。有名な私立の名門校だろ?でも大学本体よりも、附属のエグゼクティブ研修コースの方が有名だよね。とわこが行くのって、きっとそのエグゼクティブコースでしょ?」その説明に、と
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