彼がお祝いのお菓子を配るなんて、それもわざわざ彼女の会社にまで届けてきたとは、本当に馬鹿馬鹿しい。「まだ決まってないよ」とわこは少し頬を赤らめて答えた。「え?でも、6月1日に結婚するって聞きましたよ?」受付の女性が驚いた様子で言った。「常盤グループの人に聞いたら、あなたと奏社長は6月1日に結婚するって言ってました!」とわこ「……」なんてこと!自分ですら知らなかったのに、奏の会社の社員たちはもう知っているなんて。彼女と奏は入籍することだけ決めていて、挙式の日取りは準備の進行次第で決める予定だった。なのに、彼が勝手に6月1日に決めて、しかも何も知らせてこなかったなんて?とわこはオフィスに戻ると、すぐに奏に電話をかけた。電話はすぐに繋がり、低く落ち着いた声が耳元に届いた。「とわこ、今ちょうど君に電話しようと思ってた。ドレスのデザイン画ができたから、Lineで送ったよ。見てみて」「そんなに早く?」思わず彼に電話した理由を忘れるほど驚いて、「じゃあ、今見るね」そう言って彼女は通話を切った。Lineを開くと、彼から送られてきた数枚のドレスのデザイン画が表示された。全部見終わった後、彼に電話をかけ直した。「昨日のデザイナーさんの作品?デザイン、すごく綺麗」「じゃあ、それで決まりだな?」「うん」とわこは特にこだわりはない。シンプルで上品なデザインなら、それでいい。彼女にとって、結婚式は神聖なものだから。さっき見たドレスは、その条件を十分に満たしていた。「うちの副社長が日取りを占ってくれてね、6月1日が結婚に良い日なんだって。君はどう思う?」「なるほど。じゃあその結婚日、副社長が決めたのね。今うちの会社の人たち、みんな6月1日に私たちが結婚するって知ってるのよ」とわこはデスクの前に座りながら言った。「それでいいけど、時間がちょっと急じゃない?」「問題ないよ」彼はくすっと笑って、「お金をかければ、明日にでも式が挙げられるさ」頬がほんのり赤くなったとわこは、話題を変えた。「そのとき、お兄さんと甥っ子も招待するの?」「呼ぶ必要はない」彼の声は少し冷たくなった。「あの親子を見ると、母があの二人のせいで死んだことを思い出すんだ。母の一番の願いは、俺の結婚を見届けることだった。でも、それは叶わなかった」と
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