一日しっかり働き終えた桃は、凝った肩を揉みながら会社を出た。オフィスの若い女の子たちが彼女を見かけると、思わず声をかけてきた。「桃さん、今日も旦那さんお迎えに来るんですか?」その言葉に、桃は思わず顔を赤らめた。少し困ったように首を振る。「彼、普段すごく忙しいから、そんなに毎日は来ないわよ」心の中では、雅彦のせいで自分が会社内で妙に目立ってしまったことを恨めしく思っていた。昨日の彼の行動のせいで、彼女は注目の的になり、何人かの若い女性社員がわざわざ話しかけてきては、どうやってそんな男性と知り合ったのかを聞いてきた。中にはかなり積極的な態度で、お金持ちの男性を紹介してほしいと頼んでくる者もいた。桃は当然、そんな紹介をするつもりはなかったため、丁寧に断るのにかなり労力を使った。そのせいで、数名の女性社員は彼女が自分たちを見下しているのではないかと受け取り、あからさまに不機嫌な反応を見せることもあった。「……はぁ……」桃は深いため息をつきながら、今日雅彦が帰ってきたら、耳をつかんでひとこと文句を言ってやらなければと心に決めた。そう考えながら、彼女は近くのショッピングモールへ向かった。子どもたちは最近またぐんと背が伸びて、今までの服がもう合わなくなってきていた。そろそろ新しいのを買い揃えなきゃ……と、子供服のお店へ向かった。いつも行きつけの店に入って、桃は店内の商品を見ていた。すると――視界の端を、どこか見覚えのある、けれどどこか違和感のある影が、サッと通り過ぎた。一瞬のことだったが、桃はその姿を見た瞬間、まるで電流が走ったかのように、反射的に動いた。持っていた服もそのままに、走り出した。「桃さん?」店員は顔見知りで、彼女の突然の様子に驚き、声をかける。桃はいつも冷静で穏やかな印象だったからだ。けれど、桃には、店員の呼びかけを気にする余裕などなかった。ただ、その背中を追いかけ続けていた。その人影は、ショッピングモール内のトイレへと入っていった。桃は呼吸を整えるように深く息を吸い込み、心を落ち着けた。――あの背中を見た瞬間、彼女は確信した。あれは、莉子だった。しかし、莉子の脚はずっと感覚がないと聞いていた。だから、たとえ手術が成功しても、こんなに早く歩けるはずがない。じゃあ、今見たあの歩く姿は、一体?まさか――
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