憲一は感慨深げだった。まさか、圭介と香織に続いて幸せになるのが越人だとは。普段はあんなに忙しく働いているのに、恋愛面では自分を出し抜いているなんて。彼はまた深いため息をついた。「はあ……結婚するんだから、記念になるような結婚祝いを贈らないとな」「それぐらいの良心はあるのね」香織が言った。「……」憲一は言葉を失った。自分はそんなにダメな人間に見えるのか?「俺、そんなに悪いか?」香織はいたずらっぽく笑って言った。「悪くはないよ。ただ……あんまり良くもないかも?」「香織!圭介と一緒になって図に乗ってるんじゃないだろうな?」香織は慌てて手を振った。「今の言葉、聞かなかったことにして」憲一はふんと鼻を鳴らした。「もう遅いぞ。母の借りは子が返すってな。君の息子に武術を習わせて、俺の娘のボディーガードにさせてやる」「……」香織は言葉を失った。我が子もだって大切な子だというのにどうしてボディーガードなんて……「いい夢見てるわね」彼女はぷいと顔を背けた。そんな将来、絶対にさせない。鷹はそばで黙って聞いていたが、そのやり取りに思わず目を瞬かせた。ボディーガードってそんなに悪い職業か?まあ確かに、人に仕える立場って言われたら……ちょっと微妙かもしれない。香織が部屋に入ると、圭介が窓際で電話をしているところだった。誰と話しているのか、彼女が近づくとすぐに切ってしまった。「誰だったの?私が来たら切るなんて」彼女は何気なく聞いた。圭介が彼女を見上げた。香織は近寄って彼の腕を掴み、笑いながら言った。「どうしたの?何か言いにくいことでもあるの?」圭介は彼女の頬をつねった。「いつからそんなにやきもち焼きになったんだ?」香織は首を傾げ、考え込むふりをした。「あなたを愛し始めた時からじゃないかしら」彼女は真面目な顔で答えた。圭介は思わず笑みをこぼした。告白されて嫌な気分になる人なんて、そうそういない。彼だって例外ではなかった。彼はソファに腰を下ろしながら言った。「さっきの電話は越人だった。結婚式で何か手伝えることがないか、聞いてみた」式の準備には何かと物入りだろう。「で、どうだったの?」香織が尋ねた。「晋也が全部手
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