All Chapters of 会社を辞めてから始まる社長との恋: Chapter 1511 - Chapter 1519

1519 Chapters

第1511話 番外編百五十九

ゆみは手のひらを開いて見た。術印ははっきりとは見えなかったが、強烈な陽気が確かに感じられた。彼女は、深く息を吸い込むと素早く立ち上がった。その動作に、周囲の幽霊たちの視線が一斉に彼女に向けられた。視線を感じたゆみは、驚いて彼らの方へ顔を向けた。またこの感覚……!この扉から出られないかもしれないという恐ろしい感覚が、再び蘇ってきた。ゆみは、恐怖を必死に抑え、意を決して扉の方へ歩みを進めた。扉に近づくほど、周囲の陰気はどんどん強くなっていった。それに伴って、魂までもが押さえつけられるような強い感覚を覚えた。「姉さん、怖がらないで!!」「ゆみ!頑張って出てきて!あいつらは手を出せない。傷つけられることはないから!」「姉さん!僕も、兄さんたちも、高橋隊長も、みんな待ってるよ!」その声を聞き、ゆみの目からはぽろぽろと涙がこぼれ落ちた。彼女は歯を食いしばり、近くに見えるのにどうしても辿り着けない扉に向かって進み続けた。再び大きく息を吸い込み術印の描かれた手を高く掲げると、最後の一歩を踏み出した。すると、幽霊たちが一斉にゆみの方へ首を向けた。ゆみが扉に手を触れようとしたその瞬間、幽霊たちは一気に彼女に襲いかかった。陰気が迫ってくるのを感じたゆみは、手を掲げたまま素早く身体を反転させた。数体の幽霊が、もう少しでゆみの魂に触れるところだった。幽霊たちは、彼女の手のひらに満ちた強烈な陽気を宿す術印に気づくと、表情を一気に暗くした。ゆみは扉に背中を押しつけ、手探りで取っ手を探し当てると、すぐさま回した。扉を開けると、ゆみは勢いよく外へ飛び出した。その瞬間。病室で横たわったまま、ゆみはパッと目を見開き、はっと息を吸い込んだ。「姉さん!目が覚めたのか!?」ゆみが目を覚ましたのを見て、臨は思わず叫んだ。だが、ゆみはまるで彼の声が聞こえていないかのように、再びゆっくりと目を閉じてしまった。臨はひどく混乱し、慌てて市子の方を見た。市子は穏やかに言った。「大丈夫よ。この子はただ疲れてるだけ。今はゆっくり眠らせてあげなさい」その言葉を聞いた臨は、ようやく胸を撫で下ろした。「私たちは出ましょう。ゆっくり休ませてあげないと」臨は黙って頷き、市子の腕を支えながら病室を後にした。
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第1512話 番外編百六十

恐れと不安が次々と頭をよぎり、隼人はなかなか眠れなかった。彼は、目を開けてサンルーフ越しに空を見上げた。ゆみの仕事において、自分は何の力にもなれない。ならばせめて、彼女の「安全」くらいは守れるだろうか?そう思いながら、隼人は携帯を取り出し、佑樹にメッセージを送った。「市子おばあちゃんが泊まっているホテルを教えてくれないか?」しばらくすると、佑樹からホテルの住所と部屋番号が送られてきた。「ありがとう」佑樹はメッセージを見て冷笑しながら返信した。「ゆみの件、まだ許してないぞ」「殺すなり罰するなり、好きにしてくれ。俺のせいだ、責任はちゃんと取る」その後、佑樹から返信は返ってこなかった。隼人もそれ以上は何も送らず、車を発進させてホテルへと向かった。三十分後。隼人は、市子の部屋の前で2秒ほど躊躇してからドアをノックした。すると、すぐに中から声が聞こえてきた。「はい、今行きます」ドアを開くと、市子は少し驚いた表情で彼を見た。「あなたは、病院にいた少年ね?」隼人は頷いた。「市子おばあちゃん、少しだけお時間をいただけませんか。お話したいことがあるんです」「いいわよ」そう言って、市子は体を横にずらした。「入りなさい」ソファに腰を下ろすと、市子は尋ねた。「で、何の用だい?」隼人は緊張した様子で、両手をギュッと握りながら言った。「市子おばあちゃん、正直に言います。俺みたいな普通の人間に……ゆみを守る方法って、あるんでしょうか?」「普通の人間、ね……」市子はくすっと笑った。「あなたにとって、私たちのような仕事をする人間は“普通の人間”じゃないってわけか?」隼人はハッとし、慌てて言い直した。「そ、そういう意味はありません。ただ、俺たちとは違って、特別な力があるっていうか……」「それは、ただ神様から与えられた運に過ぎないわ」市子は静かに言った。「私たちだって普通の人間よ。ご飯を食べて、年を取って、病気にもなるし、死にもする。たしかに、ちょっとばかり特別なことができるけど、必ずしもそれが幸せとは限らないんだよ。それで、あなたは“ゆみを守りたい”と言ったね?」隼人は力強く頷いた。「はい、そうです」「ゆみはね、誰かに守ってもらう必要なんてないのよ。そ
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第1513話 番外編百六十一

隼人は、佑樹たちを病院から見送ると、椅子に腰かけて遠くからゆみの様子を見守っていた。彼女は穏やかに眠っており、呼吸に合わせて胸がゆっくりと上下していた。その時、一人の看護師がそばを通りかかった。隼人は、それに気づくとすぐに立ち上がり近づいて声をかけた。「すみません、看護師さん」看護師は彼を見て返した。「はい、どうかされましたか?」「ゆみはいつICUから出られますか?」「それはちょっと分かりませんね。傷の回復具合やバイタルサインの安定次第だと思います。私がこれまで見た中でも、あの子の傷の範囲はかなり大きい方です。うまくいかないと、跡が残るかもしれませんね……はあ……」そう言い終えると、看護師は静かにICUのドアを開けて中へと入っていった。隼人はその言葉を聞いて、またしても強い罪悪感に襲われた。この罪は、一生背負っていくことになるだろう。……三日後。ゆみがICUから出ると聞き、紀美子と晋太郎も病院に駆けつけた。ベッドにうつ伏せになったまま無気力な様子の娘を見て、二人の胸は締めつけられた。紀美子は、そっと近づき、ゆみの髪を撫でながら言った。「ごめんね、ゆみ。お兄ちゃんたちから連絡があって、急いで来たんだけど……遅くなっちゃって……」ゆみは首を振り、無理やり笑顔を作って答えた。「大丈夫だよ、お母さん。ほら、元気そうでしょ?」紀美子の目には涙が浮かんでいた。「安心して、母さんが必ず腕の良いお医者さんを見つけて、背中の傷痕を全部きれいに治してもらうから」「そんなの気にしてないよ。背中なんて見せることないし、自分でも見えないから全然平気」「君がどれだけ見た目にこだわるか、みんな知ってるぞ」佑樹は横で、壁に寄りかかりながら皮肉交じりに口を挟んだ。ゆみは彼の方を見ようと顔を向けたが、その動きで背中の傷が痛み思わず顔をしかめた。佑樹は眉をひそめ、口調を和らげた。「動くな。分かったよ、もうからかわないから」その様子を見ていた晋太郎が、真剣な顔で佑樹に言った。「佑樹、お前たち、海外にけっこうコネがあるだろ?優秀な皮膚科医を探してくれ。ゆみの背中は、絶対に元通りにしてあげないと」佑樹はうなずいた。「分かってる。もう手は回してるよ」ちょうどその時、病室のドアが開き隼人
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第1514話 番外編百六十二

隼人は右手を挙げながら言った。「あの時さ、俺の手が血まみれになってさ……君の背中の肉を削ってるのまで見ちゃって、何日も寝られなかったんだ」「そんなの簡単じゃん!」ゆみが笑いながら言った。「お医者さんに睡眠薬でも処方してもらえば、ぐっすり眠れるでしょ」隼人は笑いながらベッドのそばにしゃがみ込んだ。「ゆみ、君は……俺のこと、責めてないの?」「責める?」ゆみは首を傾げた。「何を?」隼人は鼻をかきながら、少し恥ずかしそうに呟いた。「俺があそこに連れて行かなければ、君は怪我なんてしなかったんじゃないかって、そう思ってさ」ゆみは呆れたように彼を見つめた。「それ、あなたが連れてったとか関係ないでしょ。悪いのはあの礼儀知らずの幽霊たちよ。治ったら、全員きれいに片付けてやるから!」「また行くつもりなのか?」隼人は驚いて聞き返した。「もちろん!」ゆみは手を差し出して言った。「七体全部冥土に連れて行けたら、閻魔様だって笑い転げるわよ」隼人は無邪気に笑う彼女の表情を見て、胸が痛んだ。「俺としてはさ、君に軽くでも怒られてくれた方が気が楽なんだけどな。こんなふうに笑って話されると、逆に辛いよ」「怒ったってしょうがないでしょ!」ゆみは言った。「からかった方が楽しいもん。ベッドから降りられるようになったら、ちゃんとご飯連れてってよ?体力つけなきゃ」「おう、任せとけ!」隼人は即答した。「何でも!」ゆみは頷いた。「そういえば、佑樹兄さんから聞いたんだけど、あなた市子おばあちゃんのところに行ったんだって?」隼人は特に隠すことなく答えた。「ああ、行ったよ。どうすれば君を守れるのか、聞きたくてさ」「ははははは!」ゆみは突然大声で笑い出した。「私を守る?なんでそんなこと思ったの?それにあなた幽霊見えないでしょ?どうやって戦うの?自慢の正義感で幽霊を圧倒しようとでも?」「もし正義感で幽霊を退治できたなら、あんな幽霊たちなんて問題にすらならないだろうに」「またそれ!」隼人の笑顔が少し消えた。「ゆみ……俺はまだ君のそばにいられるかな?」ゆみは瞬きをして、きょとんとした顔で聞き返した。「なんでダメなの?」「俺はてっきり……」「はいはい、もういいってば」
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第1515話 番外編百六十三

「確かに、お前は15年も想い続けて、たくさんの時間をかけてきた。だが澈、気づいてるか?ゆみはとてつもなく理性的な人間だ。一度覚悟を決めたら、すぐに前を向くタイプなんだ」隼人は言った。澈は呼吸が乱れるのを感じ、震える息を深呼吸で整えながら隼人を見つめた。「ああ」澈は答えた。「彼女は誰よりも感情的でありながら、理性的でもある」「例え話をするよ。もしゆみが本当に俺を選んだら、お前はどうする?」「何もしない」澈はきっぱりと言った。「言った通り、ゆみの決めたことなら、僕は何でも認める。お前も気にしなくていい。別れても恨みっこないさ。僕はそんな人間じゃない」隼人はさらに問いかけた。「つまり、ゆみが俺と付き合ったとしても、お前はゆみと友達でい続けるってことか?」澈は眉をひそめた。「僕とゆみは友達だ。もし恋人になれないとしても、関係はそのまま続く。隼人、お前がゆみを好きなのは分かる。でも、それで僕とゆみの友情を邪魔することはできない」隼人は突然笑い出した。「それなら安心だ!」澈はその笑いの意味が分からず戸惑った。隼人はエレベーターの前に歩いていき、ボタンを押した。「てっきり、お前は俺とゆみが一緒になったら、気を遣って距離を置くと思ってたよ」「……」澈は言葉を失った。「実はな、俺も一度は諦めようかと考えたんだよ、ゆみのこと。だってお前の状況って、本当に……」言葉を途中で止め、隼人は澈を一瞥した。「お前を傷つけるようなことは言わないが、でも後から考えたんだ。もし俺が自分の気持ちだけでゆみを諦めたら、それはお前に対して失礼すぎるよなって」エレベーターのドアが開き、隼人は足を踏み入れた。澈も続いた。二人はエレベーターの中で並んで立ち、しばらく沈黙が続いた後、澈が口を開いた。「お前の決断は間違ってない。僕の家庭は確かに不完全だけど、それでも僕は人間だ。この世には親の愛に恵まれない人間なんて山ほどいる。でも彼らはそれでも生きてる。なら僕にだってできるはずだ」隼人は驚いた顔で彼を見た。「おい、成長したな!」「成長?」隼人は笑顔を見せながら、澈の肩に腕を回した。「家族の愛がないってだけで、自暴自棄になる奴もいる。でもお前は違う!やっと分かったよ、ゆみがなんでお前のことを好
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第1516話 番外編百六十四

ゆみの言葉を聞いて、佑樹はもうそれ以上何も言わなかった。夕方。臨は、学校から帰宅しゆみが家に戻っているのを見つけると、興奮した様子で駆け寄ってきた。「姉さん、帰ってきたんだね!」臨は顔をほころばせて言った。「どう?怪我はもう大丈夫?」ゆみは意味ありげに臨を見つめて、微笑みながら言った。「臨、今夜ちょっと手伝ってくれない?」「いいよ!」臨は何度も頷いた。「学校に行くんだろ?」ゆみは驚いたように臨を見た。「えっ?今はもう怖くないの?」臨の笑顔は次第に消えていき、真剣な表情で言った。「幽霊って確かに怖いけど……でも、もう姉さんがあんなふうにいじめられるのを見るのは嫌なんだ。あの時さ、姉さんが苦しんでるの見て、すぐ学校に行って幽霊どもをぶっ飛ばしてやろうと思ったんだ。でもみんなに『姉さんの気持ちを考えろ』って止められちゃってさ」ゆみは優しく笑いながら臨の頭を撫でた。「ずいぶん大人っぽくなったじゃない!私のことちゃんと気にかけてくれて嬉しいわ」臨は、ゆみの手を取ってしっかりと握りしめた。「僕は、ずっと姉さんのことを心配してるんだよ。次にまたこんなことするなら、絶対に僕も一緒に行かせて。姉さんの盾になりたいんだ」「わかった!」ゆみは笑った。「今夜家族みんなで夕食を食べたら、すぐに出発しましょう!」「了解!」夜になり、紀美子と晋太郎、念江が帰宅した。彼らは、ゆみが家に戻っているのを見ると喜んで彼女の周りに集まり、次々に声をかけた。食事を終えると、紀美子はゆみを二階に連れて行き、濡れタオルでさっと体を拭いてあげるとようやく外出を許可した。家を出たばかりのところで、ゆみと臨は、自宅前の庭に停まっている隼人のポルシェを見つけた。彼が運転席から降りてきたのを見て、二人は驚いたように彼を見つめた。「なんで来てるの?」隼人は別荘の方をちらりと見て言った。「佑樹が心配しててさ。送迎役として俺を派遣したんだよ」「うちには運転手がいるわよ。わざわざ来るなんて大変でしょ」「大丈夫!」隼人は言った。「外は寒いし、車の中で話そう」三人は車に乗り込み、世間話をしながら学校へ向かった。今回は臨が勇敢にも先頭に立ち、隼人に言った。「姉さんをちゃんと守るよ」廃校
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第1517話 番外編百六十五

「口先だけのきれい事はやめて!」女幽霊は怒りに震えながら言い放った。「私を死に追いやったあの6人は確かに幽霊になったが、私は彼らを抑え込んで転生させないつもりよ!」ゆみは眉をひそめた。「つまり……あの6人の学生があなたを殺したの?」「でなければ、なぜ私があいつらを殺したと思う!?」「もう復讐は果たしたでしょう?彼らを縛りつけることは、結局あなた自身をも縛ることになっているのよ。意味がないわ」「そんな簡単に転生させてたまるか!!」女幽霊の声は怒りに渦巻いていた。ゆみは静かに笑った。「あなたは執着が強すぎるの。だからこの場所に囚われ、自分の痛みを何度も何度も思い出しては自分を傷つけ続けている。もし、ちゃんとあの世へ行って罰を受けて、ちゃんと生まれ変わることができれば、それは、きっとひとつの救いになるわ」「説教なんか聞きたくない!」女幽霊は叫んだ。「ハッキリさせてやるわ!あんたたちが死ぬか、私が魂ごと消えるかのどっちかよ!!」そう言い放つと、女幽霊はゆみに襲いかかろうとした。ゆみが臨を呼ぼうとした瞬間、横から虚ろな影が現れた。駆けつけた朔也が放つ陰風に、女幽霊は吹き飛ばされた。「これほど言っても聞き入れず、それどころかゆみに手を出そうとはな。なら今ここで魂ごと消し飛んでもらおう」朔也の声は冷たかった。「魂が消えるならそれでもいい!」女幽霊は叫び返した。「私はもう、この世界にはうんざりなのよ!こんなにも汚らわしい世界、見たくもない!私がいじめられたことを知っても、両親は金を受け取ってすべてを終わらせた!兄も、あいつらが金持ちだと知ってそいつらとつるむようになった!何が転生よ……生まれ変わったって、待ってるのはまたこんな汚れた世界じゃない!お願いだから……消してよ。私はもう、こんな世界見たくないの!」その言葉を聞き終わると、朔也は手を上げようとした。「待って!朔也叔父さん」ゆみは慌てて叫んだ。朔也は手を止めて、ゆみの方に顔を向けた。「なんで?彼女はもう転生も望んでいない。ならば、それを叶えてやる」ゆみは女幽霊の前に歩み出た。「あなたが見たのは、確かにこの世界で最も醜い部分かもしれない。人間として、あなたの経験したことに心から同情する。でも、この世界は決してそれだ
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第1518話 番外編百六十六

隼人と臨は幽霊を見たわけではなかったが、この瞬間、目の前で黒い霧がゆっくりと広がるのをはっきりと見た。臨は驚いた様子でゆみに尋ねた。「姉さん、今はどういう状況なんだ?」ゆみは振り返って答えた。「あの女幽霊が輪廻に入るのを拒んだから、魂が消滅したの」「魂が消滅?」隼人は尋ねた。「つまり、完全に消えたってこと?」ゆみはうなずき、辺りを見渡して言った。「朔也叔父さん、あの六人の子供を連れてきてくれる?」朔也はうなずくと、数分も経たないうちに、怯えきった幽霊たちをゆみの前に追い立ててきた。ゆみは彼らに向かって問いかけた。「あなたたちも彼女と同じ道を選ぶ?それとも私と一緒に幽世役所へ行く?」「幽世役所に行く!」「私たちはあの女に脅されてここに閉じ込められていただけで、本当はとっくに離れたかったんだ!」「死んでもなお私たちを苦しめるなんて、私たちの命は価値がないの?」幽霊たちは、女幽霊が消滅すると憤慨しながら不満を口にした。彼らの怨言を聞くうちに、ゆみは怒りを抑えきれなくなった。「よくもそんなことが言えるわね!?」ゆみは声を荒げた。「確かに彼女があなたたちを殺したのは間違いだった。でも、あなたたちに責任がないとでも?あなたたちがいじめをしなければ、こんなことにはならなかったでしょう!」「ふん」一人の女幽霊が冷笑した。「責任?あいつがいつも成績を鼻にかけて見下してこなければ、いじめることもなかったわ!」ゆみは耳を疑った。「成績が良いから?自分たちが劣っているのに、それが自慢だと?なんて哀れなの。あなたたちのような嫉妬深いゴミがいるから、この世が汚れるのよ!心配しないで。来世ではきっとこの世の報いを受けるわ!」幽霊たちはゆみの言葉に腹を立てたが、朔也と純陽体の臨を前にして、声を上げることもできなかった。ゆみがすべての準備を整えると、彼らは小声でぶつぶつ文句を言いながらもしぶしぶ後に続いた。……ゆみが幽世役所から戻ってきて正気を取り戻したとき、すでに時刻は深夜の一時を回っていた。臨は眠気に勝てず、あくびを連発しながら車に乗り込むや否やそのまま眠りに落ちた。ゆみは、助手席にもたれかかりながら、窓の外の景色をぼんやりと眺めていた。隼人は彼女の様子を見て言った。
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第1519話 番外編 完

隼人は痛みに顔をしかめながら叫んだ。「わかった、わかったよ、お嬢様。いいから、もう少し優しくしてくれよ!!」ゆみは満足そうな様子で手を引っ込めた。「そういえば、前に言ってたあそこ、いつ行くの?」「急がなくていいよ」隼人は言った。「今の君の体調じゃ、あちこち動き回るのも無理だろ?もしあそこにも何かヤバい幽霊がいたら、また傷つくかもしれない。俺はもう、罪悪感で身を差し出し、もう一度何かあったら、弁償するもんなんか残ってないよ」ゆみは笑った。「そんな償い、別に欲しくもないけど」「なんだよ?」隼人は不満そうに言った。「このイケメンでモテモテの俺様だぞ?」「……」ゆみは言葉を失った。この人、調子に乗ると本当に自分を見失うタイプだ……ゆみは深呼吸してから言った。「隼人」「ん?」「私が今やってる仕事って、正直言って、あなたの恋人としてはふさわしくないと思う。だって、時々悪霊が私を襲ってくるかもしれないし……私、臨とは違って、体質が純陰なの」「純陰体質だと、どうなるんだ?」「お盆の時期とかに、たくさんの霊が私を狙ってくるの。だからいろんなことがうまくいかなくなる可能性があるし、怪我をするかもしれない」「それが、俺と何の関係があるんだ?」「もし私たちが一緒になったら……あんたにも、そういうことが起こるかもしれないの」「だからって、それが君が俺にふさわしくない理由になるって言うのか?」隼人はふっと笑った。「そんな理由で俺が引くと思う?ゆみ、俺を甘く見すぎだぞ」「私のせいで不運が続いても怖くないの?」ゆみは疑いながら尋ねた。隼人はにやりと笑った。「君、澈のことあんなに好きだったけど、彼に迷惑かけるのは気にしてなかったよな?その言い方、説得力なさすぎだぜ。たとえそうなったとしても、俺は後悔しない。君を選ぶって、自分で決めたんだ。だから、何が起きても全部受け止める」隼人のその言葉は、まっすぐにゆみの胸に響いた。温かいものが、彼女の心の奥にじんわりと広がっていった。そう、これは彼を試すための嘘だった。でも見抜かれても、別に悔しくもなんともなかった。ただ、隼人がどう答えるかを知りたかっただけなのだ。ゆみは微笑んだ。「隼人、私たち……付き合ってみましょう」
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