さくらは御書院に片膝をつき、清和天皇の鋭い眼差しを受け止めていた。伏し目がちに座る姿には、後ろめたさも野心もなく、いつものように謹厳な態度を保っていた。天皇は彼女の出自に思いを馳せた。上原洋平の娘——一瞬、先ほどの疑念が的外れに思えた。あの上原洋平の娘が謀反など企てるだろうか。だがその信頼は束の間、しかも既に戦死した上原洋平に対してのみのものだった。嫁いだ女は夫に従う——さくらと玄武は同じ陣営に立ち、利害は一致しているのだ。「朕は御典医を遣わして玄武を診せた」天皇は静かに口を開いた。心中の激しい疑念を微塵も表さぬ声音で。「屋敷の有田先生の話では、梅月山へ静養に行ったそうだな」「陛下のご配慮、恐れ入ります」さくらは答えた。天皇は唇を引き結んだ。この返答はまるで話題をはぐらかしているようではないか。「朕が思うに、あやつは過労のせいだろう。お前も先日は飛騨まで同行し、今は玄甲軍と工房、女学校まで統べている。屋敷に主がいなくては困る。夫婦揃って病に伏せるわけにはいくまい」天皇は言葉を継いだ。「先日からお前は休暇を願い出ていたが、朕はさらに半年の休暇を与えよう。工房と女学校の運営に専念するがよい。玄甲軍は当面、樋口信也に任せる」さくらの顔に一瞬、驚きの色が浮かんだ。だが心中では何の意外さも感じていなかった。宮中に参内する前、有田先生はこう分析していたのだ。もし陛下が親王様の謀反を疑っているなら、まず玄甲軍大将の権限を奪い、内外の連携を絶つだろう。もし単に親王様の様子を尋ねるだけで官職に手をつけなければ、それは陛下が親王様を信じている証だ。驚きの表情が一瞬過ぎ去ると、さくらは穏やかに答えた。「かしこまりました。陛下のお心遣い、感謝申し上げます」怨みも焦りも、ましてや心の乱れも見せない。天皇は彼女をしばらく見つめた後、ようやくゆっくりと告げた。「下がれ」「臣、退出いたします」さくらはようやく立ち上がり、その瞳には相変わらず澄み切った堂々とした光が宿っていた。御書院の外で吉田内侍は袖を正して佇んでいた。さくらが出てくるのを見ると、その眼差しに一瞬の憂いが宿った。さくらは彼に微笑みかけ、凛とした足取りで立ち去った。吉田内侍は微かに息を漏らした。親王様の行方は知らずとも、玄武に謀反の野心などないことだけは確かだった。
Baca selengkapnya