夕刻、さくらが玄武の休暇願いを提出し、清和天皇は彼女との謁見を許した。目を真っ赤に腫らしたさくらの姿を見て、清和天皇は御典医の言葉を信じた。玄武の病は今回、相当に重いようだ。「余りに案ずることはない。小林御典医が治療に当たっている。すぐに快方に向かうだろう」さくらの声には力がなく、背骨を抜かれたかのように震えていた。「ご配慮、誠にありがたく……飛脚を立て、丹治先生をお呼び戻しするよう手配いたしました。心疾に効く良薬をお持ちなので」「雪心丸のことか?」天皇はその薬を知っていた。都の権貴たちは命の危機に備え、常に一、二粒を用意していたものだ。だが二年ほど前から、原料不足で調合できずほとんど売られなくなったと聞く。「はい」さくらは答えた。「丹治先生はいつ戻れるのだ?薬王堂では手に入らぬのか?」さくらは心配げな表情を浮かべた。「早くても二、三日はかかります。薬王堂にも在庫がございません。青雀の話では、丹治先生がお二つだけ携帯されているとか」「その雪心丸以外に効く薬はないのか?」天皇は首を傾げた。雪心丸には確かに効果があるのだろうが、人々が持ち上げるほどの奇薬とは思えなかった。「他の薬では及びますまい」さくらは言葉を切り、やや不自然な表情を見せた。「以前、北條守の母上も心疾を患い、もう危篤だったのですが、雪心丸のお陰で一命を取り留められました。その後も毎月一、二粒服用して症状を抑えておられました。確かな効能がございます」天皇はその話を耳にしたことがあったが、こんな時に死者の話は縁起が悪い。彼女の目が再び潤んでくるのを見て、慰めの言葉を掛けた。「小林御典医が申していたが、今は容態も安定している。しばらく静養すれば回復するだろう。余りに心配するでもない」さくらは目を伏せ、赤く染まった瞳を隠した。「はい。本日は小林様のお陰で……」天皇は彼女に戻って玄武の看病をするよう告げ、公務は一時預かると言った。さくらが退出する際、明日小林御典医と吉田内侍を親王家に遣わすことには触れなかった。親王家に戻ると、さくらは有田先生と深水師兄に事の次第を打ち明けた。有田先生は胸に手を当てた。今日の出来事に本当に肝を冷やしたようだった。二人とも計画に異論は示さなかった。確かに危険な賭けかもしれないが、邪馬台の幾多の将兵の命を賭けるよりはましだ
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