刑部の取調室で、斎藤帝師と秋本蒙雨が向かい合って座っていた。二人の間には古ぼけた机が一つ、そして少し離れた記録係の机の後ろにさくらが控えている。どんなに小声で話されても、この距離なら彼女の耳にははっきりと届くはずだった。呼吸音、心臓の鼓動、時折漏れるかすかなため息。だが、会話は一切なかった。視線すら数回しか交わらない。まるで無理やり同席させられた他人同士のように、距離を置き、無関心を装っている。さくらは自分がここにいるせいかもしれないと思ったが、退席するわけにもいかず、この気まずい空気に付き合うしかなかった。長い沈黙の後、ようやく帝師が口を開いた。「……なぜじゃ?」本当に困惑していた。理解できずにいた。目の前にいる男が、記憶の中のあの人物と同一人物だとは思えない。どれだけ見つめても、二つの像を重ね合わせることができなかった。蒙雨は両手を組み、首を振った。「詮索しても無駄だ。勝者と敗者、それだけのことさ」「何事にも理由があるはずじゃろう?」帝師の声はかすれていた。蒙雨はしばし考えてから答えた。「どのみち、この人生で一番やりたかったことは、もうできやしない。先帝もおっしゃっただろう?俺は狂った男だと。なら、そんな俺の考えが本当の狂気じゃないというなら……いっそ真の狂気に身を委ねてみるのも悪くない。そうすれば、他のことなど些細なものになる」帝師の眼光が鋭く彼を見据えた。「今回のお前たちの反乱で、何千何万という人々が命を落とした。血の匂いは今もまだ消えておらぬ。これがお前のやることだとは、わしには信じられん。いつから人の命をそれほど軽んずるようになったのじゃ?」蒙雨は唇を引き結び、何も答えなかった。その表情は感情を失ったかのように無表情だった。「蒙雨……お前はそんな男ではないはずじゃ。何か言えぬ事情があるのではないか?」帝師の声には哀願にも似た響きがあった。「俺はこんな男さ」蒙雨の口調に皮肉が滲んだ。「あんたが知ってる俺なんて、あんたが勝手に作り上げた幻想だ。俺をあんたの理想通りの人間だと、盲目的に信じ込んでただけのことだろう」帝師は長い間彼を見つめていたが、やがて苦々しく呟いた。「わしらは三人とも、あれほど良い友であったのに……」蒙雨はまるで滑稽な話でも聞いたかのように、声を上げて笑った。「あんた、天皇を友達だと
Baca selengkapnya