さくらが跪いていたのはほんの束の間だったが、まるで一生分の時が流れたかのように感じられた。ようやく清和天皇の小さな溜息が聞こえ、そして笑い声が漏れる。「おまえという娘は……いつからこんなに駄々をこねるようになったのだ」さくらの胸にほっとした気持ちが広がった。最初は確かに怒りと悔しさに任せて言葉を放った。だがその後の発言には、賭けのような思いが込められていた。実のところ、さくらは恐れていたのだ。命の灯火が消えかけている天皇が、いったいどれほど冷酷になれるのか想像もつかなかった。だが、あの問いを投げかけられた瞬間、どんな弁明も無意味だと悟った。こうして感情をぶつけることだけが、唯一の活路かもしれなかった。「立ちなさい」清和天皇の口調は、いつの間にかずいぶん和らいでいた。痩せこけて蝋のような顔にも、薄っすらと笑みが浮かんでいる。「おまえという娘は、昔から少しも変わらない。口では絶対に負けを認めない性分だ。軽く尋ねただけだというのに、朕を散々に叱り飛ばすとは……まったく手に負えない」天皇の視線がさくらを捉え、その瞳の奥に淡い光が宿る。「死期の迫った男と、なぜそこまで張り合う必要がある?兄上に告げ口してやろうか。さくらが朕をいじめたと」一瞬、茶目っ気のある表情を見せて続けた。「幼い頃、おまえも朕を兄上と呼んでいたではないか。今でも朕はおまえの兄なのだぞ」さくらは顔を背けた。もう堪えきれずに涙が頬を伝う。今更になって兄などと言い出すなんて。「王妃様、どうぞお立ちください」吉田内侍が傍らで、そっと手を差し伸べる仕草を見せた。さくらは立ち上がると、振り返りざまに涙を拭った。清和天皇にとって痛みがもはや我慢の限界に達したのだろう。手を上げて退出を促し、樋口寮長を呼び入れるよう命じた。背後から押し殺したような苦悶の声が漏れ聞こえてくる。さくらはしばらくその場に立ち尽くしてから、ようやく重い足取りで歩き始めた。天皇への想いは複雑だった。時には君主であり兄でもあり、時にはひどく憎らしく感じることもある。陛下自身は、この矛盾を苦に思わないのだろうか。丹治先生の診察が終われば、きっと兄弟で話し合うことになるだろう。もうこんな状況なのだから、腹を割って語り合ってほしい。隠し事ばかりでは、あまりにも辛すぎる。慈安殿に到着して取り次
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