All Chapters of 離婚後、私は世界一の富豪の孫娘になった: Chapter 431 - Chapter 440

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第431話 本気でそう思ってくれてる?

仁が身をかがめ、蜻蛉が水面に触れるように、鈴の唇にそっとキスを落とした。言葉は、その一瞬で、すべて飲み込まれた。──時間が止まったようだった。鈴は目を見開いたまま、仁の顔を見つめた。反応が遅れて、思考が追いつかない。仁はそのまま優しく笑い、腕の力を少し強めて、彼女を抱き寄せた。「鈴と結ばれる日が、早く来てほしい」突然の告白に、鈴はぽかんと彼を見つめ、数秒間言葉が出てこなかった。それでも、小さく「うん……」と返す声は、紛れもなく本心だった。その頷きに、仁の目が一瞬きらりと輝く。「鈴……本気で、そう思ってくれてる?」鈴は微笑みながら顔を上げ、その瞳はまるで夜空に浮かぶ星のように澄んでいた。彼女のその瞳に、仁は自分の姿が映っているのを見て、静かに口元を緩める。──この瞬間を、ずっと待っていた。周囲の視線も徐々に二人へと集まり始めていたが、鈴の頬はすでに真っ赤だった。「仁さん……みんな見てる……」ようやく、仁は腕を緩め、鈴はすぐに顔をそらして深く息をついた。胸の鼓動はまだ乱れたままで、それがまた懐かしくもあり、くすぐったくもあった。その気持ちの戸惑いを察したように、仁が話題を変えた。「鈴。今日、極光テクノロジーの雨宮さんも来てるらしいよ」そのひと言で、鈴の思考は現実に引き戻された。──そう、彼らが今日ここに来た目的のひとつだった。極光テクノロジーは、今や国内随一のショート動画系プラットフォームを運営する巨大企業。帝都としても、ぜひ関係を築いておきたい相手だった。「……どこにいらっしゃるの?」「案内するよ」仁がそう言って手を差し出すと、鈴は自然とその腕に手を添えた。二人は会場の奥へと向かって歩き出す。「田中さん!三井さん!」ちょうどそのとき、雨宮伊織が自分から声をかけてきた。この数年で業界に彗星のように現れた彼は、当然この二人の存在を知っている。仁が軽く頭を下げる。「雨宮さん、お目にかかれて光栄です」「いえいえ、こちらこそ」雨宮はすぐに手を差し出し、にこやかに笑った。そして、隣にいた青年を紹介する。「こちら、うちのエース配信者──上石一颯です」鈴は最初、どこかで見たことがあるような気がしたが、名を聞いてすぐに思い出した。──ネ
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第432話 新しい発見

鈴は笑みを浮かべながら応じた。「もちろん、ぜひ。今度改めて、お時間をいただけますか?」だが、雨宮はすでに待ちきれない様子だった。浜白で名の知れたMTグループと帝都グループと手を組む──それは、彼にとって長年の夢だった。ましてや、極光テクノロジーは近頃こそ少し軌道に乗り始めたものの、資金繰りの面ではまだ課題が多い。もし、資金力も影響力もある両グループと提携できれば、極光の未来は大きく変わる。「三井さん、田中さん。今日は絶好の機会ですし、このまま場所を移してお話ししませんか?」鈴と仁は目を見合わせ、互いにうなずいた。まるで最初からそう決まっていたかのような、自然な呼吸だった。雨宮はすぐに指示を飛ばす。「上石、隣のホテルでビジネススイートを手配してくれ。三井さんと田中さんをご案内する」「かしこまりました、雨宮さん!」「それじゃあ、三井さん、田中さん、後ほどまた」そう言って、雨宮はにこやかに一礼すると、そのまま足早に会場を後にした。鈴はその背を見送りながら、小さく首を傾げた。「……仁さん、雨宮さんって、なんだか妙に積極的すぎない?」「極光はまだ立ち上げたばかりの会社で、基盤も弱い。雨宮さんが今日ここに来たのも、投資を募るためなんだよ」仁の答えに、鈴はすぐに察した。「なるほど、つまり……お互いにメリットがあるってことね」「そういうこと」仁は淡々と答えたあと、ふと問いかける。「それで、本当にショート動画業界に参入するつもりなのか?」「うん。可能性は感じてるし……試してみる価値はあると思ってる」そう言いながら、鈴の目には好奇と野心が混じった光が宿っていた。その言葉が終わるか終わらないかといううちに、仁のポケットでスマホが振動した。彼はちらりと画面を見て、すぐに表情を引き締め、着信を切る。「鈴、ちょっと外に行ってくる。ここで待っててくれ。すぐ戻るから」「……うん、わかった」仁が会場を出ていくと、鈴は周囲を見回し、ふと視線を定めた。そして、軽やかな足取りで近くの休憩スペースへ向かっていった。その様子を、離れた場所からじっと見つめる二つの影──由香里と望愛は、最初から鈴に狙いを定めていた。彼女が一人になったのを見て、ふたりは当然のように動き出す。この機を逃すはずが
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第433話 浮気現場を押さえてやる

二人は何も言わずにソファからそっと立ち上がった。望愛は由香里の手を引いて、人目につかない隅へと連れていく。「あの三井鈴、ほんと最低。まさか堂々と昼間から、男とホテルに入るなんて!」由香里も鼻で笑うように、「あの女が男を取っかえ引っかえするの、今に始まったことじゃないでしょ。なのに翔平は、いまだに引きずってるなんて、バカみたい。この際、はっきり本性を見せてやるわ」そう言って、由香里はスマホを取り出し、翔平に電話をかけようとする。だが、望愛がそれを制した。「伯母さま、今はまだその時じゃないです。ちゃんと準備してから動いたほうがいい」「でも、あんな女を野放しにしておけるわけないでしょ。翔平にちゃんと見せてやらなきゃ、あいつの本性がどんなに下劣かってことを」由香里の声は段々とヒートアップしていく。見かねた望愛が、ひょいとスマホを取り上げた。「伯母さま、ちょっと落ち着いてください。今のところ、まだ証拠が揃っていませんし、仮に今翔平さんを呼んでも、何の意味もないと思います。三井鈴って女は本当に狡猾ですから、その場でしらを切られたら、私たちだってどうしようもないじゃないですか」由香里はハッとしたように黙り込む。「じゃあ、どうすればいいの?」「ちゃんと証拠が揃ったタイミングで、一気に仕掛けるんです。その方が確実に仕留められる」「なるほどね……確かに、現場を押さえるのが一番よね」「それにですね、伯母さま。さっき三井鈴に部屋のカードを渡してた人、誰だったか分かりますか?」「誰なの?」「超人気の配信者ですよ。フォロワーもめちゃくちゃ多いんです。もしこれがバレたら、三井なんて炎上間違いなしですよ。最近のファンって、本当に容赦ないですからね。それに、三井さんはもう安田家とは縁が切れてるんですし、どれだけ叩かれても、私たちには何の影響もありませんよ」由香里は頷きながらも、どこか用心深さを残していた。「でも、この手は私たちが動くより、別の人に任せたほうがいいかもね……」「伯母さま、誰か心当たりありますか?」由香里はにやりと笑って、スマホを取り出し、どこかに電話をかけた。しばらくして戻ってくると、自信満々に言った。「大丈夫、手は打ったわ。あの女、今回は逃げられない」望愛は満面の笑みで返す。「さすが伯
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第434話 新興業界

仁が鈴の姿に気づいたのは、電話の最中だった。「この件は、戻ってから話そう。今はこれで」そう言って通話を終えると、彼女のもとへまっすぐに歩み寄った。「鈴、どこに行くんだ?」鈴は小走りで近づきながら、手に持ったカードキーをひらりと見せて微笑む。「雨宮さんのほうはもう手配済みらしいよ。そっちはどう?もう終わった?」「うん」その返事とほぼ同時に、仁の目がふっと鋭さを帯びる。彼は警戒するように、鈴の背後をじっと見つめた。……だが、そこには何もいない。目を細めた仁は、小さく息を吐いてから言った。「鈴、先に行って。エレベーターの前で待っててくれる?」「え?どうしたの?」「大丈夫、なんでもないから。先に行って」そう言って彼は、安心させるような視線を向ける。鈴は少し戸惑いつつも、彼の目線の先をちらりと見て――「仁さん……何を見てたの?」仁は何も答えず、足を踏み出してその場へ向かった。あたりを見回しても、やはり何もない。独り言のように、ぽつりと呟く。「……気のせいだったかもな」鈴は少し首をかしげながらも、それ以上は深く追及しなかった。ふたりはそのまま向かいのホテルへと並んで歩いていく。やがてその姿が見えなくなった頃――建物の陰でカメラを構えていた男が、そっと息を吐いた。……ホテルのエントランスでは、上石がすでに待機していた。彼は今でこそ人気配信者として注目を浴びているが、立場はあくまでも「雇われ」。ボスである雨宮の指示は絶対だった。鈴と仁の姿を確認すると、上石はすぐに駆け寄る。「三井さん、田中さん、お待ちしてました!社長はすでに上に上がってます」「なら、私たちも行こう」上石は手でどうぞと促し、二人のためにエレベーターのボタンを押した。そして三人が乗り込んだ瞬間――その様子はすべて、どこかのレンズによって捉えられていた。ホテルのスイートルーム。雨宮は資料の入ったファイルを秘書に持たせていた。「田中さん、三井さん。こちらが極光テクノロジーのショート動画プロジェクトに関する主なハイライトです。ぜひご覧ください」秘書がそれぞれに資料を手渡す。鈴は資料を受け取ると、真剣な表情でページをめくっていく。彼女自身はこの業界に詳しいわけではない。だが、周
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第435話 初期の計画

雨宮とのやり取りが終わったのは、それから二時間後のことだった。ホテルのロビーを出るときも、雨宮はまだ少し名残惜しそうな表情を浮かべていた。「三井さん、田中さん。もしご興味があるなら、極光テクノロジーはいつでも歓迎しますよ」「ええ、雨宮さん。では、今日はこの辺で」「はい。またご一緒できる日を楽しみにしています」雨宮が去るのを見届けると、鈴は仁の方へ顔を向けた。何か言いたそうなそぶりを見せるまでもなく、仁の方が先に口を開いた。「個人メディア、やってみたいんだな?」鈴の瞳がぱっと輝く。コクリとうなずいてから、勢いよく話し出した。「これはまだ新しい業界だけど、伸びしろはすごくあると思うの。まずは試験的にタレント部門を立ち上げて、有望な配信者を発掘して、チームを組んで運営して――それでひとつ、目玉になるIPを育ててみたいの」言葉を重ねるごとに、鈴の声にも熱がこもっていく。すでに頭の中には、ある程度の構想が固まりつつあるようだった。「仁さん、私のこの初期案、どう思う?」「ほぼ形になってる。実行できるさ」その言葉に、鈴は思わず小さく跳ねるように喜んだ。「じゃあ、来週の月曜の経営会議で発表するね。取締役の半分が賛成してくれたら、すぐにでも動き出す」新たな目標を見つけた鈴は、帰宅後も連日徹夜で未来のビジョンを描き、企画書を練り続けた。週明けの月曜日。午前九時。何日もぶっ通しで働いていたはずなのに、鈴はまるで新しい朝を迎えたばかりのようにエネルギッシュだった。帝都グループに到着すると、すぐに土田が歩み寄ってきて、彼女に耳打ちした。「取締役は全員お揃いです。あとは社長を待つばかりですよ」「ありがとう。すぐに行くわ」今日の会議室は、いつになく活気に満ちていた。どうやら、何かの「噂」を聞きつけた幹部たちが、いつもより早めに足を運んでいたらしい。普段は滅多に姿を見せない佐々木取締役まで顔を出しているところを見ると、今回の議題への関心は相当なものだ。「もう九時だよ。三井さん、まだ来てないのか?」「陽翔さんがいた頃は、こんなに待たされることなんてなかったのに……」「誰か呼びに行ってくれよ。いつまで待たせる気なんだ?」ざわつく会議室の空気を切り裂くように、扉が開いた。土田が一歩前に出て、手
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第436話 突然やってきた

鈴はわずかに頷き、穏やかな口調で語りはじめた。「今はネット技術がどんどん進化していて、ショート動画っていう分野がすごく注目されてるの。うちの帝都グループはこれまでそういう事業に関わってこなかったけど……今こそがチャンスだと思う。グループとして新しい方向に進む、絶好の機会なんじゃないかなって」鈴の言葉がまだ終わらないうちに、テーブルの端で書類の束が乱暴に叩きつけられた。「三井さん、私は反対です」そう言い放ったのは、佐々木だった。思わぬ展開に、会議室の空気が一瞬凍りつき、誰もが顔を見合わせる。鈴は落ち着いた様子で口を開く。「何かご不満でもあるんですか?」佐々木は鼻で笑いながら、皮肉めいた口調で続けた。「うちの帝都グループは、高度なテクノロジー分野でずっとやってきたんです。ナノロボット、医療機器、鉱業——どれも専門性が高く、結果もきちんと出してきました。なのに今さら、全く未知の業界に首を突っ込むなんて……あなた、本気で勝算があると思ってるんですか?」その言葉に、他の取締役たちも次々と頷き始めた。「そうそう、新規事業なんてリスクだらけだよ。万が一失敗でもしたら、帝都グループのブランドが傷つくかもしれない」「もっと慎重になったほうがいいんじゃないか?急ぎすぎだよ」「個人メディアの未来なんて、私はあまり期待してないな。むしろ、今は不動産のほうがずっと手堅いよ。不動産価格もずっと高いままだし、そっちに投資したほうが確実に利益出るんじゃない?」「政府が新しく都市開発を始めるって話もあるし、土地を押さえてマンションでも建てれば……少なくとも動画なんかよりは儲かるだろ」次々と飛び交う否定の声。佐々木は腕を組み、椅子にもたれながら余裕の笑みを浮かべていた。「三井さん、みんなの意見も一理あると思います。ここは一度、冷静に考え直してみたらどうです?個人メディアのことなんて、誰も詳しく知りません。そんな不確かな分野にわざわざ飛び込む必要なんてありませんよ。設楽さんのお考えのように、不動産への投資のほうが、より健全で現実的な選択ではないでしょうか」周囲の視線が鈴に集中する。誰もが「ここで引くだろう」と思っていた。しかし鈴は、何を言われても微動だにしなかった。表情はあくまでも静かで、余裕さえ感じられた。ゆっくりと顔
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第437話 安心をもたらす者

ひときわ目を引く鮮やかなスーツを身にまとい、三井助がマネージャーを伴って会議室へと現れた。その姿を目にした瞬間、室内の空気が張りつめる。「……え?」「なんで三井助が?」「三井家の三男は芸能界にずっといたはずだろ。ファンの数も桁違いだし、SNSに一言投稿するだけで数百万の反響があるって聞いたぞ」「そんな人物が、なんで今日ここに?」ざわめく声があちこちから漏れた。その存在感は、たった一歩で場の流れを根底から変えてしまうほどだった。誰もが意図を測りかねながら、思わず佐々木に視線を送った。――これは一体どういうことだ?だが佐々木の顔は、見る間に強張り、みるみるうちに険しい表情へと変わっていった。まさか……三井鈴が、こんな一手を用意していたとは。助は落ち着いた足取りで会議室に入り、そのまま鈴の元へと歩み寄った。ふたりの視線が交差し、口元に同時に笑みが浮かぶ。助の目には、深い信頼と優しさが宿っていた。鈴がぽつりと呼びかける。「……兄さん」助は小さく「うん」と応えた後、鈴の隣に並び立つ。そしてくるりと皆のほうへ振り向くと、明るく声を上げた。「皆さん、こんにちは!」あまりに自然な挨拶に、会議室の空気が一瞬止まった。ややあって、誰かが戸惑いながら尋ねる。「三井さん、あなたは芸能関係の活動に専念されていて、帝都グループの事業には関与されていなかったはずですが……今日は、どういったご用件で?」助はふっと笑って、親指で自分を指しながら答えた。「いい質問ですね!実は、帝都グループが本日から芸能マネジメント部門を立ち上げると聞きまして。で、僕はその記念すべき第一号契約タレントってわけです」その一言が落ちた瞬間、会議室がまるで火がついたようにざわめき出す。三井助といえば、国際的に活躍するトップスター。歌も演技も超一流、そして桁違いのファン数と影響力を持つ存在だ。そんな彼が自ら帝都グループの新設部門に所属するというなら、まだ産声をあげたばかりの部署に、これ以上ない後押しが加わることになる。「本気……なんですか?」そう尋ねる声に、助は肩をすくめてさらりと答える。「もちろん。これまではずっと、マネジメントも自分の会社でやってたんです。でも今回、帝都との契約を決めたのは、僕にとっても大
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第438話 裏返る空気

こうして、会議室の多くの取締役たちが態度を変えた。「佐々木取締役、いかがでしょうか?」鈴が静かに問いかける。佐々木は苦笑いを浮かべ、口を開いた。「皆さんが賛成しているのであれば、きっと良いプロジェクトなのでしょう。私も、特に反対はありません……」鈴はわずかに眉を上げ、その返答に満足した様子を見せた。「では、挙手での採決に移りましょう」ざわつく中、誰からともなく手が上がり、それに続いて次々と手が挙がる。その中で、助が軽く笑いながら言った。「僕、帝都の株も少し持ってるんだけど、これって一応、投票権あるってことだよね?」そう言って、助も手を挙げた。結果は、予想をはるかに上回る賛成数だった。「過半数の賛成を得ましたので、本件は承認とします。本日より、帝都グループ芸能部門を正式に発足します」会議室には拍手が広がった。会議が終わり、ひとりまたひとりと会議室を後にする。やがて人が引けたあと、助が鈴を見て、からかうように言った。「鈴。さっきの兄さん、どうだった?」鈴は思わず吹き出して、素直に褒めた。「最高だったよ。あの固い人たちが、何も言えなくなっちゃった。助兄さんがいてくれなかったら、きっとここまでうまくいかなかったと思う」「ってことは、僕って今日の立役者ってやつか?」鈴は自然と彼の腕に手を絡め、にっこり笑う。「もちろん。でも、本当に帝都とマネジメント契約するの?」助は手を伸ばして、軽く彼女の頭を小突いた。「僕が冗談言ってるように見えるか?」鈴は頭を押さえて小さく呻く。「い、痛い……でも、痛いけど嬉しいかも」「まったく……これからはちゃんと僕を大事にしろよ?今の帝都、僕が唯一の看板なんだからな」鈴は何度も頷いた。「わかってる。助兄さんはうちのトップタレントだから、全部のリソースは助兄さんに全振りだよ。つまり、この帝都という逆ハーレムで、一番寵愛されてるのは助兄さん、あなただけ!」助は苦笑しながらも、どこか嬉しそうに言った。「なるほどね、そんなに寵愛されてるなら……まあ、悪くないかな。試してみるよ」「こんなちっちゃい会社に付き合わせて、兄さんには悪いことしちゃったね」「バカ言うな。君に必要とされるなら、それだけで十分だよ」助にとっては、もともと仕事の一環にすぎない。だが、こうして鈴を支えられるのなら、それも悪くないと思
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第439話 まさかの祝福ムード

望愛は手にした写真をひらひらと揺らしながら、冷ややかに笑った。「この一枚さえあれば、三井鈴にはもう言い逃れできません」その隣で写真を覗き込んだ由香里は、満足げに頷く。「ふふ、それじゃあ、地獄に突き落としてやりましょうか。あの愚かなファンたちにズタズタにされる三井鈴、想像するだけで楽しいわ」「おばさん、お任せください。すぐにメディア関係の方に連絡します。今夜には、この写真がネット中に拡散されることになるでしょう」由香里は鼻で笑い、「それでいい」と一言だけ残した。――そして、狙い通りの展開が訪れた。その日の午後。騒ぎもせず、静かに一枚の写真がネットに投稿された。だが、それが広まるのは、一瞬だった。#大人気配信者が財閥令嬢と夜の密会!?煽情的なこのタイトルが、SNSのトレンドを一瞬で席巻し、炎のごとく燃え広がった。【えっ、マジ?上石と三井のお嬢様が一緒にいたって!?】【なにこれ……鈴さんって、あの人気配信者と付き合ってたの?】【上石ってマジで勝ち組すぎでしょ。三井財閥って総資産やばいって噂だし、これは完全に玉の輿じゃん】【ちょっと待って……私の推しが令嬢と恋愛!?うそでしょ……?】【でもさ、どっちも独身なんだし、恋愛する権利はあるよね?】【うぅ……もし相手が他の女だったら叩いたけど、相手が鈴さんなら……私、もう祝福するしかない……】【わかる……祝福するしか……ない……】【激しく同意】【同じく】【……】――この爆発的な反応に、最初に気づいたのは結菜だった。彼女はメディア関係者として、情報には誰よりも敏感だ。目に飛び込んできたタイトルに、最初は目を疑った。スマホを擦ってもう一度見直す。何度更新しても、写真の中の女性は間違いなく、鈴だった。すぐに鈴へ電話をかける。「鈴、ネットのあの写真、どういうこと?」電話越しに、鈴の困惑した声が返ってくる。「え?何の写真?」結菜は一気に説明する。「今すぐネット見て。誰かが、あなたと上石が二人きりで会ってる写真を撮って、SNSにアップしてるの。もうトレンドトップだよ」鈴は信じられないというように息をのんだ。――自分と上石が密会?何の話……?ありえない!慌ててSNSを開く。案の定、「三井鈴」と「上石一颯」
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第440話 売名なんて興味ない

「今の流れだと……私と上石さんの関係、間接的に公認ってことになるよね?」鈴がぽつりと呟いた直後、スマホがひとつ音を立てた。画面に届いた新着メッセージを開き、鈴の目がすっと細められる。その通話越しで、結菜が続けていた。「否定しないままでいれば、ネットの反応的にはもう二人は付き合ってるってことになっちゃうかも。でも、悪い話じゃないよね?今ちょうど個人メディアに興味あるんでしょ?動画アカウントも動かしたいって言ってたし、今回の騒ぎ、流れに乗ればフォロワー増えるチャンスだよ?」けれどその提案は、最後まで言い切られることなく、鈴のひとことで遮られた。「……だめ、それは使えない」鈴の視線は、いまだ開かれたままのメッセージに向いたまま。差出人は上石。内容は、結菜の言っていたこととほとんど同じだった。――あえて否定も肯定もしない。それが、一番注目を引き寄せられる手段だと。さすがはネット界で注目を集め続けている存在だけあって、話題の使い方がうまい。だが、鈴は一刀両断した。「結菜、世論の整理を頼む。10分後、公式に否定する声明を出すから」電話の向こう、結菜が思わず茶化すような声で返す。「……鈴、それってまさか、田中さんに誤解されたくないから?」鈴は短く、「うん」とだけ答えた。それだけで、十分だった。「やば、かっこよすぎ……!田中さんに誤解されるのがイヤで、ここまで盛り上がった話題を自ら切るとか、あなた伝説だわ」ネット界隈なんて、話題と注目がすべて。数字のために何でもする者がうじゃうじゃいる中で、鈴の態度は異端すぎた。でも、それが彼女だった。噂で名を売ることも、騒ぎで注目を集めることも。そういう類の売名を、彼女は最初から見下していた。「でもね、私が鈴なら……たぶん同じことするかな。根も葉もない噂で、大切な人との関係を壊したくないもんね」冗談めかした口調で言いながらも、結菜はすでに指を動かしていた。「大丈夫、発信元のアカウントは特定できた。こっちから連絡して、削除依頼はすぐ出す」だがそのとき。彼女はふと、胸の奥に奇妙な違和感を覚えた。「……鈴、この写真。偶然じゃないね。これ、誰かが意図的に仕掛けたものだよ」結菜の声が一気に冷めた調子になる。投稿者のアカウント群、使っている
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