その一言を聞いた望愛は、急に笑い出した。笑い声は甲高く、耳に刺さるようで、思わず眉をひそめたくなるほどだった。ようやく笑いを収めると、鈴の手を振り払って冷たく言い放つ。「あなた、夢でも見てるの?私が赤穂望愛じゃないって言うなら、じゃあ私は一体誰?」「――それを、私が知りたいのよ」鈴は表情を崩さぬまま、鋭く望愛を見据えた。少しでもほころびが見えないかと、その瞳を探る。けれど望愛はふっと口元をゆがめ、余裕たっぷりに笑った。「これが、あなたの言う証拠?はっきり言うけど、そんなもので何が証明できるのそれであなたの潔白が晴れるとでも?ふざけないで。盗作したのは事実じゃない。こんなくだらない作り話で上塗りして、何になるっていうの」鈴は片眉を上げると、落ち着いた声で問い返す。「つまり……否定するのね?」望愛は堂々と、むしろ正義面すらして応じた。「否定?自分の身元を証明する必要がある?ないわよ。あなたが傷跡が見えないって言った件?それはね、火傷の痕が目立たないように植皮手術をしたからよ。血液型が違う?そっちこそおかしいわ。入学のときの書類に記入ミスがあったんじゃない?あり得るでしょ?それにデザインのスタイルが違うとか言い出すなんて、失笑しか出ないわ。人は成長するの。感性も、表現も。昔はまだ未熟だった。それがいま成熟した――ただそれだけのことよ。」「……」堂々と、淀みなく言い返すその口調。鈴は、彼女の心の強さには素直に感心してしまった。……でも。だからといって、事実が変わるわけじゃない。パチパチ……鈴が突然、ゆっくりと拍手を始めた。その音に、望愛が目を細める。「……何、それ」「感心してるの。赤穂さん、あなたの演技、完璧ね。俳優にでもなってたら、今ごろオスカーでも取ってたかも」「ふん、お互い様よ。三井さん。似た者同士じゃない」「……かもしれないわね」鈴はふっとため息をついたあと、トーンを落とした。「でも残念。口が上手くても、真実は変わらな。あなたが本物の赤穂望愛を装っていることは、もう覆せない」そう言って、鈴はバッグから一枚の紙を取り出した。「これを見て――これは、本物の赤穂望愛が五年前に亡くなったことを証明する書類よ」望愛の顔色が、ほんの一瞬にして変わった。「…
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