蒼真は恭しく手招きをし、至極丁寧な仕草で鈴を促した。彼女は小さく頷き、会議室へと足を踏み入れる。まさに雲泥の差とも言える、露骨なまでの待遇の違い。これほどの冷遇に、望愛のプライドは黙っていられなかった。彼女は足早に追いすがり、蒼真の行く手を阻んだ。「合田さん!私たち赤穂グループは、並々ならぬ誠意を持って参りました。提携さえ叶うのであれば、利益の五十パーセントを譲渡しても構いません。どうか、一度チャンスをいただけませんか?」利益の半分――。それは決して無視できる額ではない。蒼真は商人だ。これほどの巨利を前に、首を縦に振らないはずがない。望愛はそう確信していた。蒼真の口元に笑みが浮かぶ。しかし、その光景に温かみはなく、瞳の奥は冷たく凍りついたままだった。彼は足を止め、初めてまともに望愛を射抜くような視線で見据えた。「……君は、この俺が金に困っているように見えるのか?」その一言に、望愛の胸に不吉な予感が走った。彼女は慌てて取り繕う。「いえ、合田さん、誤解です!私はただ、こちらの誠意を示したかっただけで、他に他意は……」蒼真は鼻で笑った。「提携だと?断る。我が啓航グループは巨大財閥ではないが、この浜白での評判は守らねばならんでね。パートナー選びには厳格な基準がある。そして赤穂グループは、その土俵にすら上がっていない。お引き取り願おうか」望愛は呆然と立ち尽くした。まさか蒼真が、これほどまでに容赦なく、面目を丸潰れにするような拒絶を突きつけてくるとは思わなかったのだ。屈辱が怒りへと変わり、彼女は声を震わせた。「合田さん……本気で赤穂グループを切り捨てるつもりですか?今や我が社は、政府が唯一指定した企業なのですよ……!」蒼真はただ、冷ややかな失笑を漏らすのみだった。「それがどうした。俺が認めないと言えば、認めない。それだけだ。――おい、お引き取り願え」蒼真は二度と振り返ることなく、望愛を突き放して歩き出した。決然としたその背中に、望愛は悔しさのあまり地団駄を踏むしかなかった。そこへ、警備員が静かに歩み寄る。「お客様、合田様の指示です。早急にご退場を。我々も手荒な真似はしたくありませんので」望愛は唇を血が滲むほど噛み締め、忌々しげに背を向けてその場を去っていった。会議室に入ると、鈴はいたずらっぽ
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