彼女はここまで話していて違和感に気づいた。「あなた、わざとでしょ?お義兄さんを助けてる」彼女は慌てて南に電話をかけ、迎えの当日に予定があるかどうかを尋ねた。南は「ないよ」と答え、逆にどうしたのかと聞いてきた。紀香は少し考えてから正直に打ち明けた。「私、彼がわざとだと思うの。私が妹だからやりづらいけど、南さんが親友ならまだ簡単だって思ってるんじゃない?」南は笑った。「どうして私の手にかかれば、海人が楽にいけるなんて分かるの?」けれど一つだけ、彼女の結婚式のとき、海人は確かに鷹を助けた。あの時、来依がドアを塞いでいたが、海人が連れ出したのだ。鷹はあっさり彼女を連れ出すことができた。鷹は人のことを観るのは好きだが、いざ親友のこととなれば、手を貸さないわけではなかった。彼女の結婚式にはそれほど多くの付き添いはいなかった。来依は違う。実の妹である彼女を海人が連れていくのは、そう簡単なことではない。清孝が仕事を理由に紀香を引き留めれば、その時は彼女一人だけになる。そこに鷹が加われば、海人にとっては簡単になる。「この仕事、本当に断れないの?」紀香はため息をついた。「違約金が三倍よ、払えるわけないじゃない」南は理解して、「じゃあ仕事に集中して。こっちは大丈夫、私が見てるから」と答えた。紀香は礼を言って電話を切った。もともとこの数日、清孝とは仲良く過ごしていたのに、今はつい彼を睨んでしまう。彼女は急いで来依にこのことを訴えた。来依は聞いた瞬間に察した。ふざけるな、私を甘く見ないで。あの時南のドアを塞ぎきれなかったこと、海人にきっちり借りを作っている。彼がどうしても式を挙げたいというなら、簡単に自分を連れ出されるわけにはいかない。「大丈夫。間に合えばいいし、間に合わなくても私が自分でどうにかする。心配しないで、仕事をしっかりやって」紀香は電話を切り、荷物をまとめて出張へ向かった。だがその間ずっと清孝を無視し、差し出された水や食事も受け取らなかった。清孝は彼女を空腹のままにしておけず、理由を説明した。聞き終えた紀香はさらに腹を立てた。「借りを返すなんて言うけど、そのせいでどうしてうちの姉を困らせるの?あの人は私の実の姉よ!こんな大事なときに、私がそばにいないなんてあり得ないでしょ!
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