腰に回された腕が急に力を込めた。耳元にかかる吐息は熱くて、心臓をざわつかせた。男のかすれた声が響いた。「眠くないなら、他のことをするか?」紀香は布団を握りしめ、弱々しく嘘をついた。「トイレに行きたいの」「俺もまだ洗ってない」清孝は彼女を解放した。紀香は慌てて逃げ出した。あと一秒でもいたら、自分が何をしてしまうのか分からなかった。清孝は俯いて一瞥し、長く息を吐いた。――結局、自分で自分の首を絞めたようなものだ。……紀香はバスルームにかなり長い間こもっていた。ついでにシャワーまで浴びた。だが洗い終えてから気づいた。バスタオルを清孝に使われてしまったことを。バスルームに立ち尽くし、まさに八方塞がりの心境だった。しかも慌てて飛び込んできたので、着替えも持ってきていなかった。さっき勢いで彼の服を自分の脱いだものと一緒に拾い、洗濯かごに放り込んでしまった。自分の服はすっかり濡れていた。あああ——声も出せずにただ心の中で激怒するしかなかった。清孝はもう一度時計を見た。彼女が入ってから、もう二時間近く経っていた。最初は水音が聞こえ、シャワーだと分かっていたから声をかけなかった。だがもうずいぶん前に水音は止んでいるのに、出てくる気配がなかった。「香りん?」彼はドアをノックした。紀香はびくっとして、少し遅れて返事をした。「うん?」「大丈夫か?」「だ、大丈夫よ……」清孝は彼女の調子がおかしいと感じた。「転んだんじゃないだろうな?入るぞ」紀香は慌ててドアを押さえた。「なんでもないわ!私は元気。女の子はシャワーに時間かかるものよ、今はスキンケア中」清孝は容赦なく暴いた。「でも君の化粧品は外のドレッサーにあるだろう」「……」紀香は座ってスキンケアするのが好きで、ボディクリームもベッドに寝転がって塗る派だった。しかもバスルームはシャワー後に蒸気で曇っていて、スキンケアには向かない。まさか自分で自分の首を絞めることになるなんて。「えっと、その、洗濯してたの」「でも洗濯機はバスルームにないだろう」「……」紀香はもう言い訳が見つからなかった。清孝は大体察したようだった。「他のバスタオルはどこにある?」紀香「……クロー
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