「うん」そう返事をして、私はそばに腰を下ろした。鋭く澄んだ祖父の視線と真正面から向き合い、ますます落ち着かなくなった。広々とした書斎には、私と祖父、そして横でお茶を淹れている土屋さんだけがいた。案の定、祖父はすべてを見抜いたように口を開いた。「お前たち、本当に離婚するのか?」「……」宙ぶらりんだった心が、ついに沈んだ。もう祖父に見透かされてしまった以上、隠し通すことはできない。「……はい……どうして、それを?」祖父はため息をついたが、騙されていたことに怒る様子はなかった。「お前はな、確かに自立していて、頑固だ。表向きは宏のことをそれほど好きには見えなかった。だが、その目は、いつも彼から離れたことがなかった。「けれど今日は、一度も宏を見なかった」祖父の声には、どこか残念そうな響きがあった。その言葉に、私は喉が詰まり、何も言えなくなった。――そうだ、好きな気持ちは隠せない。口を塞いでも、目からあふれ出てしまうものだ。祖父にすら見抜かれているのに、宏は、私が他の誰かを好きだと思っている。これは当事者だからこそ見えていないのか、それとも、初めから私の気持ちになど関心がなかったのか――。私はそっと俯き、込み上げる苦しさを押し殺した。喉が何度も震えたが、最後に出たのはただ一言だけ。「……お祖父様、ごめんなさい」「謝るのは、わしのほうだ」祖父は土屋さんに茶を勧めるよう合図をした。「もしわしがあの馬鹿孫にお前を嫁がせようなどと思わなければ、こんな深い穴に落とすこともなかったのに……」私は湯呑みを手に取り、そっと一口含んだ。そして首を横に振る。「違います。お祖父様は……ただ、私の夢を叶えてくれただけです。もしお祖父様がいなかったら、私はきっと一生、空の星を手に入れたいと願い続けていたでしょう。でも今は、もう悔いなく前へ進めます」手に入らなかったものは、一生欲し続けた。でも、私は一度は手に入れた。そして、諦めることができた。手にしたことさえなければ、こんなふうに吹っ切れることもなかっただろう。――これで、もう未練を残すことはないはずだ。祖父の目には、ただ諦念だけが浮かんでいた。「本当は、離婚を思いとどまるよう説得するつもりだった。だが、その言葉を聞いた以上、それを言えば宏
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