承応の観光客は多く、ホテルを出ると、さまざまな旅行者の姿が目に入った。綿と玲奈が一緒に歩いていると、かなりの注目を集めた。輝明と秋年はサングラスをかけて、一見控えめな様子だったが、持って生まれたオーラは隠しきれなかった。通りすがりの人々は彼らを見て、つい噂話を始めた。綿と玲奈は高級ブランド店に入り、二人で休憩スペースでおしゃべりをしていた。店内の若い娘たちは、何度もちらちらと彼女たちを見た。綿は輝明をちらりと見た。彼は頬杖をつき、周囲の視線など気にも留めず、ただ綿を見つめ続けていた。まるで歩くATMのように、いつでも綿のために財布を開く準備ができているかのようだった。綿は視線を戻し、適当に棚の上のバッグを指さした。見た目も使い勝手も気にせず、淡々と言った。「これ、包んで」店長は一瞬きょとんとし、小声で尋ねた。「お客様、試着なさらないんですか?」綿は肩をすくめた。「いいの、友達がお金持ちだから、好きに使えって言われたの。気に入ったら使うし、気に入らなかったら捨てればいい」そう言って、また別のバッグを見に行った。玲奈「……」チッチッ!輝明は小さく笑った。つまり、自分がその「友達」ってことか?「いやぁ、桜井さんのお友達~」秋年は隣でからかうように言った。輝明は気にする様子もなく、むしろ甘ったるい気持ちになった。友達でもいいじゃないか、赤の他人より、高杉さんより、ずっといい。秋年はそんな輝明の満足げな顔を見て、思わず片手で額を押さえ、首を振った。はあ、高杉、もう手遅れだな!綿の前では、一生、卑屈なままだ!綿に「友達」と一言呼ばれただけで舞い上がるなんて、これぞ自己洗脳、自己攻略ってやつだろ。玲奈は腕を組みながら、棚の上のバッグを真剣に見ていた。秋年は思わず尋ねた。「森川さん、君も誰かに買ってもらう友達が必要じゃない?」綿が玲奈よりも先に秋年を見た。秋年はソファにだらりと腰かけ、腕を組み、面白そうに玲奈を見つめた。正直、かなりかっこよかった。秋年の持つ独特なやんちゃさと、気だるい雰囲気は、言葉にしがたい魅力だった。輝明も時折、無意識に気だるさを漂わせるが、秋年と比べると、まだまだだった。玲奈「『友達』くん、お気持ちはありがたいが、私、お金はあっるから
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